(上:カモノハシの授乳 中:カモノハシの子供が直接乳腺からしみ出る母乳をなめる図 下:ディキノドンの授乳イメージ)
<『哺乳類型爬虫類』 金子隆一著 朝日選書 1998年9月 より引用>
以前、追跡したカモノハシという動物を覚えてらっしゃいますか
カモノハシが哺乳類に分類されている理由は、産後に授乳(哺乳)を行うからだそうです
哺乳類しか行わない哺乳行為についてネットや書籍でいろいろ調べてみると、なんと、乳腺は汗腺から派生しているとのことです
そこで、今回は、汗腺⇒乳腺についてレポします
その前にいつものやつをお願いします
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●汗腺って何?
爬虫類にはなく、哺乳類の特徴であると言われる汗腺には、アポクリン腺とエクリン腺の2系統があるそうです 🙄
それぞれの特徴は、
①アポクリン腺
・体臭線(水分を殆ど出さないフェロモン系)の分泌を行う。
・成分はエクリン腺に比べて塩分が少なく、タンパク質、脂質、糖質、アンモニア、ピルビン酸、鉄分で構成され、乳白色で粘り気がある。
②エクリン腺
・人間のほぼ全身の体表面に分布。
・人間が出す汗の殆どはこのエクリン腺からの汗(体温調節の機能)。
・成分はアポクリン腺に比べて薄い。
・比較的、皮膚表面から浅いところに位置する。
・成分は99%が水、残りは塩分、カリウム、カルシウム、尿素、アンモニアなど。
アポクリン腺とエクリン線とでは、アポクリン線の獲得の方が進化上先行しています
現在の多くの哺乳類でも、ほぼ全身にこのアポクリン腺が分布しており、エクリン腺を獲得している哺乳類は、ごく一部の高等動物だけなのだそうです。 (ヒト、霊長類の一部)
また、哺乳類の乳腺はこのアポクリン腺から派生したものであると考えられています
※ヒトのアポクリン腺は個人差があり現在、腋や陰毛部等に一部残存しているのみですが、腋のアポクリン腺存在部にまれに乳腺組織である「副乳」があることが知られています。さらに、このアポクリン腺は女性の乳輪部にも存在しているようです。
●汗腺の起源はいつごろ?
今から2.6億年前、先哺乳類(単弓類)にエステメノスクスという古生物がいました 😮
(エステメノスクス 川崎悟司イラスト集より引用リンク [4])
彼らの皮膚の化石から、毛穴とも違う何らかの腺の跡らしきものが、点々と認められたそうです 恐らく、これは汗腺で、この頃から彼らはすでに汗をかくという能力を身につけていたのではないかと言われています
ここで少し踏みとどまって、汗腺の役割について考えてみたいと想います
わたしたち人間は、暑いとき汗をかきます
汗は、蒸発する時の気化熱によって体温が奪われ、涼しくなるという体温調節機能の役割を果たしています
しかし、汗は体温調節機能だけのためとは限らないのです
考えてみると、現在われわれの周囲の哺乳類を見ても、汗をかく動物の方が珍しいのです
私達になじみのある動物で汗をかくのは、ヒトを除けばいくつかの類人猿、ウマくらい・・・
確かに、イヌ、ネコ、ブタ、ゾウ、キリン、ラクダ、シカなどが、全身汗まみれになっている姿など見たことがないですよね
実際には、イヌやネコなども足の裏には汗腺が分布されているのですが、それは滑り止め程度の意味しかなく、体温調整とは無縁らしいのです
多くの哺乳類は、暑くなれば水を浴びたり木陰で休むことによって体温を下げます。ゾウのような巨体を持つ生き物は、耳を大きく広げ、それをばたばたと動かしてラジエーターのかわりに使います ウサギも同様
カンガルーなどは、体によだれを塗りたくって体を冷やすそうです 🙄
エステメノスクスの皮膚に汗腺が認められたものが、本当に汗腺だとしたら、それは間違いなくアポクリン腺であり、その機能は体温調節機能ではなく、群れ行動を補佐したり、性フェロモンを分泌したり、あるいは哺乳のために使われたものだと考えられます。
●哺乳行為はいつごろから始まったの?
同じく今から2.5億年前、先哺乳類(単弓類)にディキノドンという古生物がいました 😮
(ディキノドン 川崎悟司イラスト集より引用リンク [5])
ディキノドンは、哺乳の原型にあたる行動をとっていたと言われています
脂肪分の多い汗 を分泌して、赤ん坊たちにそれを舐めさせていたそうです 😀
現在でも、カモノハシやハリモグラのような単孔類は、乳房というものを持たず、皮膚の表面に点在した乳腺から染み出る母乳を赤ん坊に舐めさせています
●哺乳行為(汗腺⇒乳腺の進化)はなぜ行われるようになったの?
これまで見てきたように、先哺乳類(単弓類)の汗腺の獲得と発達は、恒温性の獲得が寒冷適応である事から考えると、並行して体温調節(体温を下げる)機能を獲得したというよりも、別の目的を優先させた機能である可能性が高いのではないかと考えられます
たとえば、体皮保護・保温・縄張り・性闘争などなど・・・
一方、汗腺から派生した乳腺→哺乳行為も、未熟児で生まれてくる赤ん坊に対して栄養分を与えるのみならず、免疫力を伝達する意味合いが強いのではないかと考えます
例えば、哺乳類がおかれた環境は、
①空気中(水中ではない)→ウイルスが伝播しやすい
②恒温→ウイルスが棲みつき繁殖しやすい
これらの細菌やウイルスなどの目に見えない外圧に対して、抵抗力を強化する必要があった。この機構を身に付けたのが哺乳類であり、母親の体に乳腺ができて、産後に授乳(哺乳)するようになったと考えられます
「哺乳する」ことで、子孫にウイルスに対する免疫力を身につけさせ、その子供が得た免疫力をその子孫に哺乳するサイクルによって免疫力を強化・塗り重ねる方法を獲得したと考えられないでしょうか
今回はここまで
次回は、両生類から哺乳類への進化過程では欠かせない、卵の進化史をお送りします
お楽しみに~
以上、やっさんがお送りしました