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ヌクレオチドの生成と生物史

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MASAMUNEです 8) 。
前回の記事 [2]からの続きです。
DNAやRNAはヌクレオチドからつくられています。
今回は原始生物はどうやって有機物(=ヌクレオチド→DNA、RNA)を獲得したか?そしてなんでヌクレオチドが遺伝情報を伝える基を担っているかをまとめた本があったので紹介します 😀 。


細胞の生物学 第3版 「1.細胞の進化」 より抜粋引用 一部編集

地球が最初の10億年間どのような条件の下にあったかは、いまだに論議の的である。しかし地球が、火山の爆発、稲妻、滝のような雨を伴うすさまじい場所であったことはだれも異論がないようだ。分子状の酸素は存在したとしてもごく少なく、太陽からの強い紫外線を吸収するようなオゾン層はまったくなかった。紫外線やされによる光化学反応により、大気中には活性分子が豊富に存在し、化学的平衡状態からほど遠い状態に保たれていたと思われる。

そのような条件下で、単純な有機物(すなわち炭素を含む分子)はすでに合成されていた。これは実験で確かめられる。なかでも細胞中にみられる主要な低分子有機物、すなわちアミノ酸、糖、そしてヌクレオチドの生成に必要なプリンやピリミジンが生成することは重要である。

アミノ酸やヌクレオチドなどの簡単な有機物は、重合して多量体を作る。アミノ酸どうしはペプチド結合を作り、ヌクレオチドはホスホジエステル結合で連結する。この反応を繰り返すとポリペプチド、ポリヌクレオチドと呼ばれる線状のポリマーができる。ポリペプチドはたんぱく質とよばれ、ポリヌクレオチドにはリボ核酸とデオキシリボ核酸がある。これは、現存の細胞にとって最も重要な構成成分である。全てのたんぱく質は20種のアミノ酸からできており、RNAとDNAはそれぞれ4種のヌクレオチドからできている。どうしてこれらの単量体が、他の類似物質をさしおいて生合成の素材に選ばれたのかはよくわからないが、これらの物質でできた多量体には、細胞内での役割に格別都合のよい化学的性質が備わっている。

初期には多量体はいろいろな道筋で生成したと思われる。一度できあがった多量体は触媒として働くので、続いて起こる化学反応に影響を与える。
原始生命が生まれるには、これらの分子の組み合わせでたとえわずかでも、触媒分子が直接間接に触媒分子を作るようでなくてはならない。自己をふやす性質をもった触媒の出現は有利だから、最も効率よく自己再生産をする分子は、他の物質を作る素材も取り上げてしまっただろう。こうして、有機物質の複雑なシステムが発展して、共働しながら環境から簡単な原料を取り入れては同種の分子をさらに生み出していくようすを想像することができる。このような自己触媒系は生物らしさの特徴の一部を備えていると考えていいだろう。すなわち、ただランダムに取り合わせた相互作用する分子でできているというのではなく、自己を再生し、栄養源を同じにする他の系と競争し、栄養源が枯渇したり不適当な温度にさらされて反応速度のバランスが乱れると崩壊して”死”に至るという性質である。

しかしどんな分子が、このような自己触媒能をもてたのだろう。現存の細胞内で最もよく使われている触媒はポリペプチド(たんぱく質)である。ポリペプチドはいろいろな側鎖をもった多種のアミノ酸で構成されており、そのために多様な三次元構造を作り活性を示す凹凸構造をつくる。ただし、ポリペプチドは触媒としては有用だが、その分子が直接同じ分子を指示して作らせることはない。

ポリヌクレオチドの性質はポリペプチドとは対照的だ。ポリヌクレオチドは触媒能こそ限られているが、自分自身の配列の正確なコピーを直接指令して作ることができる。この能力はヌクレオチドの相補的塩基対形成に依存しており、一方のポリヌクレオチドを鋳型としてもう一方のポリヌクレオチド合成が起こる。理由はヌクレオチド中の塩基は選択的対形成能(2つのポリヌクレオチドが化学結合により1対になり、しかもその相手が決まっている)をもつからである。

このような相補的な鋳型の働きはきわめて単純で、生物系の情報伝達過程の中核をなしている。細胞に含まれる遺伝子情報は、全てポリヌクレオチド分子の塩基配列中に書き込まれており、この情報は相補的塩基対形成の助けで次々と世代を通して伝えられる(遺伝する)。

