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ヒドラ・その神経系の秘密【その1】

 神経系の起源を語るとき、忘れてならないのがヒドラ。人類のような中枢神経を持たない「散在神経系」を持つ最も原始的な動物と言われています。
 
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動物というからには動くのですが、ではどんな風に動くのか。
実はこんな動き方をします。
 
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触手をクネクネと動かしたり、ノソノソ這ったりする様子ばかりを想像していましたが、なんと「とんぼ返り」や「尺取り虫歩行」をするんです。中枢神経を持たないヒドラが、どうしたらこのような全身を使った協調動作をすることができるのでしょうか?
 
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ヒドラの秘密の続きです。引用は下図の説明です。
 
hydra_02.jpg
 

飽食したヒドラがさらに餌を食べる場合には、口丘の部分に首のようなくびれをつくって、餌を取り込む。このような「くびれ形成」は、絶食ヒドラでは決してみられない。しかし、絶食ヒドラにも胃腔内にチロシンを注入し、体外に摂食化学刺激であるグルタチオンを加えると、くびれ形成がみられる。この場合、胃腔内の体内チロシン受容器と、体外からの刺激を受け取るグルタチオン受容器の、両者からの感覚入力の統合によって、この行動が発現していると思われる。

 つまり、散在神経系のヒドラが、チロシンとグルタチオンという複数の外部情報を認識し、それらを統合して「くびれ形成」という動作をしているということです。
しかし、複数の情報を統合する場合、神経系は中枢機能を持たねばならないはずです。中枢神経を持たないはずのヒドラに、どうしたらこんなことができるのか?
 
さらに、「慣れ」現象が観察されるという報告もあるようです。

動物は、ある刺激に反応して報償を得るとその刺激に対する反応が強められ、逆に罰を得ると弱められ、何もなければその刺激を無視するようになる。この最後の場合を慣れとよび、中枢神経系の機能であることが判明している。ヒドラも、触手に加えられる機械刺激の繰り返しによって、ついには収縮反応をしなくなる。これが筋肉の疲労ではなく、感覚器の順応でもないことが行動学的に示されている。

散在神経系のヒドラが、こうした高等動物の中枢神経に対応する能力を持つのはなぜか?
 
続きは次回をお楽しみに。
 
※引用は、画像を含め「神経系の多様性:その起源と進化」(社団法人日本動物学会監修・培風館)によりました。
 
 

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