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神経細胞が分裂しないのはなんで?

神経細胞と一般細胞は何が違うのでしょうか?
いろんな見方があると思いますが一番大きな違いが分裂がある時期に止まる細胞であるという点です。また一旦失われると再生しないという点です。
これは再生系細胞と非再生系細胞と言われ、神経細胞は後者にあたります。

神経細胞は他の細胞とはいろんな点で異なる。体の細胞の多くは生涯、分裂を続け、人の中身は新しい細胞に入れ替わる。ところが神経細胞が盛んに分裂を繰り返すのは3歳ぐらいまで。その後は死ぬまで同じ神経細胞が生き続ける。もとをたどれば、神経細胞も体の細胞も同じ1つの受精卵。
なぜ神経細胞だけが独特の形態や性質を持つのだろう。
その秘密は、細胞内の遺伝子のスィッチを「切って」いる。科学技術振興事業団の研究員・森望さんは、複数の異なる遺伝子をひとまとめに切ってしまう小さな因子があることを突き止めた


(上記の記事は [1]のサイトから見つけました。)
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さて、遺伝子のスイッチを「切る」っていうのはどういう意味なんでしょう?
???と思った方↓をクリックして進んでください。
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以下は雑誌「ニュートン」の1999年8月号に掲載された森望氏の論文 [5]からの転載です。
 

誕生後まもなく分裂が停止し,一生生きつづける細胞,いわば「誕生と同時に老化をはじめる細胞」が存在する。神経細胞や心筋細胞などである。
神経細胞は巨大な複合組織である脳の大部分を占めている。胎児期にいったん過剰に生産されたあと,その多くがアポトーシスによって死滅し,神経ネットワークを形成したものだけが生き残る。
生き残った神経細胞はその時点から老化をはじめる。このような細胞は広く「非再生系細胞」とよばれている。一方,それ以外の通常の細胞は分裂をくりかえして,つねに新しい細胞が複製されている。このような細胞は「再生系細胞」とよばれており,50~60回分裂すると分裂が停止する分裂寿命をむかえる。
再生系細胞と非再生系細胞とでは,遺伝子レベルで何がことなっているのか? いちばんのポイントは,細胞分裂する際の細胞周期をコントロールしている遺伝子群の発現の有無にあると考えられている。
 たとえばCDKとよばれる酵素群は細胞分裂の際にアクセルの役目をしており,CKIとよばれるタンパク質群はブレーキの役目をしているらしいことがわかっている。
非再生系細胞では後者の発現量が高いために,細胞分裂の進行がおさえられていると考えられる。非再生系細胞の老化は,組織や個体の老化にもつながっている。
 神経細胞が老化すれば,外界からの刺激に対する反応性や脳内での神経ネットワークの応答性が減退してくる。老化により「新しく神経細胞の樹状突起を伸展させる遺伝子」のはたらきがいちじるしく低下するためである。 その結果,老年期には記憶力や理解力が低下し,神経細胞がおかされるアルツハイマー病などの病気が発病することもある。

神経細胞は分裂しない細胞なのではなく、CKIの働きにより分裂が制御されているのです。
なぜ分裂が制御される必要があるのでしょうか?
ここからは02年にるいネットに投稿された北村さんの記事 [6]を転載させていただきます。

この流れを大きく見れば、神経系の発達につれて免疫機能が進化したともいえますが、逆の見方をすると神経が発達するにつれて、厄介なウィルスが増加してきた→そのために免疫機能を進化させざるを得なかった、という見方も成立します。実際人類は他の動物にない厄介なウィルスが急増しているように思われます。これは一種のいたちごっこであり、自己矛盾を抱えているとも見ることも出来ます。
その理由を考えてみるに、神経細胞の特殊性が考えられます。まず神経細胞は分裂・増殖しない細胞です。おそらくこれは記憶等の蓄積を分裂増殖後の新細胞に移植することが出来ない(or極めて困難)なことから来ていると思われます。その意味で高度に役割を分化された細胞です。(一般の体細胞は分裂増殖する)
つまり神経細胞の分裂増殖しないという性質(高度に役割分化された存在であるがゆえに分裂が拘禁されている)、もしくは神経を保護し栄養分を与えるグリア細胞(元は髄鞘)の性質とウイルスを発生させる仕組みに何か連関があるのかもしれません。

上記の投稿によると神経細胞を分裂しない非再生系細胞とした最大の理由は記憶の蓄積にあると言えます。
神経細胞が果たす機能は感覚機能、運動機能など多岐に渡りますが、その最大の機能は外界からの情報をストックしておく記憶機能にあるのだと思います。
ただ、神経細胞が最初に誕生したヒドラの段階まで遡って記憶という機能がすでにあったのでしょうか?それとも中枢神経が出来上がった魚類以降からなのでしょうか?
神経細胞の発達と記憶メカニズムは今後追求していきたいテーマです。

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