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神経細胞、免疫細胞、ウイルスがもつ共通構造

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ウイルスの話題が続いてますが、先日のなんでや劇場では、獲得免疫(T・B細胞)は神経細胞の発達(脊椎動物への進化)によってもたらされ、さらにこれがウイルスの増殖を招き、DNA進化の袋小路をもたらしたという興味深い視点の提起がありました。
(詳細は→ 05月05日付の記事 [1]を参照)
なんでや劇場での提起は、反発系の膜タンパクに着目して、解明していきましたが、今回は膜の識別機能に着目して、神経細胞・免疫細胞・ウイルスの関係性を考えて見ます。
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上記の図は細胞同士の認識様式の概念図です。
左側は親和型膜タンパクでお互いが引き寄せ合ってる状態を示した図ですが、この図のポイントは 引き寄せ合っている状態は「起点」であって、最終的には融合に向かうこと=どちらかの細胞にどちらかの細胞が飲み込まれ一体になる状態 を示しています。(この状態で居続けることはない)
食作用(マクロファージ・エンドサイトーシス)、細胞内共生(ミトコンドリアなどをはじめとする各種オルガネラ)、受精(精子・卵子)はすべてひとつの細胞へ融合していきます。なおこの関係は同じ細胞同士では見られず(共食いは起こらない)、異なった細胞同士の関係として働きます。
これに対して右側 親和型+反発型膜タンパクの関係は多細胞動物の体細胞結合が代表で、ギャップ結合のように隣り合う体細胞同士の情報伝達を融合せずに膜を接着した状態で行います。
ところで細胞同士の情報伝達手段は大きく3つに分類されます。

1.傍分泌型 =近隣の細胞に局所的仲介物質を送ることで、シグナル伝達を行う。
2.シナプス型=神経細胞の軸索(神経細胞独特の長い突起)末端=シナプスにおいて、神経細胞に接触する(正確には微小な間隙を開けて接している)筋肉細胞や、別の神経細胞に伝達物質を送ることで、シグナル伝達を行う。
3.内分泌型 =内分泌細胞が、血流中にシグナル分子=ホルモンを分泌し、遠く離れた細胞にシグナル伝達を行う。

         
このうち右側親和型+反発型膜タンパクの関係を示すのが、1.傍分泌型 で、単細胞時代に獲得した(=同種の細胞を認識し、かつ融合(共食い)しないで)接着する関係で、基本は同じ体細胞同士を認識します。
3.は異なる細胞間の情報伝達に使われますが、これは接着という関係とは無縁の情報伝達です。
問題は2.シナプス型の結合関係になります。       
傍分泌型は基本は同じ体細胞なので、親和・反発がバランスしますが、シナプス型結合の場合異なった細胞に接近していく必要があります。
他の異なる体細胞同士はこのように接近することはなく、基本は無関係の関係にあるか、それとも融合型のように最後はどちらか一方に融合していくか?の選択肢しかない。
それに対して神経細胞は、特定の標的となる細胞に接近はするが、融合はしないという 微妙な関係 🙄 をシナプス型結合で行っているのです。
これらをまとめると、
神経細胞は特定の標的細胞に接近する⇒同類認識とは別の認識を膜表面に持つ⇒これには親和型膜タンパク機能(=融合機能)を利用⇒しかし軸策が伸びていく過程で特定の細胞以外と融合しては困る⇒髄鞘(シュワン細胞)で保護絶縁⇒融合に至らない少しの反発系膜タンパクの発現→微妙な関係=シナプス型結合  となったという仮説が成立するのではないでしょうか?
ところでこの他細胞の膜を識別して近づく機能は免疫細胞の機能と同じです。免疫細胞は骨髄で作られますが、神経細胞も非常に近しい位置脊髄から各方面に伸びていっています。体細胞の進化過程を考えると、神経細胞が先で、免疫細胞(循環器系)が後になるため、神経細胞の膜認識機能が免疫細胞に転用されたと考えることができます。さらにこれらの共通点は、識別の多様性を作り出すための(DNA)組み換えという機能も有しており、これがウイルス発生の温床(免疫細胞がもつ自己矛盾)につながるとも考えられます。
神経細胞、免疫細胞、さらにはウイルスは膜識別という共通構造を持って成立し、神経細胞の進化(多様化)が免疫・ウイルスの多様化も引き起こしていると思います。

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