- 生物史から、自然の摂理を読み解く - http://www.seibutsushi.net/blog -

脊椎動物の免疫系進化

☆ 脊椎動物の免疫進化 ☆
脊椎動物の免疫進化の流れは、無顎魚類(ヤツメウナギやメクラウナギ)→硬骨魚類(食卓でお馴染みの魚達)、軟骨魚類(サメ等)→両生類→爬虫類、鳥類→哺乳類、となっているようです。厳密には哺乳類は鳥類から進化したわけではないので必ずしも上記のような一直線ではないですが、免疫機能の進化の流れが伺えます。
☆ 無脊椎動物⇒脊椎動物への進化 ☆
脊椎動物とそれまでの無脊椎動物の違いは読んで字のごとく、脊椎のあるなしが一番の違いです。脊椎の役割って・・知ってました?私はついこの間まで頭を支える柱の役割をしているのかと思ってました。もちろん人の場合その役割もありますが、脊椎には神経の束が通っているんですね。ここがポイントです。
神経は細胞間の情報伝達ルート。指令役・統合役の脳と、各細胞たちとの情報伝達のルートが背骨に中枢神経 [1]として通っているのです。
脊椎動物への進化とは、細胞間の組織化の進化ともいえます。細胞間の分化と統合の高度化は生物進化の普遍法則ですが、各機関を担う体細胞の仕事能力向上と、それらを統合し指令を発する中枢脳の進化と、情報伝達ルートである神経系の進化が一体的に行われたのが脊椎動物です。無脊椎動物と脊椎動物の中間形態である脊索動物 [2](ナメクジウオやホヤ)には、神経索や脳の前躯体などにその過渡形態が伺えますね。


☆ 脊椎動物の免疫機能 ☆
脊椎動物以降の免疫機能を見るとT細胞やB細胞などの獲得免疫(特異性免疫)系の進化が特徴的に現れています。以下『一目でわかる免疫学第4版 出版:MEDSi』から要点を抜粋してみると、
無顎魚類  リンパ球集簇 抗体応答
最も古くから生存していた脊椎動物。咽頭等に集積したリンパ球系細胞と進化上初めて出現した確固たる抗体免疫グロブリン(Ig)が認められる。無顎魚類にはMHCがなく恐らくその結果としてT細胞を欠いている。
軟骨魚類  脾臓 胸腺 B細胞 T細胞 形質細胞 IgM(18S 7S) 補体(古典経路)
軟骨魚類において最初に出現したものは、胸腺、MHC、二次抗体応答、形質細胞であり、この点において画期的進歩を遂げている。
硬骨魚類  T細胞―B細胞間相互作用 NK サイトカイン
マイトジェンに対する応答の違いや、抗体産出における細胞間の共同作用があることから、Tリンパ球、Bリンパ球機能の分離が始まっている事が示唆される。少なくともこの段階にサイトカイン(例えば、IL-2やインターフェロン)が存在していることが示されている。
両生類   リンパ球 GALT MHC 骨髄 IgM IgG
独立したIgクラス(IgG)がはじめて出現している。形態形成の過程において、成体で出現する新たな抗原に対して特異的免疫寛容が生じる。リンパ節、腸管関連リンパ組織、骨髄における造血もこの段階からはじめて出現する。
爬虫類   IgM IgG
鳥類    嚢 胚中心 Ig-T細胞 IgM IgG IgA
Bリンパ球を総排出腔近くの特異器官であるファブリキウス嚢でしかつくらないことが、特有の珍しい特徴である。 抗体の多様性を獲得する機構もまったく異なり、遺伝子変換と呼ばれる過程を含む多少葉性の大きな胸腺がある一方、通常のリンパ節はない。
哺乳類   Ig多様性 IgM IgG IgA IgE IgD
多様なIgクラスとサブクラスとMHC抗原をもつことこそ、他のエフェクター機能にもまして哺乳類特有の特徴といえる。
◆◆◆◆
またこれら獲得免疫系と神経系の働きには共通する部分が幾つかあります。
以下関連する記事を引用すると、

副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRH)という物質が、神経系と免疫系を繋ぐ物質の一つとして知られているようです。
視床下部等で分泌されるCRHは、脳内の血流によって下垂体に運ばれ、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を分泌させる働きをもっています。さらに、ACTHは副腎に運ばれ、ストレス抵抗性を増すステロイドホルモンの一種であると同時に強力な免疫抑制剤でもある副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の生成を促進させます。
逆に、CRHの分泌ニューロンは免疫系細胞から分泌される伝達物質(コルチゾールもその一つ)の標的になっていて、交感神経系や血管を通じて、神経系と免疫系の間で相互フィードバックが行われていまするいネット [3]

