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6/22なんでや劇場レポート① 生命の基幹システムを探る~タンパク質の多様なはたらき~

 今月もなんでや劇場のレポートをお届けします。arincoです。
今回の劇場は「生命の基幹システムを探る~タンパク質の多様なはたらき~」
でした。タンパク質と言えば生物にかかせないもの!ですが、その働きを追求しようというものです。
タンパク質の主な機能は、
①くっつく・つながる・反発する
②化学反応をサポートする
③かたちをつくる
④はこぶ・うごかす
の4つに分類されますが、今回は「くっつく・つながる・反発する」に着目しました。特に細胞膜にくっついている「膜タンパク質」の役割に注目しています。
 「くっつく・つながる・反発する」これらの言葉からイメージするものは何でしょうか??
・・・・・・・・ばい菌!ですよね。
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○ばい菌ってなに?
 さて、ばい菌は簡単に言うと「人間にとって悪さをする細菌」です。悪さをするというのは、「感染」するという事ですが、具体的にはばい菌の持つ膜たんぱく質が宿主細胞の膜タンパク質の中で、相性の良いものとくっつき、細胞内に進入する事で細胞内部の栄養をぶん取るという行為です。
 細菌には、
グラム陽性菌 代表選手:大腸菌、赤痢菌、サルモネラ菌
グラム陰性菌 代表選手:乳酸菌、ビフィズス菌、結核菌
が存在しています。グラム陽性、陰性等のちょっとわかりにくい命名は、グラムさんが発見したグラム染色という方法で色が着くか着かないかという事のようです。もちろん着色する方が陽性。しない方が陰性です。
 グラム染色で着色されるのは細胞壁です。グラム陽性細菌は細胞膜の外側に細胞壁を持っていますのでこれが着色され、一方、グラム陽性は、細胞壁も持つのですが、細胞壁壁を細胞膜(内膜、外膜)ではさんだ2重膜構造を有しているので着色されない。というわけです。ちなみに細胞壁と細胞膜は基本的には同じ成分で出来ており大きな違いとしては「固さ」ぐらいですね。
 グラム陽性菌にもグラム陰性菌にも細胞膜には多くの膜タンパク質がくっついています。一つ一つが様々な働きをしているのですが、その中で相手にくっつく役割に特化したタンパク質があります。
 このくっつく役割に特化した膜タンパク質があるおかげでばい菌は宿主細胞にくっつくことができるのです。このくっつき役の膜タンパク質は「線毛」と呼ばれています。劇場では、この形態から「毛タンパク」と命名されました。
 毛タンパクは宿主細胞の膜タンパク質のうち相性の良いものとくっつきます。グラム陰性菌は毛タンパクをたくさん持っているので細胞にくっつきやすい。その為「悪玉菌」と呼ばれる細菌、つまりばい菌にはグラム陰性菌が多いようです。
 例えば大腸菌は、その名前から大腸と比較的相性が良いイメージを抱きますが、実は膜タンパク質から見ると全く逆なのです。相性が悪いからくっつく事が出来ず、その結果折合いをつけていられるのです。実際、大腸菌と比較的相性の良い膜タンパク質を持つ機関に大腸菌が移動すると、その機関の宿主細胞と大腸菌がくっついてしまい、大腸菌に感染してしまうようです。
○我々の体内にはなぜこんなにも無数の細菌が存在するのか。
 ところで、細菌には様々な種類が存在していますが、なぜ細菌の種類がこんなにも増えたのでしょうか?生物の誕生時は同種しかいなかったはずです。単細胞時代もそんなに多くの種類の生物がいませんでした。しかし僕達の体の中には、善悪問わず数え切れない程の細菌が存在し、O157等に代表される様に次々と新しい細菌が誕生しています。
 この謎を解き明かす鍵は生物の多細胞進化です。生物が多細胞化に成功した大きな要因として様々な膜タンパク質を作る事が出来た事が挙げられます。役割分化を促進する為には、それにあったタンパク質を作り出す必要があったからです。
様々な膜タンパク質を作りだすという事は、言い換えるとDNA変異の促進したという事に他なりません。DNAはコピーや変異する際に切れ端が出てきます。実は、このDNAの切れ端を自分のDNAに取り込んで細菌も変異していったのです。
 ウイルスはDNAの切れ端とよく言われていますが、実は細菌も間接的にDNAの切れ端がつくり出していたのです。
 ウイルスにしても、細菌にしても僕達の体の中で悪さをする連中は、結局の所僕達自身で作り出していたのです。とすると、善玉、悪玉と言っても明日にはどうなっているかわかりません。乳酸菌等も善玉菌と言われていますが、もしかしたら翌日は悪玉菌になっているかもしれないのです。要するに細菌には、善も悪も無い!という事ですね。
 しかも細菌には僕らが持っていないとプラスミドと性繊毛(大型の毛タンパク)という武器を持っています。
 この2つの武器を持つ事で、細菌は遺伝情報を仲間に受け渡す事が出来るのです。
 細菌は単細胞ですから、基本的には単純分裂をして増殖をしてきますので、有性生殖をする生物と比べると変異可能性は大きくありません。仮に突然変異をしたとしても、生き残るのは突然変異をしたものとそのクローン(子供)だけで、他は死滅してしまいます。そこで登場したのがプラスミドと性繊毛、というわけです。
 プラスミドは、染色体DNAとは独立して存在する環状DNAです。つまり独立した遺伝情報ですね。性繊毛はこのプラスミド=独立した遺伝情報を同類に受け渡す為の管です。
 プラスミドには様々な種類がありますが、例えば大腸菌はF因子と呼ばれるプラスミドを持っていますが、これは先に登場した毛タンパクの遺伝子情報です。大腸菌は+型と-型が存在しており、-型は毛タンパクを持っていません。その情報を+型からもらう事で毛タンパクが生えてきます。
 ある抗生物質に耐性を持つ細菌が作られると、その細菌が一気に広がるという話を聞いた事があるとおもいますが、細菌はプラスミドと性繊毛という武器を使って仲間に遺伝子情報を受け渡しているからなのです。
 
 我々が出したDNAの切れ端を使って細菌は変異し、プラスミド・性繊毛等を使って増殖していくのです。有性生殖とは全く異なった変異情報の伝達方式ですが、単純分裂しか出来ない状況では、この方法が最も適応的だったのでしょう。
 
 今回は、ばい菌が宿主細胞にくっつく仕組みと多種化の仕組みまでレポートしましたが、毛たんぱくの様な機能は初めから持っていたのでしょうか?そうでないとするといつできたのでしょうか?レポート2では、その辺を追求しますのでお楽しみに!

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