- 生物史から、自然の摂理を読み解く - http://www.seibutsushi.net/blog -

「記憶」を持つ粘菌

%E7%B2%98%E8%8F%8C.jpg
多細胞生物の起源を解き明かして行く上で、粘菌の研究が進んでいます。この粘菌は不思議な生物で、植物のように胞子を出して子孫を増やす一方で、動物のように移動します。
この粘菌が注目される理由は他にもあって、飢餓状態になると10万個ほどのアメーバが集合し、ナメクジのような多核体となります(!)。
しかし、集合しただけでは飢餓状態を突破できるわけではありません。全滅です。
集合して多細胞体となった粘菌はどうするかというと、胞子となる細胞と胞子を放出するための細胞に分化し、子実体を作り出し、胞子を放出します。つまり、ここでは生殖細胞と体細胞の分化、つまり多細胞生物の基礎を見ることができます。
不思議生物-細胞性粘菌の謎にせまる [1]
分化⇔統合(=組織化)が多細胞生物の進化史 [2]

この不思議な不思議な粘菌が、実は「記憶」を持っているという興味深い記事がありました。
The Swingy Brain 「Rhythms without the Brain 」 [3]
ブログランキング・人気ブログランキングへ [4]
にほんブログ村 科学ブログへ [5]
[6]


乾いた環境にすることを、例えば1時間周期で三回繰り返す。その時、その1時間周期のリズムにあわせて、粘菌の動きが遅くなる。さらにその後、粘菌がどう動くか調べたところ、まるで1時間周期のリズムを覚えたかのように、同じリズムで動きを変化させる(遅くする)ことがわかった。環境変化は実際には起こっていないのに、周期的な変化をまるで期待しているような動きを粘菌がみせた。

01shinsei-nenkin.jpg11saibousei.jpg
環境変化のリズムを記憶した状態での行動とは、同じ環境変化が起こることを予測しながら行動していることになります。人間から見れば、これは環境変化を予測しながら行動しているように見えるでしょう。
過去を“記憶”するのは生命原理のひとつ [7]です。粘菌(アメーバ)の時代から、一つ一つの細胞が外部環境に適応し続けるために記憶を持っています。この外部環境(の変化)の「記憶」が、その後の進化で誕生する「脳」の最初の出発点かもしれません。

ないとう@なんで屋でした [8]

[9] [10] [11]