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脳を進化させた顎

脊椎動物につながる新口動物や、昆虫などの旧口動物はともに口と肛門が分かれて消化管が出来上がり、同時に神経がつながりました。前者は消化管が腹側に神経系が背側に形成され、後者は背腹が逆転していますが、口の前背側に脳が形成されるなど基本的な機能は変わりません。(旧口動物にはプラナリアなどの肛門がない原体腔生物が存在します)
旧口動物は「3胚葉生物 旧口動物の進化過程① ~扁形動物~」 [1]に詳しく連載されていますのでご参照ください。
さて、脊椎動物が旧口動物と異なり、中枢神経を発達させたのはなぜか?
それは、、、

顎のないヤツメウナギの丸い口(北海道大学免疫学・発生学研究グループのHPより [2]

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ヤツメウナギなど顎をもたない無顎類で、基本的な脳の機能が確立されていますが、脳の複雑化、巨大化といった大進化は有顎類からと言えます。
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顎は鰓を上下に動かすように関節化させて登場しました。そして、顎の噛む力を制御するため三叉神経中脳路が生まれました。さらに顎骨弓は地上生活に適応した音を聞くための装置、耳小骨へと劇的変遷を遂げます。
顎を獲得したことで、食べられなかった硬いものや、逃げようとする獲物をはさんだり砕いたりすることで食べられるようになります。その後、顎の周辺に集中した感覚神経・運動神経は視覚や聴覚、嗅覚の発達へとつながります。
さらに、胃が出来上がり、大量に食べて分解しながら少しずつ腸に流し込んで吸収するというストック機能を獲得し、コンスタントにエネルギー供給が可能になり高度な運動機能を支えられるようになりました。
これらは積極的進化と見ることもできますが、むしろ、獲物がある時に可能な限り食べてしまおうという弱者の戦略だと思われます。淡水に追いやられて、有効成分をリサイクルするための腎臓を作ったり、地上進出で水分を無駄にしないために大腸を獲得したのも弱者ゆえの苦労の賜物です。口→腸→肛門といった消化管の形成から管状神経が登場し、さらに顎を含めた消化機能の高度化のために脊椎動物は神経系を進化させたと言っても過言ではないでしょう。

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