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原核生物におけるDivIVAの役割(1)

 9/20に書いた「原核細胞分裂時のDNA分配について」( http://www.biological-j.net/blog/2008/09/000569.html [1] )記事中で紹介した原文( http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/299/5606/532 [2] )中の「DivIVA」に関する部分について和訳を試みたので掲載します。「DivIVA」は、真核細胞で言うなら中心体に相当する位置にあり、原核生物の細胞分裂を司っている可能性があります。

「DivIVA」の役割が少しずつ見えてきました。

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       DivIVA …青、RacA …赤、MinCD …黄

◆RacAの局在はDivIVAに依る
 RacAを細胞の極につなぐ役割を果たしているのは、細胞分裂タンパク質DivIVAと考えられる。DivIVAは極に位置し、細胞分割を抑制するMinCDを隔離している。それゆえ、細胞が成長(14)する間、極分割を防ぐ。さらに、DivIVAの変異体は、胞子形成において欠陥があり、頻繁に空の前胞子s(15)を生産する。
RacAの極への局在がDivIVAによるものかどうかを判定するため、われわれはDivIVA変異体でRacA-GFPの局在を調べた。ところで、MinCDは分割タンパク質が存在しないと細胞極に保たれず、中間での分割(14)を妨げるので、通常、細胞成長はDivIVA変異体では損なわれてしまう。この複雑さを回避するために、われわれはMinD、DivIVA(15、16)ともに変異体の系統(SB319)を使用した。
MinDだけを変異させた系統(SB314)におけるRacA-GFP局在は、野生型で観測されたものと概ね同様であり、軸糸形成は正常であるように(図3、A、およびB)思える。
しかしながら、MinDとDivIVAの二重変異体では、RacA-GFPは芽胞嚢の端部には集中しておらず、代わりに核様体(図3 C)の外側の縁に増殖巣を形成する。
したがって、RacA-GFPの極への局在はDivIVAに依る。この発見は、直接的にせよ間接的にせよ、DivIVAが細胞極へRacAを隔離するのに役立っているという考えと一致する。
また、複製開始点として知られている核様体の外側の縁近くでRacA-GFPの明るい焦点が存在することから、全体的な核様体への親近性に加えて、RacAが複製開始点の近くに存在する傾向にあるものと推論できる。

◆染色体の極への定着と分割
 胞子が形成(図4 C)される間、細胞極に染色体を定着するモデルとして以下を提示する。
RacAは、複製開始点近くに位置する動原体(様の物質)に対応するキネトコア様のタンパク質であり、(直接にせよ間接的にせよ) 細胞極(14、15)へ隔離する分割タンパク質DivIVAと共に機能する。さらにRacAは、染色体の複製開始点に、染色体を極へ分離させる粘着質の小片として集合する。極への定着を促進させるのは、RacAが全ゲノムを(その方法は特定できないものの)拘束する能力である。
われわれは、染色体を拘束するこの(RacAの)分散状態が、核様体を引き延ばし、極から極へ達する軸糸に改変するのを手助けしていると考えている。この改変機能を持つRacAは、芽胞嚢において豊富に存在しており、B.subtilis( 18 )において染色体凝縮を引き起こすタンパク質(SMC)と同様の濃度(1細胞あたり3000個の分子)に達する。
また、RacAは極分割においても役割を果たすようだ。バクテリアの分割隔の位置は、細胞動態リング(19、20)におけるチューブリン様のタンパク質FtsZが合成される場所の近傍に決定される。胞子が形成される間、極分割隔の形成は、Z環の位置にあるスイッチにより細胞の両極からの中間部(21)において起こる。(細胞分裂は通常、1個の極のZ環だけに起こる)
このスイッチは、らせん状の中間物によって媒介され、FtsZレベルの増加とFtsZが関連するタンパク質(22)の合成によって引き起こされる。さらにこのスイッチは、細胞の中間から極までの間で、FtsZ分子を再配置する原因となっているかもしれない。
通常、成長細胞における極分割は、分割を抑制するMinCDの分離によって抑制される。つまり、MinCDが細胞極(14、19、20)に在ることでZ環化を妨げる。上述したように、DivIVAは細胞極でMinCD(14)、RacA双方を分離させる2つの機能を持つタンパク質である。
MinCDとRacAが、DivIVAと共に連続的かつ競争的に相互作用することで、極分割の引き金となる手助けをしているのである。われわれのモデル(図4 C)では、RacAはDivIVAからMinCDを移動させ、極からMinCDを開放して、極でのZ環化を容易にする。
(以下略)

次回に続く。

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