免疫細胞、特にNK細胞やキラーT細胞を調べてみると、その機能として癌細胞や感染細胞の「アポトーシス誘発」があげられます。
そこで、アポトーシスの誘発とその機構についてまとめてみました 。
まず、アポトーシスって何? 🙄 ということで、基本的なことから、、、、
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アポトーシス(細胞死)は、おたまじゃくしがかえるへ変態する時に起こる尾の吸収や、指間の細胞の除去しながら胎児の手足の指の形成されるように、プログラムされたものもあれば、リンパ球がウイルス感染した細胞を死滅させるためにアポトーシスを誘発させるように、生態防御のための外因性のものもあります。
アポトーシスの機構は様々ですが、生体を維持するためには不可欠の機能。だから、異常があったら大変です!
アポトーシスは、種々の因子によって誘発されます。
たとえば、、、
アポトーシスを直接誘発する刺激
・グルココルチノイドによる胸腺細胞アポトーシス
・甲状腺ホルモンによる両棲類の変態 など
逆に、こんな場合も、、、
成長因子などの生命維持に必須な因子の欠如
・神経栄養因子の除去による神経細胞アポトーシス
・インターロイキン欠乏によるリンパ系細胞のアポトーシス など
そしてこれらをきっかけとして、
細胞のレセプターを介し、細胞内の情報伝達系により「死のシグナル」が核に伝達される。
ホメオティック遺伝子の発現変化や、細胞死を制御する遺伝子を発現させる。
細胞死に直接関与するたんぱく質を合成する
細胞の種々の生化学的変化を伴った形態学的変化を起こし、死に至る
と、考えられています。
(死のシグナルとは、細胞内のミトコンドリアから放出されるたんぱく質によるものです。詳しくは、こちらのサイトを [4]。)
アポトーシスが起こるときには、上記のようなRNAやたんぱく質の合成が生じますが、こうしたRNAやたんぱく質の合成に依存せずに、外部シグナルにより起こるアポトーシスもあります。それが、補体や細胞障害性T細胞、NK細胞、マクロファージや、それらが分泌する因子によって、標的細胞に死を誘発する生態防御としてのアポトーシスです。
たとえばNK細胞が癌細胞をアポトーシスさせる場合には、
NK細胞が癌細胞を認識し、接着する
孔形成たんぱく質パーフォリンや、グランザイムという顆粒を放出する
NK細胞の接着によって生じるシグナルや、放出顆粒の複合作用によって癌細胞のアポトーシスプログラムが活性化し、細胞は死に至る
と考えられています。
(標的細胞がアポトーシス誘発プログラムをもたない場合もあり、その時は、細胞内へのイオン流入などによってネクローシスが誘発されると考えられています。)
ちなみに、細胞障害性T細胞は、上記のNK細胞のアポトーシス誘発法に加えて、Fasによって標的細胞をアポトーシスを直接刺激してアポトーシスさせる仕組みももっています。
それは、、、
標的を認識する(結びつく)
表面にFasリガンドを更に産生する
産生されたFasリガンドが、標的細胞表面にあるFasと結びついてアポトーシスによる死滅を引き起こす。
という機構です。
Fasによって標的細胞をアポトーシスさせる仕組みについては、同じくこちらに詳しくあります [4]。
私は、細胞障害性T細胞が、NK細胞にはないアポトーシスの誘発方法をもっているなんて知りませんでした!驚きです !
~最後におまけ~
NK細胞のアポトーシス機構といえば、体内の癌細胞への攻撃が有名。そこで、癌とアポトーシス関係も簡単に触れておきます。
癌とアポトーシスの関係
癌とは、本来死ぬべき細胞がその制御メカニズムに何らかの障害を受けたために、無制限な自己増殖をはじめたものです。
癌といえば「転移して無限に増えていく」というイメージを持っていましたが、止むことなく続く(悪性)癌細胞の増加は、単なる細胞の増殖能の異常というだけでなく、実は、細胞分化の制御機構にも異常をきたしている状態です。つまり、正常細胞のもつアポトーシスの異常によって起こっているともいえるわけです。現に、これまで発見されている発癌遺伝子や癌抑制遺伝子というのは、細胞増殖にかかわるだけでなく、アポトーシスの誘発や抑制にもかかわっていることが明らかにされてきているそうです。
アポトーシス異常によって発生・進行する癌細胞に対して、NK細胞は、アポトーシスの誘発機構を使って攻撃しているんですね。
参考書籍 「アポトーシス 細胞機能と分子機構」中外医学社発行
参考サイト 役に立つ薬の情報 [5]
海外癌情報リファレンス アポトーシス [6]