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脳内の免疫細胞 ミクログリア

こんにちは NISHIです。
tanoさんが3月17日の記事で「グリア細胞」について書かれています。
この記事を読んで、グリア細胞について興味を持ったので、更に色々調べて見ました。
3月17日の「グリア細胞って何?」では触れられていない、グリア細胞の働きについて補足的に書きたいと思いますので、ぜひ3月17日記事と一緒に読んで欲しいと思います。
sbyori2.jpg
アルツハイマー病の原因となる海馬に溜まったタンパク質のゴミ、アミロイド(青色部分)を貪食するミクログリア(緑色部分)
写真はこちらからお借りしました。リンク [1]

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さて、グリア細胞ですが、3月17日の記事でも書かれているように、グリア細胞=「神経系細胞のうちニューロン(神経細胞)を除く全ての細胞の総称」で、中枢神経系で働く マクログリア、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、上衣細胞、抹消神経系で働く 外套細胞、シュワン細胞の大きく6種類が知られています。
今現在、グリア細胞は上記のようにニューロンを除く神経系細胞として位置付けられていますが、この分類はあまりに大雑把で、各細胞の本質を見落とす恐れがあると僕は感じています 🙁
グリア細胞として一括りにされていますが、それぞれの細胞は分化元の幹細胞(リンク [5]参照)が違っており、当然働きも全く異なっているからです。(もっと突き詰めれば、発生胚葉も違う)
この分化元幹細胞の視点で、グリア細胞を分類すると、以下のように整理されます。
 

<中枢神経系>
  ・造血幹細胞由来 =ミクログリア
  
  ・神経幹細胞由来 =アストロサイト
               オリゴデンドロサイト
               上衣細胞
 <抹消神経系>
  ・神経幹細胞由来 =シュワン細胞
  ・筋組織幹細胞由来=外套細胞

今回は、この中でも中枢神経系グリア細胞のミクログリアに焦点を当てたいと思います。
■脳内の免疫細胞 ミクログリア
ミクログリアは脳内の免疫細胞とも呼べる細胞で、脳内の死滅細胞等を貧食します。
その働きが、体内の掃除屋「マクロファージ」に極めて似ている+マクロファージを含めた他の免疫細胞と同じ、造血幹細胞由来であることから、マクロファージ系細胞が、脳内に移行したものと考えられています。ミクログリアは、マクロファージに同じく、貪食能、抗原提示機能のほか、サイトカインを作り出し、免疫反応も行なっています。まさに脳内の免疫細胞と言えます。
ミクログリアは普段脳組織内に不活性状態で存在していますが、神経系に炎症等で生成される様々な因子に反応して活性化し、活発に動き廻って死んだ細胞などを貪食します。
また、損傷箇所を修復する為の因子を出すことも行います。(これはマクロファージにはない機能
ミクログリアは、サイトカインを作り出したり、細胞を貪食するので、必要以上に働きすぎると正常な神経細胞まで、破壊してしまうことがあります。その為、脳神経細胞は「SOS信号」「GIVE UP信号」を使い分けて、ミクログリアの働きを制御しています。
脳神経細胞の「SOS信号」を受けると、ミクログリアは中心的に神経細胞を「守る」働きを行います。前述した損傷箇所修復因子の遊離が、この「守る」働きに該当します。
「GIVE UP信号」を受け取ると、今度はミクログリアは、神経細胞を貪食して殺しています。
GIVE UP信号は文字通り脳神経細胞が死滅すると言う信号です。死滅した細胞が脳の中にいると、脳内に炎症を起こしてしまうので、ミクログリアに信号を送り、死滅細胞の掃除を行うのです。
すなわち、ミクログリアは、活性・不活性と言うスイッチのオン・オフと、SOS→損傷箇所修復、GIVE UP→貪食と言う2段階の制御によって、脳細胞を文字通り「守って」いるのです。
最近の研究でミクログリアには、更に驚くべき機能が存在することが解ってきました
それは「神経線維の選択的除去」です。
動物の活動や行動は、神経細胞から伸びる神経線維が複雑に繋がることで形成された神経回路によって制御されています。
神経回路は、発生過程においておおまかに作られ、感覚情報の処理や複雑な行動の制御に最適で、機能的な形に完成されていきます。
このようにおおまかな回路から、最適で機能的な回路へと完成させていくには、一端つくられた神経回路の一部を部分的に作り変えてゆく作業=不要になった神経線維だけを選択的に取り除いたり、新たな神経線維を再伸張させたりする作業が必要になります。
不要な神経線維を選択的に除去すると言う現象は、怪我や病気で神経線維の一部が障害を受けたときにも起きます。
このような「不要な神経線維の選択的除去」を行っているのが、ミクログリアの貧食機能であることが解ってきました。(科学技術振興機構報 第301号より)
つまりミクログリアはその貧食機能によって、「神経回路の整理」を行っているのです。
なお、「新たな神経線維を再伸張させる」機能は、神経幹細胞由来のグリア細胞が一翼を担っています。(詳細は後日投稿予定です)
以上から「神経回路=ニューロンネットワークとは、神経線維のみで構築されるのではなく、グリア細胞と神経繊維の協働によって構築されて行く」と言えます。
さて最後に、3月18日の記事でtsuji1さんが仮説立てしている、「ミクログリアのように免疫的な働きをするグリア細胞の一種が、DNAの組み替え情報を海馬や嗅覚ニューロンの新生時に渡している」可能性に関してですが、ミクログリアも含めて、グリア細胞は癌化することが解っており、グリア細胞が遺伝子組み換えを重ねる中で、癌化するのではないかと考えられています。
(ちなみにグリア細胞の癌化による脳腫瘍は極めて危険と言われています。神経細胞そのものも癌化するようですが、グリア細胞の癌化の方が数倍危険なようです)
そういう意味で、グリア細胞が遺伝子組み換えを行っている可能性は十分に考えられるのですが、その遺伝子組み換えの目的が免疫的働きの為なのかどうかは解っていません。
ここはもう一歩追求が必要なので、更に調べてみようと思います 😀

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