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植物の細胞分裂

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画像は 「理科 生物の細胞と生殖 細胞」 [1]よりいただきました。
 
 
脂質2重膜構造という柔らかい動物細胞がこのように外→内方向にくびれを入れるのに対して、細胞壁という硬い壁をもった植物細胞では、内→外方向に隔膜刑成体がしきりを入れ細胞質分裂を完了させる。
植物の細胞分裂を調べていくと、動物とは違った構造に驚かされます。
今回は植物の細胞分裂の特徴をレポートします。
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植物の細胞分裂の特徴をまとめると
①中心体とよべるようなはっきりした構造はない
②細胞壁により細胞質分裂を完成させる

となります。
 
①中心体がないのになんで細胞分裂ができるのか?
・植物の細胞分裂(有糸分裂と細胞質分裂)の様子を 参考サイト [5] から引用します。
 

細胞分裂の際には、細胞内の微小管はさまざまな挙動を示し、重要な働きを果たしている。まずG1期になると核の表面からはさまざまな方向へ微小管が伸長して細胞質の糸 (細胞質糸) を支持している。細胞質糸の伸長・短縮によって核が分裂面へ移動する。
分裂面に移動した核はフラグモソーム (phragmosome) とよばれる細胞質糸で支持される。フラグモソームは微小管とアクチン繊維で支持されている。またG2期になると細胞質表層微小管が消失し、細胞質周縁部に前期前微小管束 (preprophase band, PPB) とよばれる微小管の束がリング状に配置される。この面が将来、分裂面になる。
やがて分裂期に入ると、前期前微小管束やフラグモソームの微小管は消失し、微小管でできた紡錘体 (mitotic spindle) が形成される。紡錘体は染色体を両極に運ぶ。その後、分裂面に微小管からなるフラグモプラスト> (phragmaplast、隔膜形成体) ができ、ここにゴルジ体由来の小胞が集合して細胞板が形成される。

 
文中に出てくる、細胞質糸 フラグモソーム 微小管 アクチン繊維 は、微小繊維と呼ばれるもので、収縮が可能=タンパク質とヌクレオチドの複合体という共通の構造をもっています。
この構造は中心体と同じ構造です。動物のように極点としての中心体は持ちませんが、細胞内にはりめぐらされた微小繊維が紡錘体としての役割をはたします。
さらにこれら微小繊維の一部は細胞内小器官の配置や移動にも関与しています。

ふつうアクチン繊維は数十~約百本が束になり、細胞質糸を支持している。また束を形成しないアクチン繊維は、細胞周期を通じて細胞膜に結合した状態で分布している。
アクチン繊維の重要な機能の一つは、原形質(核をはじめとする内容物)流動やオルガネラ(細胞内小器官)の移動であり、これは物質やオルガネラに結合したミオシン(モータータンパク質)がATPを消費しながらアクチン繊維に沿って移動することによって起こる。ほかにも細胞質表層微小管の安定化や配列変換に働いている。分裂期に入ると、アクチン繊維は前期前微小管束 (PPB)やフラグモソームの中に出現する。また紡錘体やフラグモプラストの保持にもアクチン繊維が寄与している。

 
このように、染色体分裂と細胞内小器官の配置移動までこれらの微小繊維が担っています。これは動物細胞の中心体の役割とほとんど同じです。
つまりタンパク質とヌクレオチドの複合体が細胞分裂の司令塔を担っています。
②細胞壁により細胞質分裂を完成させるのはなんで?
この疑問の正解ははっきりしないのですが、この細胞壁の特徴は注目すべき視点があります。

陸上植物の細胞の特徴として、原形質連絡 (plasmodesma, pl. plasmodesmata) の存在がある。原形質連絡は、細胞壁を貫いて隣接する細胞の間を連結する構造である。細胞の間では原形質連絡を通じて物質の移動が行われる。

http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~algae/BotanyWEB/cell.html

この原形質連絡という構造によって細胞同士の原形質が一部共有される環境にある。その意味で植物個体全体が一つの巨大な「多核体」としての性質を持っているとも考えられます。

http://homepage2.nifty.com/tomi-chan/physio_Folder/docum_Folder/theme.html
細胞壁という硬そうに思えるのですが、原形質連絡という構造によって、細胞間は連続した構造になっており、あたかもひとつの細胞にたくさんの核が存在するような構造をとっているとも考えられています。
■まとめ
今回植物の細胞分裂について調べてみましたが、ほんとに不思議なことだらけです。
多核体という特徴がどのような意味をもつのか?
中心体的役割を担う細胞内の微小繊維群と細胞膜との関係はどのようになっているのか?
これらの追求テーマを引き続き考えてみたいと思います。

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