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ウイルスって何?(2)~レトロポゾンとウイルス~

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こんにちは。
今日は、ウイルスって何?(2)です。
昨日のyootenさんの記事では、以下の視点でなげかけがありましたね。
★なぜ宿主細胞のDNAに入り込んだり、機能を乗っ取ったり出来るのでしょうか?
★ウイルスは生物(遺伝子)の切れ端であるってほんと?
これらについて答えていきたいと思います。
ヒントになるのが、ほとんどの生物で普遍的に見られる「動く遺伝子」「転移因子」と呼ばれているレトロポゾン(レトロトランスポゾン)とトランスポゾンです。
これが、ウイルスを生み出した可能性が非常に高いと考えらます。
さてどうしてでしょうか?
レトロポゾン・トランスポゾンの構造に近づくことで、ウイルスの成立過程・構造が見えてきますよ。
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続きをご覧ください。


まず、レトロポゾン、トランスポゾンって何?から押えていきます。
レトロポゾンとトランスポゾンはいずれも動く遺伝子であることに変わりはないが、転移の仕方は大きく異なっています。
●トランスポゾン
トランスポゾンは単にゲノム上での居場所を変えていくだけの単純転移で、謂わば「カット&ペースト」的転移と言える。ゲノム中を単純移動するだけなので、ゲノムサイズは変わらない
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●レトロポゾン
自らのコピーを作って、それをゲノム上の別の場所に再挿入する。
レトロポゾンは「コピー&ペースト」的な転移であると言え、レトロポゾンが転移を起こすと、数がどんどん増え、ゲノムサイズが大きくなっていく。

自らのコピーを作り、再挿入するプロセスは、レトロポゾンのDNA配列を一端RNAにコピーし、それを逆転写酵素(RNAを鋳型にDNAを合成する酵素)によってDNA配列へと複写、こうして生じたレトロポゾンのコピーDNAを、ゲノム上の別の位置に挿入することで行われている。
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レトロポゾンの転移が起こると、遺伝子配列が変わるだけでなく、ゲノムサイズも大きくなる為、突然変異が引き起こされる。この為、生物の細胞内にはレトロポゾンを強固に拘束して変異を抑制するシステムが組み込まれている。(このようなシステムをRNA干渉と呼ぶ。)
しかし、生物が劇的に進化する大進化過程においては、このレトロポゾンによるゲノムサイズ拡大と突然変異が積極的に利用されていると考えられる。
●次に、レトロポゾン・トランスポゾンがウイルスの特徴と、どんな類似した特徴を持っているのかに焦点をあてます。
1.インテグラーゼと呼ばれる酵素

ウィルスの大半は、宿主核内のゲノム上に、自らの遺伝子(DNA又はRNAを鋳型に逆転写して作られたDNA)を組み込むことで、増殖する。宿主のゲノム上に、遺伝子を組み込む為には、宿主のゲノムを部分的にカットする必要があり、インテグラーゼと呼ばれる酵素を使用することで、これを可能にしている。このインテグラーゼは、レトロポゾン、トランスポゾンが転移の際に利用している酵素と全く同じである。
↑↑↑これがひとつ目の答えです↑↑↑
2.反復配列

レトロポゾン、トランスポゾンの両末端数十塩基対は、同じ反復配列(大抵は逆向き配列)となっており、この反復配列(LTRと呼ぶ)が、転移を可能にする条件の一つとして考えられている。(ただし、LINEと呼ばれるレトロポゾンの一グループはLTRを持たない)ウィルスの遺伝子も、両末端に同じような反復配列(LTR)を持っている。
3.DNA型、RNA型、RNA逆転写型(逆転写酵素を持つRNA型)の3種類が存在する。
ウィルスをその遺伝子型によって大雑把に体系分けすると、DNA型、RNA型、RNA逆転写型(逆転写酵素を持つRNA型)の3種類が存在する。
DNA型ウィルスが、宿主のゲノム上に自らの遺伝子を組み込むプロセスは、トランスポゾンの転移プロセスと同じであり、RNA逆転写型が遺伝子を組み込むプロセスは、レトロポゾンが複製→転移するプロセスと全く同じで、逆転写酵素を利用している点まで共通している。
問題になるのは逆転写酵素を持たないRNA型だが、これはレトロポゾンのうち逆転写酵素を持たないSINEと呼ばれるグループにその原型を求めることができる。
↑↑↑これがひとつ目の答えです↑↑↑
4.タンパク質をコード化できる遺伝子をもつ
ウィルスは、RNA又はDNAからなる遺伝子と、タンパク質でできた殻(カプシド)、エンベロープと呼ばれる膜成分から構成される。(エンベロープを持たないウィルスも多い)少なくてもウィルスの遺伝子には、カプシドを構成する為の情報がコードされている必要がある。
レトロポゾン、トランスポゾンは、タンパク質をコードするのに充分な塩基配列数(大よそ4000~5000塩基対)を持っており、実際タンパク質情報を有したものも存在する。このことからレトロポゾン、トランスポゾンからウィルスが生じたとしても、何ら矛盾はない。
↑↑↑詳細は、明日の記事で紹介します↑↑↑
●ウイルスは生物(遺伝子)の切れ端であるとなんでや劇場で紹介されました。
これは、ウイルスの成立過程を見ていくとで↓↓↓2つ目の答えに近づけます。↓↓↓
 ウィルスの誕生は、大進化時におけるレトロポゾンの増大と密接に結びついていると考えられる。
・・・(中略)・・・・・・
 各大進化過程におけるレトロポゾンの増大時期、コピー途中のまま、もとのゲノムに挿入されなかったレトロポゾンのコピーRNAが核外に流出
通常、核外に流出した異常遺伝子は酵素等の働きにより分解されるのだが、”たまたま”このような分解を免れたレトロポゾンのコピーRNAが、リボゾーム(RNAからタンパク質を合成する装置)によってタンパク質を合成。RNA、DNAはそのままでは細胞膜を通過できないが、、”タンパク質とRNAが一体化することで、細胞外へと出る事ができたものが存在した。
これがウィルスの原型となったのではないだろうか?
 
 先述したように、通常時は変異抑制の為、レトロポゾンの働きは強固に抑制されているが、大逆境→大進化時は進化の為にこの抑制が解かれる。この時期に、レトロポゾン(正確にはレトロポゾンのコピーRNA)が核外に流出したとしても不思議はないし、急激な増大時期であれば、流出後の酵素分解を免れるものが存在する可能性も十分に高くなる。
 哺乳類以降、特に霊長類を宿主とするウィルスの量が圧倒的に多いのも、レトロポゾン量の増大と結びつけて考えれば辻褄が合うのです。
引用文
「ウイルス=大進化が生み出した生物の断片」①~③ [4] 
「ゲノム変化」 [5]

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