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エピジェネティクスって、何?

今日は、11/19のエントリー:外圧→自己遺伝子組み換えの仕組み [1]で言及されている「エピジェネティクス」に注目してみたいと思います 😀
エピジェネティクスというのは・・・「DNA配列の変化によらずに、遺伝子発現を活性化させたり不活性化させたりする仕組み」の総称。

セントラルドグマ=「DNA→mRNA→タンパク質→形質発現」では、遺伝形質の発現はDNA配列に規定されることになるのですが、現実の生命現象はそうではなく、DNA配列によらない発現の変異、発現の制御機構が明らかになっています

エピジェネティクスは、生命現象を司る精妙な仕組みのひとつなのです。

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■エピジェネティクスの仕組み
細胞の中のDNAには、タンパク質(ヒストンetc)をはじめとする様々な物質がくっついて、何重にも折りたたまれて存在しています(クロマチン構造)。
エピジェネティクスの機構は、こうした修飾部分に存在していると考えられています。代表的なものは「DNAのメチル化」。

●DNAメチル化
DNAのある配列部分にメチル基(CH3)がくっつくと、情報が読み取れなくなるため、その部位の遺伝子が不活化する仕組み。メチル化-脱メチル化は、しかるべき場所で、しかるべき時に、しかるべき遺伝子が発現するためのシステムですね。
また、このDNAメチル化はレトロトランスポゾンの抑制にも関わっています。

●余談:エピジェネティクスと三毛猫
三毛猫のほとんどがメス(XX)であることが知られています。それはなぜか?
理由は、三毛猫の白い部分以外の毛の色を黒か茶に決める遺伝子がX染色体にあるからです。
オス(XY)は、X染色体が一つしかないので、茶か黒、どちらかの毛色しか持つことができません。
メス(XX)は、二つのX染色体の片方に茶、もう片方に黒の遺伝子があれば、一匹で両方の毛色を持つことになります。哺乳類のメスの細胞では、モザイク状にどちらかのX染色体が不活化しています。ランダムに1つのX染色体が使われなくなることで、白・黒・茶の三色の三毛猫が出来上がるというわけです。
こうした(DNA配列によらない)発現調節もエピジェネティクスの一種と呼ばれます。

※参考:エピジェネティックな遺伝情報発現の制御機構を発見 [5]

■エピジェネティックは個体内次世代細胞へ伝達される
エピジェネティック情報、例えばDNAのメチル化のパターンなどは、細胞が分裂しても保持され安定に次の細胞へと受け継がれます。不思議といえば不思議ですが、この仕組みがないと、細胞が機能分化した多細胞生物の体はまっとうに形成されません。
この現象を「細胞記憶」と呼びますが、そのメカニズムは未解明だそうです。

■エピジェネティックは環境変化によって変異する
植物などで明らかになっているようですが、外圧変化(環境ストレス、温度変化etc)に晒されたときに、DNAのメチル化/脱メチル化を使って数百個の遺伝子の発現を変動させ、危機を回避する機構をもっている生物がいます。
つまり、エピジェネティックは、環境変化に対応する遺伝子のスイッチオン/オフのキーにもなっているのです。

■エピジェネティック情報は世代を超えて遺伝することがあるか?
これは、単細胞生物の場合は当然ありうるとして、多細胞生物の場合は? 
これは正確にはよく分かっていないようです。
一般的には、受精卵からの発生過程において、エピジェネティック情報は一旦リセットされて再構成されるということになっていますが、植物の研究では数世代にわたって継承される現象も言及されています。
「DNAメチル化とラマルク遺伝」 [6]

DNAメチル化がエピジェネティック遺伝の分子機構のひとつであることはほぼ確立されている。
ただし、それは個体内での遺伝であり、子孫へ遺伝するかどうかについては明らかではない。
私たちはイネやトウモロコシを用いて、環境ストレスによってメチル化レベルが変動すること、人工的な低メチル化は矮性形質を誘導し、両者は遺伝することを示した。
「獲得形質は遺伝する」というラマルクの法則は、1930年代までに完全に否定された。
しかし、本研究によって、それは部分的には正しいかもしれないことが示唆された。

有性生殖の動物ではどうなのでしょうか 🙄
(ご存じの方は教えてください

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