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「タンパク質の一生・・・・生命活動の裏舞台」を読んで(1)

分子生物学のことを勉強すると、至るところで「タンパク質」に出くわし、その機
能の多様さに驚きを禁じ得ませんが、「何者であるか?」を知りたくて「タンパク
質の一生――生命活動の裏舞台」(永田和宏著 岩波新書)を読みました。
益々謎が深まる感もしないではありませんが、そのレポートをしてみます。
●タンパク質の基礎情報
動物生体の構成成分は、生重量で水(67%)、タンパク質(15%)、脂質(13%)、無機質(3%)、淡水化物・核酸・その他(2%)といわれます。
タンパク質は生体内に多量に存在し、細胞の構成成分であり、代謝の反応と調整の主役です。その無限に近い多様性と変幻自在な構造が、生物の多様性と常に変化する生命現象を支えています。
ヒトは、約10万種類のタンパク質を持つといいいます。その主だった働きとかかわるタンパク質は、ざっとあげてみても、◆〔構造〕細胞や個体の構造物をつくる、コラーゲン、ヒストン、ケラチンなど。◆〔酵素〕生体内で触媒として化学反応を進める、アミラーゼ、キモトリプシン、DNAポリメラーゼなど。◆〔運動〕生物の運動や構造の変化を起こす、アクチン、ミオシン、チューブリンなど。◆〔輸送〕特定の物質と結合してからだの各部へと輸送する、キネシン、ヘモグロビン、ナトリウムポンプなど。◆〔防御〕免疫として生体防御に働く、免疫グロブリン(群)、主要組織適合性抗原複合体、フィブリンなど。◆〔ホルモン〕情報を伝達する、インスリン、成長ホルモンなど。◆〔受容体〕特定の物質と結合して細胞内部に情報を伝達する、成長ホルモン受容体、アセチルコリン受容体など。◆〔調整〕特定の物質と結合して様々な生命活動を調整する、リプレッサーなど。◆〔栄養貯蔵〕胚やからだの成長に利用される、アルブミンなど。
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【1】誕生
るいネットの「DNA→RNA→タンパク質合成を理解する参考サイトの紹介」 [4] でCGによる動画サイトを紹介していますので、そちらをご覧下さい。
【2】成長
以前は、アミノ酸の配列がきまれば、タンパク質が自発的に機能型に成熟するものと見做されてきましたが、この過程には特殊な機能を持った「分子シャペロン」と呼ばれる一群のタンパク質が関与している事が明らかになってきました。
●タンパク質が機能を持つためには、「構造化」が必要
20種類のアミノ酸が数珠つながりになって、様々な分子量のタンパク質が作られますが、一本のヒモのままではタンパク質の「機能」を持つことはできません。機能を持つためには、ポリペプチドが折りたたまれて三次元の「構造」を作る必要があります。
「フォールディング(折り畳み)」されて様々な構造を獲得することで、分子の表
面に様々な凹凸ができます。その凹凸を利用して、他のタンパク質や他の分子と特異的な相互作用をすることが、タンパク質の機能の多様性のもとになっているのだといいます。
◆タンパク質の立体構造の4つのヒエラルキー
〔1次構造〕:アミノ酸が一列に並んだだけのポリペプチド。
〔2次構造〕:ポリペプチド鎖の部分にできる規則的な構造。
        水素結合が主役で、ジグザグ構造のβシートや
        らせん構造のαシートが代表例。
        立体構造の骨格的役割を果たす。
〔3次構造〕:2次構造をとったポリペプチドがS-S結合や  
        疎水結合などで折り畳まれてできた複雑な構造。
〔4次構造〕:3次構造をもつ複数のタンパク質の複合体。
◆フォールディング(折り畳み)の原則
一列に連なるポリペプチドは、親水性のアミノ酸が密に存在する部分と、疎水性のアミノ酸が集まっている部分が混在しています。疎水性のアミノ酸の集合部分(=クラスター)同士がくっ付きあってタンパク質の内側に折り畳んで、水に触れる部分が少なくなる事が、水環境下でのタンパク質の安定の鍵になります。
◆タンパク質の構造を支える〔結合〕の種類
〔S-S(ジスフィルド)結合〕
側鎖にSH基をもつシステイン間で、Hが失われてできるS(硫黄原子)同士が強く結合する共有結合。強い主鎖の折れ曲がりや、異なる主鎖同士を結びつける役割を果たす。
〔水素結合〕
C=О基などのОと、NH基などのHの間とか、NHのHとC=N-CのNの間で生じる弱い結合。
〔イオン結合〕
陽イオンと陰イオンが互いに静電作用によって引き付け合うあまり強くない結合。
〔疎水結合〕
疎水性(水との親和性の低い)の側鎖(非極性側鎖)を持つアミノ酸を含むタンパク質は、水中では疎水性の側鎖を包み込み、親水性の側鎖を外に露出して全体が球状の構造をとる。
タンパク質の構造は、主としてこの4つの力によって、3次構造・4次構造が安定化される。
参考になるサイト⇒「タンパク質の基礎 [5]」*映像情報あり
参考:「タンパク質の一生」永田和宏著 岩波新書
     つづく     by /びん

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