『生命の起源にせまる1~細胞分裂の司令塔は誰?~』というテーマで11/23になんでや劇場が開催されました。そこで、今日から3回にわたってそのなんでや劇場で議論された内容を紹介したいと想います。今日はその第一弾です
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■タンパク質を作るのはなんで?
久しぶりになんでや劇場で生物史を扱うということで、復習も兼ねてこの問いから扱ってみます
タンパク質が栄養素の一種であることはご承知の通りです。生物の体内には無数のタンパク質が存在し、その働き(酵素etc.)によって生命活動を可能にしており、また、体を作り上げている材料ともなっています
よってタンパク質を作り出すことは生物にとって不可欠であり、逆にタンパク質を生成できることによって成長を可能にしていると言うことができます
では、なぜ成長する必要があるのでしょうか?
その答えは分裂するためですよね。つまりは、子孫を残すためです。子孫を残すことで種の保存を成し遂げる、それが生物の最も根底的な本能であることを考えれば、当然のことだと言えるでしょう。
■真核生物の細胞周期におけるポイントは?
真核細胞の細胞周期は上図のように、大きくG1期⇒S期⇒G2期⇒M期に分かれています。(参考:細胞周期と中心体の複製 [4])
今回のサブテーマは「細胞分裂の司令塔は誰?」ということですが、それを探る上でのポイントには以下のような点があります。
中心(小)体がDNAに先んじて分裂している
中心体の設計情報はDNAには存在しない(=中心体は自己複製能を持つ)
DNAがなくても中心体があれば分裂するが、DNAがあっても中心体がなければ分裂しない(=中心体が細胞分裂の司令塔)
このように、真核細胞の細胞分裂においては、DNA以上に中心体が重要な役割を担っているのです
■中心体の構造は?
上図のように、中心体は一対の中心小体とその周りを雲状に取り巻く不定形の物質からなっています。そして、更に中心小体は環状に配置された9対の三連微小管からなり、その中心にはスポークが存在します。
また、中心体から伸びる微小管は、中心体周辺物質に含まれるγチューブリンから伸び、中心小体と同様の構造をしています。
(注:微小管は中心小体とは繋がっていません )
そして、微小管はαチューブリンとβチューブリンが繊維状に重合してできた、二重螺旋の管構造となっています。ここでは、GTPやGDPといったヌクレオチドが、例えて言うならば糊のように働くことで重合を可能にしています。
また、微小管は上記の細胞周期の有糸分裂等の際に伸び縮みするわけですが、これを可能にしているのもGTP⇔GDPなのです。つまり、大雑把な言い方をすると、隣り合った各チューブリンがGTPで結合している場合には結合が安定的⇒伸張し、加水分解されてGDPになると不安定⇒短縮する、という仕組み(微小管の動的不安定性)になっています。
因みに、通常は脱重合しやすい端部以外はGDPによる結合、端部はGTPによる結合(GTPキャップ)となっています。
このようなヌクレオチドの働きによって、伸び縮みというような、非常に難しい仕組みを可能にしているのです。
■ヌクレオチドって何?
ヌクレオチドはDNAやRNAの構成単位としてあらゆる組織に存在し、遺伝情報を保ちまたその情報を発現させ、タンパク質合成の過程に関与するほか、種々の重要な機能を担っています。
上表のように、ヌクレオチドには(塩基の種類)4×(リン酸基の数)3=12種類があります。
ヌクレオチドは、エネルギー代謝のクエン酸回路でも知られるように、エネルギー貯蔵庫=エネルギーの出し入れが可能な物質であるという大きな特徴を持っています。
特にATPは生体のエネルギー通貨とも言われ、生体のエネルギー保存・利用に非常に重要な物質となっています。
つまり、DNAやRNAはヌクレオチドで構成され、また中心(小)体もヌクレオチド(GTP、GDP)が含まれたRNP(糖タンパク複合体)であり、生命活動の基幹となる役割を担う物質はヌクレオチドというエネルギーの出し入れができる物質でできているのです。
改めて考えてみると、そのような物質が含まれているからこそ、生命が維持できているとも言えるのでしょう。
以上で第一弾は終了です
次回もお楽しみに