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中心体の基礎知識

今日は中心体について基礎知識を簡単にまとめてみようと思います。
なんでいきなり中心体?って感じた方もいらっしゃるかもしれませんので、まず初めに中心体を調べる目的について簡単にお話します。
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今日は中心体について基礎知識を簡単にまとめてみようと思います。
なんでいきなり中心体?って感じた方もいらっしゃるかもしれませんので、まず初めに中心体を調べる目的について簡単にお話します。
動物細胞において、細胞分裂の際に中心となって働く微小管形成中心(MTOC)は主に中心体にあります。つまり、中心体がないと、うまく細胞分裂できない のです。更に、中心体の複製は染色体の複製に先行し、驚くべきことに中心体を構成するタンパク質をコードしている領域はDNAには存在しない ようなのです。
細胞分裂(⇒「種」の保存)は生物が生物たる非常に重要な機能であり、例え生物らしきものが生まれ得たとしても、分裂できなければ「種」として存続できないという意味で、生物としての根幹の機能とも言えるわけです。
これらのことから言えることは、中心体について調べていくことは、現在もまだ明らかになっていない生物の起源(RNAワールド、DNAワールド、タンパク質ワールドetc.)にも大きく関係してくるのではないか、ということなのです
では、なぜより原始的な生物である原核生物ではなく、真核生物の細胞分裂を扱うかというと…
原核生物は未だにわかっていない領域が非常に多く、また、最近の研究で原核生物にも中心体の原基のような物質が存在するらしいことがわかってきているようなのです。原核生物にも中心体の原基のような物質が存在するとすると、原核生物に比べれば多少は解明されつつある(とは言ってもまだまだわからない領域が相当あるようですが…)真核生物の中心体を調べた方が生物の起源に迫れるのではないか、ということなのです。
以上、前置きが長くなってしまいましたが…
今回は中心体の基礎知識ということで、中心体の分裂を中心に簡単にまとめてみたいと思います
■中心体の構造
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中心体は上図のように1対の中心小体と、その周りを雲上に取り巻く不定形の物質(中心体マトリックス)からなっています
■中心体の複製
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真核細胞では分裂に先立って、中心体が複製され、2つの娘細胞に1つずつ分配されるようになっていなければなりません。上図のように、中心体は有糸分裂紡錘体の両極となるので、2つの娘細胞を生じるには中心体の複製が不可欠です。
中心小体の複製は以下の図のような過程で複製されるようです。
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前述したように、中心体は中心小体と中心体マトリックスから成りますが、現在の研究では、中心小体が存在しなくても正常に分裂するという報告もあり、中心体に特異的なタンパク質が存在する中心体マトリックスが最も重要な部位であると考えられているようです。
興味深いのは、中心体は細胞小器官の一種でありながら自己複製能を持ち、DNAとは無関係のため、例えばウニ卵から核を物理的に取り除くか、核DNAの複製をDNA合成阻害剤で阻害しても、中心体の倍加と分離の周期はほぼ正常に進行します。また、ショウジョウバエの初期胚で同じようにDNA阻害剤処理を行うと、胚の内部で増えた中心体は、複製を阻害されている核から離れて細胞膜へ向かって細胞質の中を少しずつ移動していきます。細胞膜まで来ると、中心体は星状体を介して膜とその内側の皮層の形を変え、中心体はあるが核を持たない細胞を作り出すようです。
つまり一般の細胞の細胞分裂周期全体は中心体が取り仕切っているのです
【参考】 「細胞の分子生物学」Bruce Alberts著(ニュートンプレス)
中心体について、もっと詳しく知りたい方は当ブログの以下の記事も併せてご参照ください。
細胞内の働き者 「微小管-中心体」に注目! [4]
微小管、中心体のはたらき(運動・情報) [5]
中心体は、生命の統合器官のひとつ [6]
最新の中心体研究事情「γチューブリンの発見」 [7]

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