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リボソームRNAと核小体

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今日は、RNAポリメラーゼがRNA合成を開始するために必要な、基本転写因子(タンパク質で出来ている)について調べてみました。
まず、RNA合成について簡単に復習してみましょう。
タンパク質を合成する場合、RNAポリメラーゼがDNAよりタンパク質のもととなる情報(ATGCの塩基の並び)を読み取り、その情報をもとにmRNAが出来ます(転写)。このmRNAの塩基の並びに対応した塩基を持つtRNAが集合します。tRNAは、アミノ酸を背負っています。このアミノ酸が集まり、リボゾームでタンパク質が合成されます(翻訳)。
原核生物の場合、この転写と翻訳をほぼ同時に行います。真核生物の場合、mRNAが核膜から細胞質へと移動して核外で翻訳を行います。
このRNAを作るRNAポリメラーゼへ転写の開始位置を指示しているのが、転写因子です。
紹介する記事は、リボゾームRNA合成に使われる転写因子が、原核生物~初期真核生物~植物で共通のタイプ(B型転写因子)を使っているという報告です。しかし、菌類と動物では、B型以外の転写因子に変わっているようです。
(なぜ変わったのか?非常に気になりますが、これは今後の追求課題とさせてください。)
また、この転写因子は、初期真核生物でも植物でも核内の核小体に集合しています。
おそらく、原核生物段階でも核小体のように転写因子を含むRNA合成系が集合している部分(核小体の前駆体)があったと、私は考えています。
原核生物の転写と翻訳がほぼ同時に行われるように、RNA系の合成も早いスピードで行われているはずです。核膜を持たない原核生物の場合、環状DNAのRNA系情報周辺に核小体前駆体はあるのではないでしょうか。

では以下、新たな基盤転写(RNA 合成)系の発見 原始生物シゾンで解明されたリボゾームRNA 合成系進化のミッシングリンク [1] より、リボゾームRNAと転写因子、核小体の関係です。
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上図は「原核生物のリボソームの立体構造」です。画像は、こちら [5]からお借りしました。

ゲノムDNA にコードされた遺伝情報が発現するためには、まず様々なDNA 配列がRNAに写し取られることが必要です。
その中でも、リボゾームRNA 遺伝子からは特に大量のRNA が合成されており、時には細胞内で起こるRNA 合成の70%以上を占めるとも言われています。これは、細胞にとってリボゾーム合成のエネルギー負荷が非常に大きく、リボゾームRNA の合成を適正に制御することが、細胞が増殖したり分化したりする上で重要な意味を持つことを意味しています。
(中略)
リボゾームRNA の合成は、バクテリアや古細菌では唯一のRNAポリメラーゼにより行なわれます。
しかし、真核細胞ではリボゾーム合成専用のRNA ポリメラーゼ(RNA ポリメラーゼI)が進化し、他のRNA ポリメラーゼ(RNA ポリメラーゼII とIII)と異なる調節を受けるようになりました。3種の真核細胞RNA ポリメラーゼの本体は、どれも古細菌RNAポリメラーゼと良く似ていますので、これらは古細菌に近い生物のRNA ポリメラーゼから進化したと考えられています。
同様に転写開始因子についても、古細菌RNA ポリメラーゼの転写開始反応にB 型転写因子が必要なように、真核細胞のRNAポリメラーゼII、III の転写開始反応にも同様のB 型転写因子が必要です。
従って、これらのRNA ポリメラーゼは、共通のしくみで反応を進めていると考えることができます。しかし、リボゾームRNA 合成を行なうRNA ポリメラーゼI については、これまでの研究では対応するB型転写因子が見つかっていませんでした。これが何を意味するのか、どのような進化が起きたのかは長い間の謎だったのです。

真核細胞のRNAポリメラーゼIIとIIIによる転写開始には、それぞれTFIIB、BRFと呼
ばれるB型転写因子が必要です。しかし、これまでに研究の進められてきた菌類や動物では、RNAポリメラーゼIに対応するB型転写因子は見つからず、それぞれ他のタンパク質により機能が代替されていると考えられてきました。最近、植物のゲノム解析や他の研究により、植物がTFIIBやBRFと異なる第3のB型転写因子を持つことが明らかにされました。本研究では、モデル植物であるシゾンを主に用い、この第3のB型転写因子pBrpの機能解析を行ないました。
まず、pBrpはB型転写因子ですから、対応する遺伝子のプロモーター領域(RNA合成に関わる制御DNA領域)に直接に結合すると予想し、様々な遺伝子のプロモーター領域へのpBrpの結合を調べました。その結果、pBrpはリボゾームRNAのプロモーター領域に特異的に結合することが明らかになりました。また、試験管内転写系を用いた解析により、pBrpがRNAポリメラーゼIの転写開始反応に必要であること。さらに細胞内でリボゾームRNA合成の場である核小体に局在していたことから、pBrpがRNAポリメラーゼIに特異的なB型転写因子であり、リボゾームRNAの合成に関わることが明らかになりました。さらに、同様の実験を種子植物であるシロイヌナズナにおいても行い、ここでもpBrpがリボゾームRNAの転写に関わる証拠を得ています。これらのことから、研究グループはpBrpが、植物において一般にRNAポリメラーゼIとともにリボゾームRNA転写に関わると結論づけました。

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