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性ホルモンは、身体にどのような影響を与えているのか

男や女、オスやメスであり続けるためには、男性ホルモン(雄性ホルモン)・女性ホルモン(雌性ホルモン)の働きが不可欠です。オスの身体、メスの身体を形作る上でも、その機能を維持する上でも、欠かせないのが性ホルモンです。
この性ホルモンは、オスかメスかを決めるだけでなく、身体機能の恒常的維持のために無くてはならないものです。今回は、この性ホルモンがどんな形でオスメス差を作っているのか、その概略を押さえます。

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(突然、難しい単語が出てきますが・・・)
通常、動物の身体の中で雄性ホルモン(♂ホルモン)と雌性ホルモン(♀ホルモン)は、精巣or卵巣(or副腎)で作られ、体内を駆け巡ります。この性ホルモンを作るように性腺(精巣or卵巣)を刺激するホルモンがあります。性腺刺激ホルモンです。
性腺刺激ホルモンは、黄体化ホルモンLHと卵胞刺激ホルモンFSHの二つに大別されます。性腺を刺激するホルモンはLH、もう一つのFSHは、生殖細胞(精子or卵子)の成熟を刺激します。
脳から分泌されるこの性腺刺激ホルモン(LHやFSH)は、脳の違う部位から放出される性腺刺激ホルモン放出ホルモンGnRHを受け取って、放出されます。逆に性腺刺激ホルモンの放出を抑制するホルモンも見つかっていて、これは性腺刺激ホルモン抑制ホルモンGnIHと呼ばれています。
これらの働きの結果、放出される♂ホルモン(アンドロゲン)や♀ホルモン(エストロゲン)は、血液を介して身体中を駆け巡り、性ホルモン受容体を持つ細胞に働きかけ、オスメスの身体的特徴を発現させ、性行動を決定します。

哺乳類では、オスになるか、メスになるかは、遺伝子型(XX/XY)によってほぼ固定されていますが、オスの身体になるか、メスの身体になるかは、性ホルモンの働きによって決まります。例えば、人間の場合、受精後7週目から、未分化性腺が精巣or卵巣になり始めますが、この精巣or卵巣が放出する性ホルモンによって、男の身体or女の身体へと成長していきます。

しかし、爬虫類では、孵化時の温度によって性が決まる種がおり、魚の一部では性転換を起こす種がいます。これらの種の性決定・性転換を促すのも、性ホルモンの働きがあってこそです。(♂ホルモンが多ければオスになり、♀ホルモンが多ければメスになる)

ここで、注目されるのが、「アンドロゲン→エストロゲン変換酵素」(アロマターゼ)です。アロマターゼは、アンドロゲン(♂ホルモン)をエストロゲン(♀ホルモン)に変換する働きを持つため、アロマターゼが多いと(♂ホルモン▼・♀ホルモン△)メスになり、アロマターゼが少ないと(♂ホルモン△・♀ホルモン▼)オスになります。このアロマターゼの量が調整されることで、♂ホルモンと♀ホルモンの量が調整され、オスorメスになっていきます。

このようにして、オスの身体orメスの身体を持った個体の性行動にも性ホルモンが影響しています。

◆オス特有の行動は、遺伝子によって決まっている訳ではない

脳の機能的性差の代表例として、性行動の分化について考えてみよう。
ラットなどの実験では、生後1週間以内の雌にアンドロゲン(♂ホルモン)を注射すると、雌でありながら、成熟してからの雄の性行動を示すようになる。一方、出生当日にアンドロゲンの分泌源である精巣を摘出してしまうと、雄でありながら、雌の性行動を示すようになる。このように実験で転換できるので、性行動の雌雄パターンは遺伝的に決められているのではないことがわかる。発生過程のある特定な時期までは、性行動に関して脳は未分化であって、この時期にアンドロゲンにさらされると雄型になり、さらされないと雌型になる。脳の性分化を決定するのは遺伝子ではなく、雄性のホルモンの有無なのである。

◆オスの方が攻撃的

♂ホルモン(アンドロゲン)の中の一種にテストステロンというホルモンがあります。このホルモンはドーパミンの分泌を促して性欲、性衝動を亢進させ、男性器の勃起を引き起こす作用があります。また、性闘争に代表されるオス特有の攻撃性を生み出すと言われています。
JT生命誌研究館::雄と雌が決まる仕組み 魚から鳥,哺乳類まで [6]
JT生命誌研究館::性転換は魚の得意業 [7]

また、身体機能の低下=病気にも、性ホルモンは深く関与しています。

◆メスの方が病気になりにくい?

♀ホルモンのエストロゲンはマクロファージという免疫細胞に作用して、その働きを活発にし、逆に♂ホルモンのアンドロゲンは、免疫反応を抑えます。この結果、メスよりもオスの方が病気になりやすく、乳児死亡率もオスの方が高い。
◆メスの方が長生き?
♀ホルモン(エストロゲン)には、血管を広げる作用や動脈硬化を防ぐ作用が知られています。そのほかにも、寿命に直結する非再生系細胞(神経細胞や心筋細胞)などの細胞死(アポトーシス)を防ぐタンパク質(Bcl-2)の生産を促していると考えられています。

◆乳がんの急増は、脂質摂取による女性ホルモン増が原因?

大勢の婦人科の患者さんの食事指導を通して見えてきたのはご飯を食べずに大量の油脂を食べているということ。やせたいが為にカロリーを抑え、その結果、油脂や砂糖で穴埋めをしている食生活。脂質は女性ホルモンを刺激します。それによって婦人科系のガンのリスクを高めている可能性があるのです。
※♀ホルモンが多いと乳がんになりやすいことから、アロマターゼの働きを抑える薬が抗がん剤として処方されることもあるようです。
※逆に、♀ホルモンの急激な低下によって起こる更年期障害に対して、アロマターゼの働きを促進する薬が処方されることもあるようです。

ないとう@なんで屋でした。

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