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分裂形成を担うZリング(タンパク質集合体)②(続編)

2008年09月07日の記事http://www.biological-j.net/blog/2008/09/000558.html [1]で、原核生物(細菌)の細胞分裂装置形成の基盤となるFtsZ蛋白質によるZリング形成について紹介しました。
今日の記事は、Zリング形成にいたり、細胞膜上では様々な蛋白質がダイナミックに相互作用することで、分裂形成を行うことが可能となっています。
前回の記事をふまえ、整理しました。
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図は枯草図の細胞分裂サイクル
(a)FtsZ重合体はらせん状に振動、Minシステム(緑色の領域)と核様体(黄色で示した核様体の周辺領域)によりZリングの形成が阻害されている。
      ↓↓↓
(b)核様体の分配に伴い、細胞の中央部には核様体が希薄な領域ができる。細胞の両極はMinC-MinD複合体によりZリングの形成が阻害されているため、細胞の中央のみZリングが形成される。
      ↓↓↓
(C)後期細胞分裂蛋白質が局在したのち、Zリングの収縮が起こる、Zリングの収縮と細胞膜・細胞壁の合成により隔壁が形成される。
細胞分裂装置の根幹はFtsZ蛋白質である。
・FtsZ蛋白質はほぼ全ての細菌、多くの古細菌、原始紅葉、植物の色素やミトコンドリアなどに保存されている。
・真核生物の微小管を形成するチューブリン(蛋白質)と似た分子構造を持つ。
・FtsZ蛋白質は染色体の複製後、細胞分裂に先立ち、重合体としてらせん構造をとりながら細胞膜直下をダイナミックに振動している。
・ZリングがGTPの加水分解により、湾曲した構造になる。
⇒Zリングの形成に加えて、FtsZ蛋白質は収縮に必要な力をもつ。
FtsZアクセサリー蛋白質
・・・FtsZ蛋白質と相互作用する蛋白質のこと。

1.FtsZ蛋白質を細胞膜に局在させる(FtsA,ZipA,SepF)
FtsA(アクチンに似ている)、ZipAは、大腸菌の生育・細胞分裂に必要である。
SepF は、FtsAをもたない細菌においてもほぼ完全に保存されている。
2.FtsZ蛋白質の重合を調節する蛋白質
ZapA,ZapBは、Zリングを安定化させ、形成を促進する蛋白質
リングを形成する場所の決定
Zリングは、DNA複製後、核様体が分離して細胞の中央に核様体が希薄な領域ができ、Zリングが形成される。
細胞の両端(極)におけるZリング形成をMinシステムが、また、核様体近傍におけるZリング形成を核様体閉鎖とよばれるシステムが、阻害している。
おそらく、分裂形成を正確におこなうためであると思われる。
1.Minシステム
大腸菌では、minC遺伝子、minD遺伝子、minE遺伝子からなるひとつのオペロンにコードされている。らせん構造している。
2.核様体閉鎖
蛋白質である枯草菌のNocと大腸菌のSimAは核様体上に一様に分布。
これらの遺伝子をMinシステムと同時に欠損させると、細胞の中央部以外の核様体上にもZリング形成が見られる。核様体閉鎖を過剰発現させると、細胞分裂が阻害される。
後期細胞分裂蛋白質
Zリングの維持・収縮、分裂面での細胞壁の合成に重要である。
★以上より、様々な蛋白質が細胞分裂形成に至り、役割を持ちながら機能しているようだ。
細胞分裂に至る流れをまとめると、
FtsZ蛋白質は染色体の複製後、Minシステムと核様体閉鎖と呼ばれるシステムにより、細胞の中央部を正確に選択し、FtsZアクセサリーの助けをかりて、Zリングとよばれるリング構造を形成する。
後期細胞分裂蛋白質に依存しながら、Zリングの収縮力により隔壁の合成を行い、細胞分裂を行う。

参考
PNE 蛋白質核酸酵素 2008/10

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