2008-05-05

4/29 なんでや劇場レポート4 ~免疫とウィルスの不思議な関係(免疫って体にいいだけじゃない)

4/29 なんでや劇場は本当に気付きの多い会議でした。既に主要論点はhttp://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=175512 にも書かれていますので、少し、私自身の感想を中心に今日は書いてみたいと思います。

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免疫についてこの間、いろいろと調べてきましたが、こと「起源論」については、免疫学からも生物学からも、なかなか答えがだせていない、というのが実状ではないでしょうか。それは、やはりあまりにも学会がジャンル分けされて横断的な仮説提起の場がないということが大きいのではないか、という気がします。(4月29日のなんでや劇場には獣医さんも参加されていましたが、学会でも未解明な領域に突っ込んでいくというなんでや劇場の趣旨にいたく賛同されていたのが印象的でした)また「免疫=体をももってくれる有り難いもの」「自己と非自己を識別できる賢いやつ」というような、あらかじめある種の価値判断が働いていることが、免疫を分かりにくくしているのだと思います。
例えばマクロファージについても、免疫学的なアプローチだけではその起源はなかなかわからないのです。しかし「栄養細胞→生殖原母細胞→生殖細胞」という生殖細胞の構造についての知識と、栄養細胞=自分の細胞の死骸を食べる=お掃除役、という免疫学と性科学をつなぐ視点を持つことで、マクロファージ=生殖起源説を提起することができた訳です。
またNK細胞についても、これほど免疫について長い歴史があるにも関わらず、ようやく最近になって発見されたということ事態が、非常に特異な細胞であることは確かであり(脊椎動物以前にNK様細胞の存在が認められているとはいえ、その役割は今も不明らしい)、またその細胞に対する殺傷性は、生命原理から見ても非常にリスキーな存在といえます。それを癌細胞と戦って人間を病気から守ってくれる有り難いもの、とだけみなすのは極めて一面的な価値判断だと疑う必要があります。
そのように免疫細胞に対する現在的な価値判断は一旦棚上げにして、その成立背景をもあわせて考えていくことが「起源」を考える時には必要です。そのように考え直してみるとNK細胞自体が突然変異細胞であって、いわば一種の癌細胞であったものが、結果的に癌細胞の処理班として適応的に生き残ったのだと考える、今回のなんでや劇場の仮説はおおいに納得のいく仮説でした。
ここではNK細胞の持つアポトーシス作用がやはり注目点ではないでしょうか。生物が一気に爆発的な多様性を獲得したカンブリア大爆発において、細胞同士のつながりを自由にデザインするためにはアポトーシスが多細胞進化に大いに活躍したと考えられます。そこに自分の細胞を死滅させるという危険なNK様の細胞が登場する背景があったのだと考えます。(この部分は劇場では議論されませんでしたが、私なりの仮説です。)
さて、続いて獲得免疫(T細胞・B細胞)の起源についてです。獲得免疫についても、「これほど多様な特異性を生み出す免疫はスゴイ!」という免疫学の見方にまずは疑問をつけるところから考え直してみる必要があります。よく考えるとこの無限のバリエーションによって対応するという適応様式は、数打てば当たる方式だともいえる訳で、実は極めて効率が悪い、ともいえる訳です。現にもう一方の進化の極にいる昆虫類はこのような獲得免疫なしでも適応しているわけで、そうするとこれは脊椎動物の弱点構造ではないか、という疑問すら考えられる訳です。
脊椎動物の弱点。それは脊椎動物の所以でもある神経系の進化自体にあるのではないか。つまり運動能力を上昇させるために、神経細胞と筋肉細胞の接合部を、通常の細胞以上に密着させているのですが、まさにそこがウィルス感染しやすいという弱点になっているのではないか。この仮説は、今回の劇場レポートの1でも書かれた膜細胞の仕組みを理解することで登場してきた仮説です。つまり通常の細胞は、接着+反発のバランスによってつかず離れずの関係が構築されているのですが、神経細胞は、情報伝達をより迅速にするために、反発系の膜タンパクを後退させたと考えられるわけです。それ故に、神経細胞それ自体は、シュワン細胞によって完全に絶縁され、細菌・ウィルスへの防御を万全なものにしているのですが、どうしても筋肉細胞との接合部は外部からの侵入に犯されやすいわけです。
