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復習:膜電位

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神経系の起源をたどっていくと、生物の最基底の認識機能として「膜」機能にたどりつくのではないか?という仮説の提示をいただきました。
「膜」の機能ってなに?
どんなしくみで内と外を認識しているの?
単純な質問が浮かびます。
そこで、困ったときの、るいネット。
膜電位についてわかりやすくまとめてくれている投稿がありましたので、
紹介します。
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■細胞膜の選択的透過性とイオンチャネル
細胞膜は、特定のイオンや分子のみを透過させる性質=選択的透過性を持っている。これは「透過してよい物質」は何で、「透過してはいけない物質」は何かを、細胞膜自身が選択しているということであり、細胞膜の選択的透過性は生物の最初の認識機能、根源的認識機能と言える。
この選択的透過性の中でも、イオンの出入りは、細胞膜上にあるタンパク質でできた特定の通路=イオンチャネルによって制御されている。
このイオンチャネルによるイオンの出入り制御は、文字通り細胞膜に設けられたイオンの通り道を、開け閉めすることで行われ、この開け閉めは実にミリ秒~秒単位で厳密に制御される。
開閉の制御方式には、電位(電気的エネルギー)での制御、細胞内外の化学物質での制御、物理的刺激での制御等の種類がある。
神経細胞や筋細胞において主要に作用しているのは、カリウムチャネル・ナトリウムチャネルで、これらは電位によって制御される。
■細胞内外のイオン濃度差と膜電位
外界と細胞内ではイオン濃度は大きく異なっている。
多細胞生物の体内でも,細胞の内と外では,イオン濃度が異なっている。
これは,まだ塩分の濃くなかった原始海洋で出現した細胞が,そのときの塩組成をそのまま保持しているからと考えられており、一般的に細胞外ではNA+(ナトリウムイオン)が多く、細胞内ではK+(カリウムイオン)が多い。
このように、細胞の内外で大きくイオン濃度が異なっており、イオンは電荷(プラスとかマイナスとかの電気量)を持っているので、内外のイオンバランスの差は、そのまま細胞内外の電気的エネルギーの差をもたらす。
この、イオン濃度の差による細胞内外の電位差を、膜電位と呼ぶ。
通常、細胞内外のイオン濃度差によって、細胞内は細胞外に対してマイナスの電位になっている。
■受動輸送=イオンチャネル
一般にイオンを含めた溶液中の溶質(溶けている物質)は、濃度の高い方から低い方へと溶質が移動し、均一濃度になる。
これは細胞内外のイオン濃度においても同じで、細胞膜の内外のイオン濃度勾配に従って、濃度の高いほうから低いほうへ物質が移動することを受動輸送と言い、この受動輸送にはエネルギーが不要である(自然の摂理そのもの)。
通常、細胞膜は(イオンに対しては)不透性膜であるが、イオンチャネルが開くと、細胞膜内外のイオン濃度差によって、受動輸送が起こる。

ここまでを読んでいると、中学か高校で習った「浸透圧」という概念を思い出します。
しかし、やっぱり生き物だなぁと思わせられるのは次の記述です。

■能動輸送=イオンポンプ
細胞膜には、イオンチャンネルの他にイオンポンプと呼ばれるタンパク質が存在する。イオンポンプは、イオンチャネルと違い、濃度勾配に逆らったイオンの輸送をする。最も典型的なのは、ナトリウムーカリウムポンプで、NA+を(NA+の少ない)細胞内から(NA+の多い)細胞外へ、K+を(K+の少ない)細胞外から(K+の多い)細胞内に移動させる働きをしている。
イオンチャネルの受動輸送に対し、イオンポンプの、濃度勾配に逆らった細胞膜内外の出入りを能動輸送と言う。
能動輸送は、受動輸送と違い、濃度勾配に逆らうことから、輸送エネルギーを必要とし、イオンポンプは細胞内のエネルギー(ATP)をイオンポンプにある酵素で分解してエネルギー源としている。

能動輸送のあるなしが、植物と動物を分かつものではないか、とも考えられるのですが、細胞レベルの刺激の伝達は、受動輸送と能動輸送の連携により成りたっているようです。

■膜電位による刺激の伝達
外界から細胞が刺激を受けると、刺激を受けた部分(興奮部)のナトリウムチャネルが開く。ナトリウムチャネルが開くと、先述した受動輸送によって、NA+が(NA+の多い)細胞外から(NA+の少ない)細胞内へと拡散する。
マイナス状態である細胞内へ、プラスイオンであるNA+が流入するので、NA+の流入分だけ、細胞内局所部の電位がプラスに変化する。(膜電位がー70mVから40mV程度へと変化し、細胞外に対してもプラス電位となる)
この時、電位がプラスに変化した局所部と隣接する部分との間に電位差を生じるので、電流が生じる。プラスに電位が変化した箇所は、この電流を隣接部へ伝えると直ぐにナトリウムチャネルが閉じ、カリウムチャネルが開いた状態になる。
開いたカリウムチャネルから、細胞外から細胞内へ流入したNA+の分だけ、K+が(K+の多い)細胞内から(K+の少ない)細胞外へと流出し、元のマイナス電位状態へと戻る。
<模式図>
 細胞外    
 +++   -++   +-+   ++-
 ---   +--   -+-   --+
 細胞内 →     →     → 
 ---   +--   -+-   --+
 +++   -++   +-+   ++-
 細胞外  
こうして、局所的にマイナス→プラス→マイナスの電位変化を生じながら、電流を隣接部へ伝えていくことで、刺激が細胞内で伝達されていく。
この一連の働きの中で、NA+が細胞内へ流入、K+が細胞外へ流出するので、細胞内外のイオン濃度が崩れるが、イオンポンプによって、NA+が細胞内から細胞外へ、K+が細胞外から細胞内へそれぞれ輸送されることで、細胞内にK+が多く、細胞外にNA+が多い状態に戻る。

実は、膜電位を追求していく上で、ここのしくみの理解が最難関です!
わたしも数ヶ月前に神経細胞の情報伝達のしくみを調べていたのですが、
いつもこのくだりで頭が混乱しておりました
カベ
だけど避けて通れないモノ。
3回くらい繰り返して読んで見て下さい。
(ひとによってが5-6回読まないと超えられないかも・・・わたしだけ?)
syna_fig4.gif

■神経系の発生過程と膜電位の根源性
この細胞膜におけるイオンチャネルとイオンポンプの選択的透過性を利用した、電位変化(電流)の伝達こそが、神経細胞における電気的信号による情報伝達の仕組みそのものである。
イオンによる電位差とその開放によるエネルギーは、非常に早い情報伝達や、大きく、素早い力を生み出すことを可能にする。
神経細胞・筋細胞は、この仕組みを利用することで多細胞生物の外圧適応を支えている。
また、これは多細胞生物に限った話ではなく、単細胞レベルでも膜電位が存在し、ゾウリムシの繊毛の制御などにも膜電位が利用されている。
シアノバクテリア(原核細胞)にさえも、膜電位とそれを利用したイオンチャネルの存在が知られており、「膜電位=細胞膜を利用したイオンの選択的透過による電位発生システム」は生命の誕生初期(誕生と同時?)に形成されたと考えられる。

ここまで来て漸く、神経の膜電位起源説が納得されます。
以上引用元は
「膜電位=細胞膜を利用したイオンの選択的透過による電位発生システム①、②」
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=168332
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=168341
それにしても、こんなややこしいしくみ、よくまとめたな~。
うらら

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