2008-09-02

中心体から生命の基幹システムを探る(仮説) 

こんにちは、NISHIです。
今日は先日の記事に続いて、中心(小)体に関して書きたいと思います。(中心体と中心小体の関係は、先日の記事を参照して下さい)
先日の記事でも扱われているように、中心体は細胞分裂時に、染色体を分割する役割を担っており、細胞分裂の鍵を握っています。
このことから考えても、生命の基幹システムを探る上で中心体を追求することは、非常に重要ですが、今現在のところ、生物学界でも詳しいことは解っていません。
中心体を追求する上で、何かとっかかりはないか?と思っていたところ、るいネットで一緒に生物史を追求している認識仲間から、「中心小体論」(六法出版社 竹内美継著書)と言う本を紹介されたので、早速読んでみました :twisted:
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この本で展開されている中身の骨子概略を述べると、【DNA→RNA→タンパク質と言うセントラルドグマは完全に生命の捉え方を誤っており、生命の本質・根幹は「中心小体」にこそある】と言うものです。
はっきり言って、この本で展開されている内容は、論理が滅茶苦茶。事実構造と主観と価値観が入り乱れて展開される上に、何度も同じような内容が繰り返され、更に極めて解りにくい表現が多い為、読むのは相当に疲れます。何が言いたいか読み取るのも一苦労
しかし、生命の基幹システムを探る視点としては、注目すべき視点が提示されていました
 

 ・DNAによって細胞全体の生命活動が統合されていると言うのは、完全な過ち
  →中心小体が、全体を統合している
 ・中心小体は何らかの記憶物質(著者によれば記憶素子→記憶単子)が集合して
  形成された。

これらの中身を検証しながら、中心(小)体と生命の基幹構造について探って行きたいと思います。
■細胞全体の生命活動を統合しているのはDNA?
まず、細胞の生命活動とは何を意味するでしょう?
それは大きく、細胞の新陳代謝=「タンパク質合成過程」と細胞の増殖=「細胞分裂過程」の2つに分けて考えることができます。
DNA・RNAについては、前回のなんでや劇場で詳しく扱われました。(なんでや劇場レポート参照:http://www.biological-j.net/blog/2008/07/000529.html
この中でも展開されたように、DNAは2重螺旋状の安定構造をした、極めて不活性な物質です。タンパク質合成過程、細胞分裂過程のいずれにおいても、DNAはコピーされるだけで、何の働きもしません。このことから、細胞の生命活動=タンパク質の合成と細胞分裂による増殖をDNAが統合していると言うのはあり得ない論理です。
一方で、RNAは一本鎖構造をした活性的な物質で、タンパク質と複合することによって、(DNAとは違い)様々な働きを行います。リボソームと呼ばれるRNA-タンパク質複合体(RNP)でタンパク質が製造されるのは、その代表的働きの一つです。これらの働きから、細胞の生命活動の一つである、「タンパク質合成過程」においては、RNA(RNP)がその活動の統合を担っていると言えます。
では「細胞分裂過程」においてはどうか?
細胞分裂過程においては、先日の記事にも書かれているように、「中心体の複製及び両端への移動→染色体の複製→中心体から伸びた紡垂糸が動原体にくっつき染色体を細胞両端に引っ張る→細胞の真ん中部で、細胞膜にある繊維状タンパクが収縮して細胞を2つにちぎる」と言う順に分裂が進んでいきます。
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この分裂過程において注目すべきことは、染色体(=DNA)の複製に先立って、中心体が複製されていることと、中心体の複製を人工的に阻害する処置を施した細胞では、DNAは複製されないと言うことが実験で解っていることです。
更に、以下のような実験結果もあります。
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上の図から、細胞膜にある繊維状タンパクの収縮→細胞の分裂は、必ず中心体の中間部(図中ピンクと黄色の▽図示部分)で起こることが解ります。
この実験から、細胞膜の繊維状タンパクに収縮の信号を出すのは、染色体(=DNA)ではなく、中心体であることが判明しました。以上の根拠をもって、「細胞分裂過程」においては中心体がその活動の統合を担っていると言えます。
■中心体の正体は?
さて、ここで考えたいのは、中心体とは一体何なのか?と言うことです。
centriole.jpg
<中心体と中心小体>
この問題を考える上で、重要なのは、中心体を構成するタンパク質をコードしている領域はDNAにはない→中心体は「自己複製能」を持っていると言うことです。
中心体は、真核生物の細胞内小器官の一つですが、細胞内小器官の中で「自己複製能」を持つのは、中心体だけ。
中心体は、中心小体を含めて主要にタンパク質で構成されていますが、DNA、RNAと違ってタンパク質には「自己複製能」はありません。
このことから考えられるのは、中心体もしくは中心小体には、なんらかの遺伝情報物質が存在すると言うことです。今現在の研究では、遺伝情報物質は明確に発見されていませんが、そのような物質が存在する可能性は示唆されているようです。
ここからは仮説ですが、恐らく中心体に存在する遺伝情報物質とは、RNA様物質ではないか、すなわち中心体とはRNA-タンパク質複合体の一種=RNPではないかと考えられます。DNAはその安定的な2重螺旋構造故に、タンパク質と複合した反応系を構築することはありませんが、RNAはリボソームに見られるように、タンパク質と複合して極めて活発な反応系を構築します。なんらかの遺伝情報を持ちながら、活発な反応系を構築するとすれば、RNP以外に可能性は考えられません。ちなみに先述した竹内氏は、この中心小体の記憶物質を未だ発見されていない「記憶素子→記憶単子(タンパク質の粒?)」としています。確かにまだ人類の発見していない特殊な記憶物質=情報伝達物質である可能性はあり得ますが、少なくても竹内氏の主張するように、タンパク質である可能性はその分子構造から考えてあり得ません。
RNA-タンパク質複合体=RNPと考えると、現在解っている範囲の分子生物学上の様々な現象事実とも論理整合します。
なお、細かい話ですが、中心小体がRNPなのか、中心小体を含む中心体全体がRNPなのかは、今後追及が必要な項目の一つです 8)
■RNPが細胞の生命活動を統合している
「細胞分裂過程」と言う、細胞の生命活動の一側面のみに注目すれば、その生命活動を統合しているのは、DNAではなく、「中心(小)体」と考えて間違いありません。しかし、より大きい視点=「タンパク質合成過程」まで含めた細胞の生命活動と言う視点で考えれば、細胞の生命活動を統合しているのは、RNA―タンパク質複合体=RNPではないかと考えられます。(以上の視点から、竹内氏の提示している仮説は【部分的に】だが整合していると言えます。)
問題なのは、リボソームを始めとする「タンパク質合成過程」を担うRNA、RNPは原核生物、真核生物のいずれにも存在が確認されていますが、中心(小)体は原核生物と高等植物では確認されていないことです。竹内氏は、これについて著書で言及していますが、正直論理が整合していません。
原核生物に、中心(小)体様物質、中心(小)体原基物質が存在するのかどうか?高等植物では?に関しては、今後るいネットで追求していきたいと考えています :P
また、「RNPによる細胞の生命活動統合」と言う視点を持って考えれば、生命起源に関しても、かなりスッキリした仮説が見えてきます。これに関しても、今後るいネットで追求して、発表していきたいと思います :P ぜひ期待していて下さい

