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ゾウリムシの繊毛(外圧受容体)

 原核細胞から真核細胞へと進化するに当ってのプロセスは、未だ明確なものは分かっていませんが、地球生成時より30億年前後に、好気的呼吸生物の一般化と光合成細胞(真核生物)の出現が起こった事が大きな転換点である事は分かっています。
 そして、この単細胞真核生物(原生生物)は1個の真核生物として達成しうる複雑さの極限を体現しています。
 原生生物は、進化の面から見ても多様であり、驚くほど変化に富んだ形・複雑な行動・光合成をするものまであります。肉食性もあり、運動性をもつもの・定着性のものまで多様です。
 その構造は複雑で、知覚毛・光受容器・鞭毛・突起物・口・刺針・筋肉様収縮束など色々な機能を持っています。このように多細胞生物のように複雑で多才なことは、繊毛虫と呼ばれる仲間を見ると良く分かるようです。
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 今回は、その繊毛虫の中で最も有名なゾウリムシの機能である繊毛について調べて見ました。
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さて、真核単細胞生物の認識機能を紐解くに当って、まず最初に自然外圧の受容体の機能を見ていく事は重要だと思われます。自然外圧と言えば、光・重力・温度・空気などなど色々ありますが、特に注目したいのは重力です。∵この外圧は生物全てにおいて存在と同時に看取しなければならないものであるから。
 

ゾウリムシの特性として、重力と反対方向に泳ぐ性質があることが良く知られています。これは一般に「負の重力走性」と呼ばれており、これが重力に対する適応であり、他の餌を入手・補助したりする運動とも連動する応用になっています。そしてそれは繊毛-細胞膜間で行われています

 
 ○ゾウリムシと水中環境の実験について
 

まず、ゾウリムシの比重は1.04であり、1.0を若干上回っています。なので、重力に抗する事が出来ないならば、水中(比重1.0)に沈むのが自然でありますが、どうもそうではないようです。
 実際、実験すると水面近くに集まるようです。一方、同じ比重の水(比重1.04)の中では無重力なので一様に分布し、比重が高い水の中では水底に集まる(これは正の走性となる)事も実験により、確認されています。→重力に反して運動している

 
 ○ではなぜ、重力に反して動けるのか?
 
 

通常の水中においてはゾウリムシは何もしなければ重力の影響より下方に落ちていきますが、この時、繊毛が水の圧力抵抗より上方向に機械的歪みを生じます。
 この機械的刺激が膜の電気的反応(膜電位)と急激な繊毛反応を起こし=繊毛運動して上方向に移動する事が判明しています。→繊毛が機械的刺激の受容体(センサー)になっており、その結果、運動の繊毛となって動いている

 ※他の動物においても、細胞とそれに生えた繊毛が重力反応機構となっているのは共通である。特にクラゲから人までの重力の受容器(=平衡胞)は良く似た構造であり、感覚毛である繊毛がどの方向に押し付けられるかで重力の方向を知るのである。
 ※また、繊毛はほとんどの動物種、多くの原生動物に見られ、人の体では気管の上皮細胞に膨大な繊毛があり、埃や死んだ細胞などを粘液と共に口まで掃き出す役割を担う。精子の運動も同じ構造を持つ鞭毛によって行われている。
 以上が、ゾウリムシを例にした真核単細胞生物における「繊毛」という外圧受容体(センサー)の機能・働きの一部ですが、この時代に獲得した機能が、後の多細胞生物~人にまで引き継がれている事は非常に面白い生物の歴史であると思います。
 

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