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細胞周期とヌクレオチド生産の関係

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この画像は臨床研 [1]の「ゲノムの動態解析と細胞機能の制御 [2]」からお借りしました。
上の画像は細胞周期を示していますが、細胞は活動状況によって、以下の3つに分けられます。
①細胞の現状を維持しているだけで物質生産や分裂を行っていない状態。
②タンパク質などの物質を生産している状態。
③DNA複製を行っている状態。
例えば、免疫細胞は日常的に休眠状態にあり(①の状態)、それが抗原が入ってきて指令を受けると、細胞分裂して数を増やしたり(③の状態)、抗体等のタンパク質を盛んに生産したりします(②の状態)。
細胞の活動が活発となり、RNAやDNAが必要になると、その原料のヌクレオチドが必要となり増産されます。その仕組みはどうなっているのでしょうか。
実は細胞の活動状況によって、ヌクレオチドを増産する仕組みは違っているのです。どうなっているのか興味をもたれた方は応援もお願いします。
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●現状維持の状態
①の状態では、細胞は何を作っているわけでもないので、RNAも細胞の機能維持に最小限必要な量しか使われていないため、ヌクレオチドの消費も少ない状態です。
このような状態では、ヌクレオチドの生産はエネルギー消費が少ない、サルベージ経路で行われていると考えられます。
●タンパク質合成期
②の状態では、細胞はタンパク質を作るためにRNAを盛んに合成する必要があります。そのため、RNAの原料となるリボヌクレオチドの消費が盛んになります。
リボヌクレオチドの消費が盛んになると、サルベージ回路ではリボヌクレオチドの生産が間に合わず、細胞内のリボヌクレオチド濃度が減少します。
すると、エネルギーを消費して大量のリボヌクレオチドを合成する、デノボ経路が働き出します。デノボ経路は、リボヌクレオチドの濃度が高いと、リボヌクレオチド合成酵素の働きが抑制され、濃度が低くなると合成酵素の働きが活性化されるという形で制御されています。
また、不要になったRNAやヌクレオチドを分解排出する経路も備わっており、必要以上に濃度が高くなれば、製造が抑制されると同時に、分解排出も行われます。
●DNA複製期
③の状態では、細胞はDNAを複製するために、DNAの材料であるデオキシリボヌクレオチドを消費します。デオキシリボヌクレオチドはリボヌクレオチドから作られるため、結果としてリボヌクレオチドも消費されます。
したがって、この③の状態でもデノボ経路が働き、エネルギーを消費しながらリボヌクレオチドを生産することになります。
ちなみに、デオキシリボヌクレオチドの製造の過程は、還元酵素(レダクターゼ)により、リボ・ヌクレオチドのリボース(糖)が、デオキシ(脱酸素化=還元)されることで、デオキシ・リボ・ヌクレオチドになるという過程です。
DNA複製の過程では、さらに様々なDNA複製酵素も必要であり、大量のタンパク質が作られるので、タンパク質をつくるRNAも大量に必要となります。これを同時に行うとなると、リボヌクレオチドの消費量が非常に多くなります。
細胞分裂にG1→S→G2→Mという細胞周期があるのは、デノボ経路といえどリボヌクレオチドの生産量に限りがあり、DNA複製とRNA合成の時期を分ける必要があることを示しているのかもしれません。
●ヌクレオチドの製造状況と、細胞の状態
①の休眠期
⇒サルベージ回路でリボヌクレオチド生産
②の一般活動期、細胞分裂のG1期、G2期、M期
⇒RNA生産⇒リボヌクレオチド消費⇒デノボ回路起動⇒リボヌクレオチド大量生産
③の細胞分裂のS期(DNA複製)
⇒DNA生産⇒デオキシリボヌクレオチド生産⇒リボヌクレオチド消費⇒デノボ回路起動⇒リボヌクレオチド大量生産
●DNA・RNAの増産は細胞外のシグナルで始まる
また、①の状態から、②・③への移行は細胞外のシグナルが原因で行われます。多細胞の場合は、全ての細胞が有機的に制御されている必要があることから各細胞が勝手に物質を作ったり、分裂することはありえません。
単細胞も、細胞同士の連携があると思われますし、少なくとも生存環境を無視して増殖することは出来ませんから、細胞外のシグナルは不可欠だと考えられます。
以上の情報を整理すると以下の図のようになります。
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