2008-03-25

獲得免疫の概要

200px-Red_White_Blood_cells.jpg
<左:赤血球 中:血小板 右:白血球  ウィキペディア 白血球 より引用>

こんにちは
今回の記事は、前回の免疫シリーズに引き続き、獲得免疫って何?にせまります。
ちょっと長くなるので、前後半の2回に分けてお送りします
前半:獲得免疫の概要
後半:獲得免疫の認識機能


獲得免疫の中心的な役割を果たしているのがリンパ球という細胞です

リンパ球は血液の白血球の中や、リンパ腺、脾臓、胸腺という臓器に存在しています

リンパ球は、10ミクロンくらいの小さな細胞ですが、いろいろなグループに分けられるのです。
大きくはB細胞T細胞という2種類の細胞に分けることができます
(ちなみに、頭文字のBはBone marrow (骨髄)、TはThymus(胸腺)から名付けられています。)T細胞はさらにヘルパーT細胞キラーT細胞サプレッサーT細胞などに分けられます。

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また、リンパ球の表面には異物を見分けるためのアンテナが立っています。このアンテナは受容体(レセプター)と呼ばれ、T細胞の場合にはT細胞レセプター、B細胞の場合には抗体と呼ばれる物質がアンテナの役目を果たしています 😮

アンテナといってもいろいろな異物を見分けるわけではありません。たった一つの異物しか認識することができないのです。=個別認識
驚くべきことに、1個1個のリンパ球がもっているアンテナはすべて形が異なっていて、たとえこれまで経験したことがない異物が侵入してきても、それに反応できるアンテナを持ったリンパ球が存在しているのです。すごい

この点が、同類認識を行う(同類以外はすべて食べる)マクロファージや好中球との決定的な違いです。

それでは、B細胞やT細胞はどのようにして異物を排除しているのでしょうか

前回の記事にあった血球系(マクロファージ、好中球、樹状細胞)は、異物を食べることで排除を行う細胞でしたが、リンパ球系(NK細胞 B細胞 T細胞)は異物を食べないで攻撃する細胞なのです。

■B細胞
B細胞は抗体という物質を作りだし、この抗体が異物を処理する働きをします。
抗体とは、先に述べたB細胞のアンテナで、異物に対して、特異的に覆い隠すようにして結合するタンパク質です。

よく異物と抗体には「鍵と鍵穴」にたとえられるのですが、両者の特異的な結合を抗原抗体反応といいます。

抗体の役割をまとめると以下の2つになります。

①異物と結合することで、異物の活動を止めて無毒化させる。【異物を無効化させる役割】
②異物と結合することで、他の免疫細胞(マクロファージやキラーT細胞など)に異物を認識させやすくする。【的・標的の役割】


12.jpg.jpg
獲得免疫② 抗体の活躍より引用させていただきました

上図のように、ある異物が体内に侵入してきたとします。その異物に結合できるアンテナを持ったB細胞と抗原が結合すると、そのB細胞は刺激を受け増殖を始めます。
さらにヘルパーT細胞からの情報も受け取ることにより、抗体を産生し分泌するプラズマ細胞(抗体産生細胞)という細胞に変わります。
プラズマ細胞(抗体産生細胞)から産生された抗体は異物に到達し結合してしまいます。
異物が毒素のようなタンパク質の場合には抗体によって中和されてしまいますし、抗体が結合した細菌はマクロファージに飲み込まれ殺されてしまうことになるのです

■T細胞
T細胞は役割によって以下のように分類できます。

ヘルパーT細胞司令塔
免疫反応の中で中心的な役割を担っていて、異物が侵入したという情報をマクロファージや樹状細胞から受け取って、キラーT細胞やB細胞に命令を与える司令官の役割を果たします。

キラーT細胞殺し屋
ヘルパーT細胞の命令によって病原体を攻撃する主力部隊で感染した細胞と一対一で結合して感染細胞ごと異物を殺してしまいます。
・サプレッサーT細胞=ストッパー
病原体がほぼ全滅するとヘルパーT細胞の活性を抑え、キラーT細胞やB細胞の活動を止めます。

zukai03.gif
東京女子医科大学消化器病センター癌免疫療法チーム/一般に普及している免疫療法より引用させていただきました。

上図のようにT細胞を中心とした獲得免疫は、各役割を持った細胞が連携プレーで異物を攻撃するのです。

■記憶細胞(メモリー細胞)
記憶細胞は、B細胞にもT細胞にもあり、通常、B細胞もT細胞も異物との闘いが終わったら速やかに死ぬのですが、一部が記憶細胞(記憶B細胞、記憶T細胞)に分化して体内に残り生き続けるのです。

どちらの記憶細胞も、同じ異物の再侵入に備える役割をもつのです

同じ異物が侵入した際、記憶B細胞はただちに形質細胞に分化して抗体を産生します。
同様に、同じ異物が侵入した際、記憶T細胞はただちにキラーT細胞に分化し、感染した細胞を破壊します。
このような仕組みがあることで、異物がはじめて侵入したときよりも二回目以降の同じ異物の侵入に対して圧倒的に早く対処できるのです。

記憶細胞は、リンパ節に隠れる らしいのですが、記憶細胞の記憶継承の仕組みはよくわからないので、今後の追求課題となります

<参考>
Welcome to Floral Art

以上、“やっさん”がお伝えしました
次回は獲得免疫についての後半レポートをお送りします。お楽しみに~

List    投稿者 marlboro | 2008-03-25 | Posted in ⑤免疫機能の不思議No Comments » 

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