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5/25なんでや劇場レポート2~リンパ球は変異体~

nannokiさんからバトンを受けましたarincoです。お題は、「リンパ球ってそもそも何?」でしたよね。
さて、「リンパ球ってそもそも何?」というお題は、前回の劇場の復習を中心に展開していった方がよさそうです。まずはリンパ球の存在している「リンパ管」をざっくりと理解しておきましょう。
ろ過器としてのリンパ器官 [1]から、リンパ系の3つの役割が見えてきます。

組織液の90%は毛細血管に戻っていきますが、残り10%は血管に戻りきらずに組織液として存在します。体内の老廃物は、通常は静脈に取り込まれて心臓まで戻ってくるのですが、静脈に入りきらないあふれた分の老廃物は抜け道が必要になります。そこで登場するのがリンパ系です。(リンパ系に入った組織液は「リンパ液」と呼ばれています。)
 リンパ系は
①毛細リンパ管
②リンパ管
③リンパ節
④リンパ本管
に大別されます。

とあるように、まず「老廃物の運搬」があります。
 

リンパ管では組織液や老廃物の運搬だけでなく栄養分の運搬も行っています。例えば腸管では吸収された脂質や他の栄養分がリンパを経由して運ばれます。

2つ目は、「栄養分の運搬」ですね。

さらに、毛細リンパ管壁の透過性は毛細血管壁よりも大きいので、細菌粒子なども通過します。ここで重要な役割を果たすのがリンパ管とリンパ管の間にあるリンパ節と呼ばれる「フィルター」です。フィルターには免疫機能を担う「リンパ球」が存在しています。そしてリンパ節にウイルスが入ってくるとリンパ球が可動します。このようにリンパ節という免疫器官がある事で、血液循環中に老廃物や栄養分を安全に運搬する事が出来ます。フィルターを通過したリンパ液は、その後リンパ管からリンパ本管へ移動し再度静脈へと接続し、血液循環系に戻っていきます。

最後の一つは、「免疫細胞の運搬」です。
以上の様な3つの機能を備えているのがリンパ系です。これでリンパ球がどんあ所にいるのかイメージできたでしょうか?
それでは、具体的にリンパ球の仕組みを見ていきましょう!
その前にぽちっとよろしくです。
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 さて、前回の劇場でリンパ球の起源とその構造が提起されていますね。
4/29 なんでや劇場レポート4 ~免疫とウィルスの不思議な関係(免疫って体にいいだけじゃない) [4]
 この投稿を元に前回の劇場で提起されたT/B細胞の起源・特徴を整理すると、
①普通の細胞は、接着+反発のバランスによってつかず離れずの関係が構築されている。
②脊椎動物になって発達した神経細胞、筋肉細胞を守る為、反発の機能を一部弱める必要が出てき
た。
③その結果、ウイルスも近寄りやすくなり、T/B細胞の様な「獲得」免疫が必要になった。
④T/B細胞は、自変異する事で多様なウイルスに対応するが、その対応は、「数打ちゃ当たる」方式以
外の何者でもない。
⑤自らが変異する事によるコピーミス等が生まれるという、いたちごっこの構造となってしまっている。

といった所でしょうか。例えばB細胞の具体的な変異方法は、変異を追及した抗体 [5] を御参照あれ。
 これらをまとめると、
我々生物は種間闘争に勝ち抜くために、運動機能を向上させていった結果、リンパ球の様な免疫を作り出さざるを得なかった。
という事になります。
 では具体的にリンパ球=変異体である事を実感させられる事象に迫って見ます。
 
1:胸腺大学で作られるT細胞はほとんどが失敗作!?
 T細胞は、胸腺という器官で作られますが、実は、その95%以上は失敗作なのです。
 T細胞は、MHC分子(自分の細胞であるという証拠の膜タンパク)と接着し、かつ自分の細胞を攻撃しない。という2つの条件を両方満たす事で初めて胸腺から体内に出て行くことが出来ます。
 裏を返せば、自分の細胞を攻撃するT細胞がかなりの数存在すると言うことなのです。
 失敗作は、原則胸腺内でアポトーシス(自己死)させられますが、稀に認識出来ずに外に出て行ってしまう可能性も否定できません。
2:リンパ系幹細胞の癌(急性リンパ性白血病)「のみ」が幼児期に多い!?
 通常、癌といえば成人、特に高齢者の病気というイメージがありますよね。それは正しいのですが、唯一と言って良い程の例外が、この「急性リンパ性白血病」という癌なのです。白血病にも慢性骨髄性白血病等、色々ありますが、これらも成人がかかりやすい病気です。その中で、「急性リンパ性白血病」だけが、幼児期に多い。これは一体なぜなのでしょうか?
 そもそも「急性リンパ性白血病」は、どんな病気かと言うと
 リンパ系の未熟細胞が癌化、増殖し、正常な血球細胞が産生されなくなる。
という病気です。レポート1でNannokiさんが、掲載してくれた [6]によると、リンパ系幹細胞、T前駆細胞、B前駆細胞の癌化が「急性リンパ性白血病」という事になります。
この事実とリンパ球=変異体という認識を組み合わせると、
リンパ球を作りだすという行為が非常に不安定であるから幼児期=リンパ球形成期に欠陥=癌細胞化しやすいという現象が起こる。
という事が導き出せますよね。
 このように生物が外圧に適応する為に、変異可能性を追求して獲得したリンパ球ですが、様々な所でその代償を払っているのです。
 正に危険と常に隣り合わせなのです。
 さて、マクロファージから始まってNK細胞とリンパ球と追求してきましたが、第3回は、これらを踏まえて免疫機能の進化過程の大胆な仮説を提示します。
お楽しみに!

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