この神経細胞の弱点は、電源ケーブルとコンセントに喩えるとわかりやすいかと思います。電源ケーブルもビニール被覆などで漏電しないようにされていて、この絶縁構造がしっかりしていないと、いくら大量の電流を流しても、電気は流れなくなってしまいます。そしていくらしっかり電源ケーブルを絶縁しても、どうしても機器に接続するコンセントの部分には水やほこりが浸入しやすく、時として漏電火災の原因になります。つまり接続部というのは、どうしても外部からの侵入に弱いという弱点を持っているのですね。
下が、神経細胞と筋肉細胞の接合部です。図はhttp://www.geocities.co.jp/HeartLand-Suzuran/9389/sem/sem_p2.htmlからお借りしました。
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下が、シュワン細胞のイメージ図です。図はこちらからお借りしました。
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このような弱点故に、ウィルスが体細胞にくっつきやすくなり、その結果、登場したのが、B細胞、T細胞だと考えられるのではないでしょうか?
問題はB細胞、T細胞のとった特異性強化=数打ちゃ当たる方式が適応戦略としてどうか、という点です。確かに一度侵入したウィルスを記憶することで、一世代のうちに起こる次の侵入に備えるという戦略は、ウィルスの猛威に対して、個体の全滅を防ぎ、種の保存を可能にした訳ですが、ある意味で特異性が強すぎて、次にウィルスの新種が登場してくるとそれには適応できない、という弱点を持っています。
特に免疫進化において変異性を高め、多様性を拡大させるということは、それだけ、遺伝子の切れ端、が生まれやすい情況を作るともいえる訳です。ここで「ウィルスは動物自身が生み出している=動物自身の変異の副産物=遺伝子の切れ端である」という認識が重要になってきます。つまり、ウィルスに備えるために起こした変異がウイルスを生み出してしまったともいえる訳で、これは一種の変異のいたちごっこ、進化の袋小路だと見いえる訳です。現に、人工抗原ともいうべき抗ウィルス剤が開発されてから、ウィルスはさらに変化を加速してのではないか、といわれているくらいです。
(注)ウィルスの起源には、細胞以前から存在するという説と、細胞誕生後に、細胞内の遺伝子の切れ端が外に飛び出していったものだとする説がありますが、現在では、後者の説が有力視されるようになってきています。またヒトゲノムの解析の結果、「人の遺伝子の34%はウィルスのかけら(近似物)である」ということも明らかになってきました。
このように免疫の歴史を紐解いてみると、免疫の歴史は決して順風漫歩とは言いがたい変異の積み重ねであったことが分かります。そもそも変異は適応=安定のために引き起こされるものですが、行き過ぎた変異は時として、悪循環を生み出すという自然の摂理を体現しているのが免疫なのかもしれません。
人類の歴史、特に近代の歴史も極端なまでに変異を加速させる時代でした。その原理は異化原理と呼んでもいいくらいです。今、私たちは免疫同様、行き過ぎた変異がもたらす悪循環から脱却する必要に迫られています。そのためには自然の摂理をさらに追求すること、つまり大脳進化=観念進化が必要とされているのです。

List    投稿者 staff | 2008-05-05 | Posted in 未分類 | 2 Comments » 

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コメント2件

 平田陽三 平田病院 | 2008.09.08 15:53

最近になって初めて、日本の癌学会でも癌組織の根源細胞である癌の幹細胞に関する論文が発表され始めました。癌の幹細胞に関する研究が進展すれば、将来の癌研究や癌治療に重大な転機を齎すものと期待されます。小生は1992年以来、癌の幹細胞に対処する治療概念、すなわち、今までにない全く新しい治療概念を記載した論文17編を国際的な医学雑誌に発表しています。それらの論文資料にご関心のある方には、個人的に無料で郵送致しますので、郵送できる宛先をお知らせ下さい。
780-0870 高知市 本町 5-4-23 平田病院 平田陽三
電話: 088-875-6221 Fax: 088-871-3801
E-mail: hphirata@mb.inforyoma.or.jp

 管理者 | 2008.09.10 1:31

論文のご紹介ありがとうございます。
がん治療の全く新しい概念ですか。それは読んでみたいですね。
一旦仲間にも話してみて、関心がありそうならメールを送らせていただきます。
当ブログにも癌や免疫に関する記事がたくさんありますので、ぜひまたコメントをしに来てください☆

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