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性染色体のそもそもの役割【仮説】

 ヒトの染色体は22対44本の「常染色体」と1対2本の「性染色体」が集まったものであり、これは哺乳類においては同様の構造である。それ以前(爬虫類等)には「性染色体」と呼ばれるものは無い事から、なんらかしかの変異が哺乳類の時点で起こった事が予想される。
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 はたしてこの変異は進化と呼べる適応的なものなのか?劣化した方向に向かっているものなのか(∵ヒトのY染色体は1000年後には無くなると言われている)?その疑問は染色体の歴史構造に遡らなければ分からない。そして性染色体のそもそもの役割って何なのか?という追求になる。
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 「性染色体のそもそもの役割」を知るには「Y染色体・SRY遺伝子・トランスポゾン・たんぱく質」といった要素に着目して見ていく必要があり、その中でもトランスポゾンとの関係については、るいネットhttp://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=183222 [4]の性染色体のそもそもの役割~トランスポゾンとの関係(仮説)という記事やその基礎調査等が詳しいので紹介したい。
 性染色体のそもそもの役割って何?~基礎調査memo [5]
 性染色体のそもそもの役割って何?~基礎調査memo2 [6] 
 3億年前には同じものだったX染色体とY染色体 [7]
 Y染色体とトランスポゾン [8]
 

と「Y染色体・SRY遺伝子・トランスポゾン・たんぱく質」に着目して見ていくと、「なぜY染色体が登場したのか?」「なぜSRY遺伝子が登場したのか?」…というふうに成立過程を逆追いする追求になっていく。

 

この追求により一定の仮説ライン(思考の筋道)が見えてきたので、まずは整理しておく。

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1)タンパク質

・生命原初にタンパク質が生成され、それらの構造が変異する方向で進化している事は既に展開しているが、ここでタンパク質の変異を修復していく機能も同時に修得している可能性は高いと思われる。
 その因子が「シャペロン分子」であり、これはタンパク質の品質管理役と言われている。また、以下に述べるトランスポゾン(動く遺伝子・変異を促す遺伝子)の抑制も担っているようだ。

※シャぺロンと呼ばれるタンパク質は日常は休眠状態にある。ところが、熱ストレスが加わりタンパク質が変性を始めるとシャペロンはタンパク質の変性を阻止するために転写活性化因子を離れ、変性をはじめたタンパク質に向かう。すると、転写活性化因子が起動し核に移動して遺伝子の読み取り部分に接合し、ストレスタンパク質の産生を始めるのである。
※ストレスタンパク質が十分に産生されて、タンパク質の変性が回避されると、シャペロンがタンパク質変性阻止の役割を終えてあまってくる。するとあまったシャペロンが再度、転写活性化因子に結合し、転写活性化因子は休眠状態に戻りストレスタンパク質の合成はストップする。
※という風にシャペロン因子は、タンパク質の「介添え役・品質管理役」と言われているタンパク質(分子成分)である。タンパク質が立体構成をする為にも必要なものと言われている。タンパク質の寿命にも深く関与しているようだ。

2)トランスポゾン

・トランスポゾンの成立過程は上記タンパク質の変異方向の段階に存在している事は明らかであろう。Wikipediaによると、「トランスポゾン (Transposon) は細胞内においてゲノム上の位置を転移 (transposition) することのできる塩基配列である。動く遺伝子、転移因子 (Transposable element) とも呼ばれる。DNA断片が直接転移するDNA型と、転写と逆転写の過程を経るRNA型がある。」とあり、これが性(雌雄分化)にも大きく寄与している事が予想される(∵変異を担う雄、安定を担う雌という役割分担より)。


3)SRY遺伝子

・SRY遺伝子は(雄)性決定遺伝子と言われるが、これは哺乳類以降の獲得遺伝子である。哺乳類以前は性決定は他の遺伝子or環境により決定されており、この遺伝子により初めて雌雄分化の戦略が明確に機能システムとして成立したと言えると思う。このSRY遺伝子も動く遺伝子であり、「雄として産まれる予定(XY)がSRY遺伝子が移動した事によって精巣が出来ず、体が雌として産まれる事例」などでも知られている。

☆ここで仮説であるが、SRY遺伝子はトランスポゾンが転移した遺伝子なのではないだろうか?というストーリーがある。この仮説に沿うならば「タンパク質→トランスポゾン→SRY遺伝子→Y染色体」という過程が成立すると思われる。
※もちろん、今後検証すべき内容は残っている。


4)Y染色体

・Y染色体の成立は、もともと1対の常染色体にSRY遺伝子が出現した事に端を発している。この転移によりどんどんX染色体と形が変わっていき、Y染色体という別のものになったが故に遺伝子交換が行われなくなった=「交差」しない。よって変異すればそのままで修復は無い(人間のY染色体はどんどん小さくなっている)。

・また、この変異はストレス(圧力)によって転移(トランスポゾンによる)する事が知られており、Y染色体が回文配列であるのはその転移の結果であるのだと思われる。

○性染色体(Y染色体)のそもそもの役割とは?

そのそも原初のタンパク質を変異させるトランスポゾンが原点であり、役割は『変異』であると言っても良いと思う。やがて進化と共に明確な雌雄分化において、哺乳類においてはSRY遺伝子→Y染色体という「変異に特化したシステム」を新たに手に入れたのではないかと思う

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(コメント)
・このように性染色体の役割を知ると雌雄分化に特化した哺乳類の進化方針も明確に把握できる。また、ヒトや哺乳類のY染色体が無くなっても雌雄という役割が無くなる事は無い。ただ、あらゆる環境に変異(適応)するシステムが弱くなるのは事実である。
 
 生物史を広く見ていくと、哺乳類の歴史などは極最近のものであり、今後も長い年月繁栄するかどうかは分からない。ひとつ言えるのは生物史は外圧適応の歴史であり、性染色体が無くなっても、変異適応のシステムを別のものから獲得できれば今後も適応し続ける事が可能だという事だ。
 ヒトの場合はその可能性が既に開かれており、外圧適応システムを補う(把握できる)観念能力を獲得している点が既に生物史における奇跡と言えるかもしれない。
 しかしながら、人類は今、その観念能力を適応の方向に使っているのだろうか?少なくともこの私権時代数千年は、真っ当にあまり使ってこなかったようにも思えてしまう(※多少は使っているだろうが封印されてたというのが実態)。

 今後、人類は哺乳類以降、新たに獲得した「変異に超特化したシステム」である観念能力を外圧適応の為に全力で高めていく事が、一生物としてやるべく課題なのではないかと考えさせられます

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