しかし鋳型として働くには、重合を起こさせる触媒が必要である。これなしでは反応は遅く効率も悪く、他の競合反応に妨げられて正確な複製ができない。ヌクレオチドを重合する現在の触媒機能は、酵素とよばれる高度に特殊化したたんぱく質に担われている。生命発生前は、たぶん原始的なポリペプチドが触媒として働いていただろう。

少し複雑な配列のポリヌクレオチド、すなわちRNAを考えよう。
RNA合成とたんぱく質合成の切り離せない相互関係は上記の件の最たる例だが、RNA分子自身も自分の複製の鋳型となるだけでなく、いろいろな触媒活性をもつことができるのである。なによりも、適当な塩基配列をもったRNA分子は、別の配列をもったRNA分子の複製の触媒として働くことができる。RNAが特別な能力に恵まれていたおかげで、この分子は生命の起源において中心的な役割を果たしたのだろうと考えられる。

今から35億年ないし40億年前に、地球上のどこかでRNA分子の自己複製系が、簡単なポリペプチドなどの有機分子と混合して進化を始めたと考えられる。いろいろな組み合わせのポリマー系どうしが、今日の生物間の競争のように自分のコピーを作ろうと材料を奪い合ったことだろう。その成否はコピーを作る正確さと速さ、およびできあがったコピーの安定性にかかっていたはずである。
しかし前にも述べたように、ポリヌクレオチドの構造は情報の貯蔵と複製には適しているが、触媒能はポリペプチドに比べると限られており、現在の細胞のポリヌクレオチドの複製は完全にたんぱく質に依存している。生命の起源において、その環境内で有用なポリペプチドの合成を指令できるポリヌクレオチドは、生存競争の中で非常に優位を占めたことだろう。
しかし、あるポリヌクレオチドに担われた情報が、どうやって別種の多量体の配列を指定できたのだろう。おそらく、これらのポリヌクレオチドにはアミノ酸を選んで結合させる反応の触媒能が備わっている。現存生物でRNA分子の協調系が中心的役割を果たしているのは、ポリペプチドの合成、すなわちたんぱく質の合成だが、ここには、すでに合成された他のたんぱく質も関与している。おそらく初期にはRNA分子がたんぱく質の助けなしで、たんぱく質の合成を行ったのだろう。

今日ではたんぱく質合成反応はリボソーム(今述べたものとは別種の大きなRNA数個と50種以上のたんぱく質からなる複雑な粒子)の表面で起こる。これらの粒子のなかで合成反応の触媒として中心的な役割を演じるのは、リボソームの質量の60%以上を占めるリボソームRNAである。少なくとも進化の見地からは、これはリボソームの基本物質である。

RNAはおそらくぎこちない原始的なやり方で原始たんぱく質の合成を助けたのだろう。そしてたんぱく質という効率のよい生合成の道具を作り出し、そのうちあるものはRNAの複製に、またあるのものは道具の生産そのものに利用されるようになった。
RNAの助けで起こるたんぱく質の合成には、遺伝暗号、つまりアミノ酸配列を指令するヌクレオチド配列の誕生が必要だった。この遺伝暗号-遺伝コードは3文字を1語としてつづられ、ヌクレオチドのトリプレット(3つ組)は、それぞれ決まったアミノ酸を指定している。コードは任意に選ばれたようにみえるが(何らかの制約はあったかもしれない)、あらゆる生物で実質的に同じである。このことは現存する全ての細胞が、たんぱく合成の機構を作り出した原始細胞の直系の子孫であることを強く示唆している。

長い引用でしたが読んでいただきありがとうございます。

ポイントは、
①ヌクレオチドは単純な機構で安定したコピーを残すことができる。
②生物は次世代に安定した情報を残すためにヌクレオチドの性質を積極的に利用した。
③ヌクレオチドを重合したRNAはたんぱく質を合成し、それと助け合って現在の遺伝機構を形成した。これは原始細胞から多細胞生物を貫く遺伝機構である。
ということです。
初期生物は過酷な状況で生まれたと考えられます。そして、外圧に適応するためにかなり多様に生まれたと考えられます。そのなかで、いくつか適応したものもいたでしょうが、次世代につなげる機能がなく消滅していったと考えられます。
そこで適応できた情報を次世代に確実に伝えるツールとして取り込んだのが、単純な機構で安定した情報を残すことができる有機物=ヌクレオチド(→RNA)だと考えられます。
この機能を獲得したことにより、生物は外圧に適応し、私たち人類につながるまでに進化を遂げてきました。
生物は常に外圧に適応し、成功した情報を次世代に残し進化してきたということですね。
様々な可能性を模索し、適応してくれた僕たちの祖先に感謝です:D 。
(MASAMUNE)

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