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多細胞生物の体細胞分化過程~軟体動物~

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4月8日の脊索動物の体細胞分化に続いて今回は軟体動物の体細胞分化を見ていこうと思います。
 
軟体動物というのは、貝類、ウミウシ、イカ、タコなどの動物の総称で、体は骨格がなく、皮ふは粘膜におおわれていて、体が乾燥すると生きることができない動物です。
  
では、さっそく彼らの体細胞分化を見ていきましょう
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【軟体動物】=貝類、ウミウシ、イカ、タコ
・胚葉毎の機能進化
●外肺葉
・神 経:原始的な軟体動物では環系動物と同じ梯子神経系。進化した軟体動物では、梯子状の横連絡が失われ、神経節の集中化が起こっている。
 
・感覚器:目、等の感覚器を有する。特に頭足類(タコ、イカ等)はよく発達した目を持つ。
 
●内胚葉
・消化器:口ー胃ー腸ー肛門が存在。また肝臓が存在する。
  
・呼吸器:櫛鰓(くしえら)と呼ばれる軟体動物特有の呼吸器が存在する。陸上生活するものでは櫛鰓が退化し、殻の入り口近くの外套膜の下に空気の出入りできる腔所が存在し、肺の役割を果たしている。
  
●中胚葉
・運動器:発達した筋肉が存在。特に頭足類では著しく発達している。
  
・循環器:心臓、血管が存在する。
  
・泌尿器:腎管が存在。血中から排出物質が濾過され、原尿が形成される。原尿は腎囲心嚢連絡管を通じて腎管へ送られ栄養物の再吸収と排出物質の分離が行われた後に尿として外腎門から排出される。
  
・生殖器:軟体動物は雌雄異体のものが多いが、雌雄同体のものも存在。生殖器官は生殖巣と生殖輸管から成り立ち、生殖輸管には様々な腺組織や袋状の構造が付随する。
  
※存在しない器官:内分泌器
  
軟体動物は環形動物(ゴカイ・ミミズなど)から進化しましたが、彼らに比べて特に神経・感覚・運動機能の発達が著しいのが特徴です。
  
最後に、免疫機能についてふれておきます。
進化上1つ手前の環形動物との比較を見てみます。
  
環形動物                  軟体動物
①マクロファージがある           →   マクロファージがある 🙂
②異種移植拒絶の記憶がある      →   記憶がない
③NK(的)細胞が見つかっている     →   見つかっている 🙂
④液性防御因子が見つかっていない  →   見つかっている 😮
  
  
注目すべき点は、②異種移植拒絶の記憶機能を失ってしまったこと、④液性防御因子を新たに獲得したことです。
   
液性防御因子とは、リゾチームなどの殺菌物質、凝集素、補体(複合殺菌因子)などを指します。
(リゾチームとはヒトの場合涙や鼻汁、母乳などに含まれている物質、複合殺菌因子とは他の微生物(感染症の原因となる微生物)に対して作用し、その発育を阻止または死滅させる物質です)
   
つまり、免疫細胞とは別に、分泌液によって異物を排除したり、微生物の力を借りて異物を排除する機能を新たに獲得したということです。一般的に運動能力が上がるほど新しい免疫機能は獲得されますのでこの点は進化として理解できます。
   
不思議なのは、異種移植拒絶の記憶機能を失ってしまったことです。
異種移植とは文字通り別の種の細胞を移植することですが、これを拒絶する記憶を失ってしまった。
ちなみに軟体動物から進化していく節足動物(昆虫の類)は、異種移植拒絶の記憶機能はないのですが、同種移植を拒絶する免疫記憶があります。このへんの入れ子構造はちょっと不思議です。 🙄
因みに人間は、異種・同種どちらの移植拒絶も記憶します。
chai-nom

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