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卵の膜

こんにちは。今日の話題は「たまご」です 🙄

魚の卵は、とても小さくてシンプルなつくりですが、、、ニワトリの卵となると、硬い殻と何重もの膜に包まれて非常に精密な構造をしています。
今日は、これらの卵の「膜」の進化に注目してみます

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まずは、卵の進化のおさらいから・・・
両生類から哺乳類への卵の進化 [4] 
造卵機能の進化過程 [5] 

【魚類の卵膜】
魚類の卵の膜はとても単純・・・・・なように見えて、実はけっこう複雑で高機能です。
卵の外側を取り囲んでいる外被は、胚を守る透明な膜でコリオンとも呼ばれます。さらに膜は外層と内層に分かれ、内層は10~12層の層状構造で、さまざまな条件下で厚みが収縮したり、膨潤したりする性質があります。生体膜としての選択透過性により、卵内の環境を調節しているのでしょう。

この卵膜は、受精すると硬くなる性質があります。例えば、メダカの未受精卵は手で持つと簡単に潰れてしまいますが、受精すると手で揉んでも潰れないくらいになります。
受精後に硬化した卵膜は極めて強靭な構造で、外来のタンパク質分解酵素ではほとんど分解されません。しかし孵化時に胚から分泌される孵化酵素では容易に、速やかに分解されます。
これにより、複数の精子が卵に進入することを防ぐと同時に、発生中の胚を保護する機構を有しているのです。

※参考
魚の卵の殻は受精すると硬くなるその開始機構 [6](pdf)
魚類における卵膜形成機構の解明 [7]

【両生類の卵膜】
両生類の卵は、おおざっぱには魚類と同じですが、その外側に卵嚢(らんのう)を有しているものが多くなります。
卵嚢(らんのう)とは、卵を包んでいる丈夫な袋状のもの、またはゼリー状や泡状物質のもので、卵を乾燥から守ったり、外敵から保護したり、受精を誘導したり、卵同士の接着や他の物に付着させる役割があります。卵嚢は卵管からの分泌物ですが、これによって卵を守っているのです。

※参考
両生類の卵検索表 [8] 

※卵膜の層状構造は、一次卵膜(卵黄膜、卵細胞固有で卵自身が分泌し、薄く卵表面に密着する膜)、二次卵膜(コリオン、濾胞細胞が分泌するタンパク質の膜)、三次卵膜(卵巣外で形成される、ゼリー層、卵殻、卵白など)に分類することも出来ます。

【爬虫類の卵膜(卵殻)】
ご存じのように、硬い殻の卵を産むもの(カメ、ワニ、ヤモリの多く)と、皮革のような柔らかい殻の卵を産むもの(ヘビ、トカゲの多く)とがあります。
どちらも成分的にはよく似ていて、表面は炭酸カルシウムによって形成された卵殻です。それが緻密な結晶になっているのが硬い卵、繊維状の卵膜に炭酸カルシウムが散在しているものが柔らかい卵です。

両者の違いで大きいのは水分の出入りです。
硬い殻は炭酸カルシウムが密な結晶なので、ほとんど水分は失われず、孵卵にも外からの水分はほとんど不要です。一方、柔らかい殻は隙間だらけなので、容易に水分は蒸発します。そこで柔らかい卵は外から水分を補給しながら成長します。ヘビやトカゲの卵は、浸透圧の仕組みで外部から水分を吸収し、成長にしたがって大きく膨張していきます。

爬虫類の卵膜・卵殻は、水辺から離れた環境、つまり「乾燥」に耐えられる構造を獲得していったのです。

※参考
新・両爬飼育入門コトハジメ [9]

【鳥類の卵膜(卵殻)】
鳥類の卵の構造についは、過去のエントリーがありますので、コチラをご覧ください。
鳥類の生殖の秘密 [10] 
卵の殻はどうやってできる? [11] 
幾重もの殻、膜、卵白などに包まれ、卵を保護しながら代謝や呼吸を調節する、卵としてのひとつの完成形(?)といっていいかもしれません。

※参考
ウィキペディア 鶏卵 [12] 
たまごの構造と各部の役割 [13]たまご博物館 [14]より)

卵の膜の進化史を辿るうえで、もうひとつの注目点は「羊膜」です。
羊膜が陸上での繁殖を可能にした [15] 

この羊膜によって、外界の環境(変動)から胚を保護することで、生息域を飛躍的に拡大することが可能になりました(羊膜を持たない魚類や両生類の卵は、外界の水が胚の周囲を循環することで排泄物の除去やガス交換を行い、発生の環境を維持)。
また哺乳類では、羊膜の一部が胎児性胎盤となり、子宮壁の変化した母性胎盤と接着して、胎盤を形成する進化を遂げています。

★生物はその進化の歴史のなかで、海水、淡水、水辺、陸上(乾燥地や寒冷地まで)と、多様な環境に住むことを可能にしてきましたが、その影には、この卵膜や羊膜が自在に進化していったことがあると言えます。
卵膜の役割は実に多彩で、卵やそれから発生する胚の保護であることに加え、受精の際の精子との間の種の認識、選別にも関わっています。更に、卵膜は発生過程で利用され尽くされ、孵化を迎えます。

卵膜の機能は驚くばかりですね


※さらに詳しく知りたい方はコチラへ
卵の構造 [16]  
卵膜の分類 [17]

[18] [19] [20]