List    投稿者 crz2316 | 2008-09-02 | Posted in ⑦なんでや劇場レポート5 Comments » 

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コメント5件

 iwaiy | 2008.10.18 19:08

> これは真核生物以前の原核生物でも同様だと思います。環状のDNAだけでなく、細胞内に中心体・核小体に相当するRNA系の情報が組み込まれていて、分裂時にもDNAと同様に分裂していると思われます。
↑このあたりがもっと分かると面白そうですね!
原核生物にも核小体の前駆的なものが存在する?!

 ゆっきー | 2008.10.18 19:09

面白いですね。核小体が卵子由来なのはなんでなんでしょうか?メスが安定役割であることと関係しているのかも?

 chai-nom | 2008.10.18 21:59

>核小体のない卵母細胞は、数回の卵割後に初期胚発生を停止しました。
なんで数回までは胚発生が可能か?ちょっと不思議な気がしますが、これは卵母細胞が栄養素として蓄えているタンパク質を使い切ってしまうまでは分裂が可能であるということで説明できるみたいです。
しかし使い切った後には核小体のない卵母細胞は、rRNAを作り出せない→タンパク質を作り出せないために分裂が止まってしまうのでしょうね。
ところで、この初期胚発生という分裂様式は、一般の細胞分裂と異なりひとつの細胞に多数の核が存在するような状態があるようです。このあたりの仕組みをもう少し解明してみたいですね。

 yooten | 2008.10.18 22:02

iwaiyさん、コメントありがとうございます。
原核生物の核小体前駆体があるのか?確かにここが分かると面白いのですが、なかなか情報がありません。現在調査中です。
核小体を構成している核小体低分子RNA(snoRNA遺伝子)の相同体は、原核生物にもあるようです。

 yooten | 2008.10.18 22:14

ゆっきーさん、chai-nomさんコメントありがとうございます。
確かにメスは安定存在と関係していると思います。卵子は受精時に安定のため栄養分であるタンパク質と、次のタンパク質を合成するrRNA・tRNAやリボソームを作るための核小体を持ってきます。chai-nomさんの紹介にあるように、この初期に卵子が持ってくるタンパク質が、安定的な初期胚発生を助けているのかも知れません。

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