免疫系の抗体は、構造がよく似た数多くの分子とスーパーファミリーを形成しています。このスーパーファミリーの分子の多くが接着分子としてはたらきますが、神経系にもいくつかの免疫グロブリンスーパーファミリー分子が存在しています。
例えば、マウスのT細胞にあらわれるThy-1抗原は、ヒトを含む動物の脳神経細胞に多く検出されます。また免疫系の接着分子ICMA-1に似たNCAMが神経鞘細胞にみられるようです。
 さらに、グリア細胞などの神経支持組織の細胞は、潜在的な免疫活性を持ちます。
通常は、免疫系の細胞や抗原の脳への侵入は血液脳関門によって制限されています。しかし、血液脳関門が破られ細菌やウィルスが侵入すると、グリア細胞などが食細胞として働きます。さらに関門を越えてリンパ球が脳内に入ると、グリア細胞によってT細胞に抗原が提示され、獲得免疫系が稼動します。るいネット [4]

体細胞の仕事能力向上と、統合機能を司る脳の発達と、情報伝達の神経系の発達によって、脊椎動物は多様な能力を獲得し新たな環境へと進出することができました。しかし新たな生息環境への進出は同時に新たなウイルスや細菌などの抗原との戦いでもあります。例えば、多産から少産化戦略は種存続の為感染からの防御機構を高める必要性も出てきたであろうし、体細胞の高度化は、自身の不要な部分を処理する必要性も高まってきたであろうし、恒温化にともなって抗原にとっても最適環境となりより防御機構を高める必要性も出てきたであろうことは容易に想像できます。
 
脊椎動物以降、獲得免疫系の進化が訪れたのは、新たな外圧に適応する為、神経系で築きあげた情報伝達機構を土台にして獲得免疫系を築きあげたのだと推測できます。 
(免疫グロブリンスーパーファミリーに属する接着因子は既に節足動物のような無脊椎動物にも存在しているように、神経系と免疫系は常に平行して進化してきたとみるのが正確かもしれないが)
☆ 哺乳類以降の免疫機構 ☆
最後に哺乳類、とりわけサルと人類を免疫進化という視点で見てみます。
哺乳類の特徴の一つに体内保育がありますが、体内にいる子供は母親からみれば自分とは少しだけ違う他者になります。免疫機能は同類を認識し異物を排除する機構ですから母親の免疫機構は体内の子供を排除する事になります。それは子供にとっても同じで、母体内で母親から免疫機構を受け取れば子供も母親を排除する事になります。そこでとった戦略が体内保育中の免疫機構の低下と、免疫機構の産後の受け渡しです。
 
妊娠中は母体の免疫機構を低下させ子供を排除しないようにし、かつ子供にも免疫機構の受け渡しに一定制御をかけ、産後に授乳や餌の口渡しを通して子供に免疫機構を引き継いでいくという方法をとっています。初乳にはたくさんの免疫物質が含まれていますが、粉ミルクより母乳が重要なのは、ここからも伺えますね。
また、メスの生殖負担はここでも大きくなり、その分オスの闘争役割を特化させメスを守るという戦略も見て取れます。
 
◆◆◆◆
共認機能を獲得し集団や組織を共認によって統合することができた真猿以降は免疫も一段階変化があります。チンパンジーはある毒素に対してはこの薬草を食べれば治るというようなことが群れ内部で共認されており受け継がれているようです。これは人間でもそうですね。風邪をひいた時はしょうが汁を飲んだり塩を塗ったり、草負けしたら小便を塗ったりと、先祖代々から受け継がれる知恵によって体を守ってきています。体の機構を進化させるのではなく、集団で共認されてきた内容を高度化し後世に引き継いでいく事で種の存続を果たしているといえます。
 
◆◆◆◆
さらに、人類の免疫機構は意識によって支配されているように思います。病は気からともいいますよね。心も充足し頭もスキッと統合できている時ほど病気にはならないものです。(確か、白血球中の細胞比は視床下部⇒自律神経系に支配されていると、どこかで聞いたことがありますが。。定かでなくてスイマセン)
近年の自己免疫疾患(アレルギー)の増加なども、意識と免疫機構の関連性に注目していく必要がありそうです。近代科学では解明されていないが、意識の統合状態や充足状態が免疫機構を働かせる仕組みは確実に存在しているのでしょう。
共認治癒力① [5] 
共認治癒力② [6]
 
以上長文にお付き合い頂きありがとうございます。

[7] [8] [9]