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生物をテーマにしたブログを紹介 T細胞の教育の話

ある民間コンサルの調査によれば、日本は世界一のブログ投稿数を記録しているそうです。
インターネットの進歩により、情報発信主体が急速に広がり、それとともに社会の問題は本当はどうなっているの?という事実収束にみなの意識が向かいつつあります。
  
生物学の分野においても同様、専門家だけでなく、一般のひとたちも新しい視点の提示や、基礎情報を分かりやすく整理するといった観点で発信と追求を続けているブログがあります。
  
今回はそのような生物系ブログの紹介です。
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「京都にて~出張中~」 [4]  というブログがあります。話題は生物関連以外にも経済、地球の科学など幅広く扱われてますが、中でも充実しているのが「生命の科学」です。
その中から免疫系の記事を紹介します。
   

免疫シリーズ第9弾、T細胞の教育 [5]の話です。 
T細胞のTは胸腺ThymusのTですが、T細胞を教育する胸腺は凄く厳しいのです。
 
T細胞が持つべき性質は大きく分けて二つあります。
 
①決められたMHCタンパクを認識できること
②自分を攻撃しないこと
 
この二つを教え込むのが胸腺です。
 
これを『正の選択』と『負の選択』と呼びます。即ち、MHCタンパクと結合するものを選ぶ(正の選択)のと自己抗原と結合するものを殺す(負の選択)のです。
  
正の選択においても、MHCを認識できなかったものは殺されます。つまり、不合格者には死が待っています。胸腺の出口付近には、マクロファージなど食作用を持つ細胞が沢山待っているのです。
  
しかも、合格率は2~4%なんです。
  
つまり、最大98%が殺されます。
  
  
なぜ、せっかく作っておいてこんな無駄なことをするのでしょうか?
上手く説明は出来ないのですが、これは、やむを得ないことなのです。B細胞以上にT細胞の合格率が低くなるのは、T細胞がMHCタンパクという決められたものと結合しなければならないからです。
 
B細胞においては『負の選択』しか行われません。しかも、結構アバウトで、ほんの少し自己抗原と反応するくらいなら生き残ります。
 
それに対し、容赦がないのが胸腺なんです。生命の防御の要であるT細胞を徹底的に教育するのです。まぁ教育といっても試験をするだけなので、どちらかと言えば選別に近いですね・・・。
  
私たちの体の中を流れているT細胞はそれくらい厳しい難関を突破してきたものなのです。
  
  
あと、私の胸腺は既に半分以上が機能していないと思います。
胸腺のT細胞産生は思春期以降は落ちてきます。年をとると胸腺は殆ど機能しなくなります。
  
この理由はよく知らないのですが、突然変異を起こさないT細胞は沢山作り続ける意味がないからかもしれません。T細胞のレパートリーは明らかに有限なので、ある程度作ったら後は作ったものが分裂することで対応していっても問題ありません。それに、T細胞の産生・教育にはかなりの無駄がかかります。それもあって、ある程度経ったらT細胞の生産を減らしていくのだと思います。
一方、どんどん新たな敵に対応する為に変化し続けるB細胞はずっと骨髄で産生・教育されて出てきます。

  
    
T細胞(ヘルパーT)を紹介するイラストは「優等生の顔つき」のものが多いのは、胸腺という難関を突破して登場するからというのがよくわかります。
  
ところで、T細胞産生は思春期以降は落ちていく というのは有名な話です。
免疫機能を担う胸腺の機能は新生児~乳児期に高く、数え切れない抗原刺激を受け、T細胞が教育を受けて免疫を獲得する、というように幼少期にたくさんの菌やウイルスの攻撃を受ける(=自然の中でたくさんの経験をする)ことが大人になってからの病気のしにくさに大いに関係しています。

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