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酵素の反応調節

こんにちわアリンコです。この前頂いたコメントにも応えなきゃと思いつつ、本日は、ちょっとおいとかせていただいて、地道に酵素の活性調節の仕組みについて投稿させていただきます。
真核生物の酵素調節には大きく2つの方法が存在します。
1:酵素タンパク質が他の生体分子と可逆的に作用することによる酵素活性の変化
2:酵素タンパク質が修飾されることによる酵素活性の変化
1や2の調節の例として、フィードバック阻害が挙げられます。
 一般に触媒反応の反応速度は、基質濃度と生成物濃度により影響を受けるのですが、酵素反応の場合、ある複数の段階からなる代謝経路において、酵素の直接の基質、もしくは生成物以外の代謝生成物が酵素の反応速度を制御する場面があります。
 特に、代謝生成物が過剰になったときに、生成物が何段階か上流過程の酵素反応を阻害することで産生を抑制する調節過程の事をフィードバック阻害と呼んでいます。
 フィードバック制御で代表的なものとしては、アロステリック効果と共有結合修飾による調節が挙げられます。
アロステリック効果って??共有結合修飾って?と思った方はポチっと押して続きをご覧下さい。
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①アロステリック効果
 アロステリック効果とは、タンパク質の機能が他の化合物によって調節される事を言います。
タンパク質の機能を調節する物質のことをアロステリック制御因子やアロステリックエフェクターなどと呼んでいます。
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画像はこちら [4]からおかりしました。
・アロステリックエフェクターは、対象となる酵素の基質や生成物と似ていないのが大きな特徴です。他の特徴としては、
・酵素とは、非共有結合的に結合する。
・エフェクター自身は酵素による化学変化を受けない。
・アロステリック酵素は、基本的に四次構造を持つ。
・アロステリックエフェクターには、アロステリック活性化剤と阻害剤が存在する。
・アロステリックエフェクターは、タンパク質の機能的な結合部位とは別の部位の可逆的に結合する。
等が挙げられます。
このようにアロステリックエフェクターによってその活性が変化するタンパク質をアロステリックタンパク質と呼びます。
 酵素は、ほとんどがこのアロステリックタンパク質で、表面には基質を識別する活性部位と離れた位置に調節分子を識別する部位(アロステリック部位)を持っています。
 
 アロステリック部位にアロステリックエフェクターが結合するとタンパク質の形がわずかに変化し、元の立体構造とは、これまたわずかに異なる立体構造を取るようになります。より具体的には、基質を受け入れるくぼみの形がちょっとだけ変わるのです。
 このわずかな変化で活性を調整しているのです。変化は少しだけど効果は絶大!という事ですね。
 また、アロステリック酵素(タンパク質)は、通常、活性な形(R状態)と不活性な形(T状態)が素早く交換するバランスした平衡状態で存在しています。
 基質は、活性中心に結合しますが、酵素がR状態にある時に最もよく結合します。
 一方、アロステリック阻害剤は、T状態で最もよく結合します。アロステリック阻害剤が結合すると、アロステリック酵素は、素早くR状態からT状態へ変化する。
 反対に、基質の活性部位への結合やアロステリック活性化剤のアロステリック部位への結合は、T状態からR状態への変化を誘導する事が分かっています。
②共有結合修飾による調節
 もう一つの調節機構は共有結合修飾による調節です。こちらは、酵素とある物質が共有結合する事で立体構造を変化され、活性度を調節する機構です。
 共有結合修飾によって制御される酵素は、相互変換酵素と呼ばれ、一般にR/T転移(活性、不活性)を起こします。
 共有結合により活性調整する反応を、共有結合置換反応と呼びますが、通常、酵素はこの置換反応によって、一方のコンホメーションか他方のコンホメーションに固定されています。そして、この置換反応は、プロテインキナーゼやチロシンキナーゼ等、変換酵素とよばれる付属酵素で触媒され、置換基の除去はプロテインフォスターゼと呼ばれるまた別の変換酵素によって触媒されます。
 この仕組みを使った調節では、共有結合によるリン酸化/脱リン酸化による活性調節がよく知られています。
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画像はエッセンシャル細胞生物学からお借りしました。
リン酸基は2個の負電荷を持っている為、リン酸基が付加されると、例えば正電荷を持つアミノ酸側鎖がひきつけられて立体構造を変えます。リン酸基が取れるとたんぱく質は元の形に戻ります。
 実は、酵素だけに限らず、リン酸化は一般的な機構で哺乳類のタンパク質はその三分の一以上がリン酸化されているといわれています。しかも、真核生物の細胞分裂は、リン酸化が開始のタイミングを調節していると言われている程重要な反応なのです。
 エネルギーとして知られる、GTP(グアノシン三リン酸)が結合した「GTP結合タンパク質」もリン酸基の付加と除去のサイクルによって活性を調節しています。GTPにタンパク質が結合すると活性化します。そして、GTPの中のリン酸が取れてGDPになると不活性。さらにGDPがとれてまたGTPが結合すると活性化。というサイクルで活性、不活性を調節しています。
このように酵素活性が調節されているおかげで僕らの体内の反応のバランスが取れているのだと改めて感じます。
今後は、酵素とRNAとの関係性を追及していきたいと思います。
参考:エッセンシャル細胞生物学
   ホートン 生化学 第3班
   wikipedia
   トコトンわかる基礎生化学 

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