RNAの不思議① ~基礎知識編~
こんにちは、NISHIです。
ここ数日、「DNA」「RNA」に関する記事が続き、盛り上がっているので、僕も続きたいと思います。テーマは「RNAの不思議」
7月31日のaincoさんの記事に対するコメントでRNA議論が盛り上がっている 😀 +今後の劇場への予習 も兼ねて、RNAの不思議に迫ってみようと思います。
画像はこちらから頂きました:http://www2.edu.ipa.go.jp/gz2/a-cg/a-100/a-130/IPA-acg300.htm
■RNAの基礎知識
既に過去の投稿でも触れられていますが、今一度RNAの基礎知識について整理します。
○RNAってどんな構造?
RNAは4種の塩基=アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)とリン酸基を持つ糖=リボースが結合した物質(リボヌクレオチド)が、次々と鎖状に結合(ホスホジエステル結合と言います)した物質です。(一本鎖構造)
リボヌクレオチド同士の結合は、20種類のアミノ酸同士がペプチド結合して、タンパク質を作るのと同じような構造です。
このような簡単な有機化合物同士が結合(このような結合を重合と言う)して作る多量体(平たく言うと、たくさんの有機化合物が合体したもの)をポリマー(重合体)と言います。
タンパク質が20種類のアミノ酸のペプチド結合からなる、ポリマー(ポリペプチド)であるのに対し、RNAは、4種類のリボヌクレオチドのホスホジエステル結合からなる、ポリマー(ポリヌクレオチド)と言うことになります。(これはDNAも同じ構造です)
○RNAはどのような働きをするの?
これは7月31日のaincoさんの投稿などが詳しいですね。
一応もう一度整理しておきましょう。
生体化学反応におけるRNAの働きは3つあり、それぞれ機能分化した3つのRNAが働いています。
①原設計図であるDNAを部分コピーしてmRNAが作られる。(DNAの転写)
②tRNAが、タンパク質の元となるアミノ酸をリボソームに運ぶ。
(リボソームとは、rRNAとタンパク質の複合体)
③リボソーム内でrRNAがmRNAの設計図をもとに、tRNAが運搬してきたアミノ酸
を結合させてタンパク質を合成する。
言うなれば、RNAは
mRNA=情報伝達係
t RNA=運送係
r RNA=製造工場
と機能分化して、タンパク質を合成しているのです。
DNAが原設計図を保存するだけで全く働かないのに対して、RNAは生体化学反応の中心的働きを担っているとも言えます。
○DNAがA・G・C・Tからなるのに対して、RNAがA・G・C・Uなのは何で?
DNAの塩基とRNAの塩基は、殆ど同じ構造ですが、DNAのT(チミン)は、RNAではU(ウラシル)に置き換えられています。TとUは実は極めて似た構造で、どちらも塩基A(アデニン)と結合できますが、以下の2点が異なっています。
①UはTよりも結合エネルギー的に有利である。
②UはC(シトシン)から化学分解によって生成する。
②の特徴から、DNAはCの分解により誤って生成してしまったUを検出することで、塩基配列を修復することに利用しています。つまり、このC→Uの分解を塩基配列のチェック機構の一つとして利用しているのです。この時、同じ塩基配列上にUが存在した場合、チェックができません。間違ってCから生成されたUなのか、正しいUなのか見分けがつかないからです。
「原設計図」であるDNAにとって、何よりも重要なのは、半永久的にその配列を間違いなく保存することです。それに対して、RNAは各種反応に利用する結合エネルギーの方が重要で、(寿命が短いので)配列の保存性はそれほど重要にはなりません。(例え配列が壊れてもまたDNAからコピーすれば終い)
このような理由で、RNAは結合エネルギー的に有利なU(ウラシル)を利用し、DNAは配列保存の観点からT(チミン)を利用しているのです。
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コメント3件
arinco | 2008.09.16 23:23
のだおじさん様 コメントありがとうございます。
>酵素が反応物質を捕まえるときも、この性質をうまく使っているのですね。
どうやらそうみたいです。酵素に関しては、分からない事だらけなので、今後も追及していきたいと思います。またコメントよろしくお願いします。
ゆっきー | 2008.09.20 21:13
酵素のスゴイところは生体化学反応のスピードを飛躍的に向上させるところだと思います。そのスピードアップは1000万倍以上であると聞いたことがあります。酵素がなかったら消化するのにも時間がかかりすぎて、生物は成立しなかったかも知れません。
のだおじさん | 2008.09.13 21:41
水の中にある分子に疎水性の部分があると、水から逃げるために、疎水性の部分同士がくっつくという性質があります。
酵素が反応物質を捕まえるときも、この性質をうまく使っているのですね。