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両生類から哺乳類への進化

最古の哺乳類「アデロバシレウス [1]」 以下の画像は「古代の住人 [2]」からお借りしました。
aderobasireusu.jpg
哺乳類が登場したのは、恐竜の登場とほぼ同じ三畳紀です。恐竜が登場して絶滅した中生代(三畳紀、ジュラ紀、白亜紀)は有名ですが、それ以前に哺乳類が両生類からの進化を進めていた時代がありました。
デボン紀に登場した両生類が、石炭紀、ペルム紀、三畳紀を通じてどのように哺乳類に進化してきたのか振り返ってみます。
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■有羊膜類から単弓類の登場
デボン紀に登場した両生類から、石炭紀に入ると有羊膜類が登場します。両生類、有羊膜類の話は次に譲りますが、この有羊膜類からさらに、単弓類と双弓類が登場します。単弓類が哺乳類の祖先、双弓類が爬虫類の祖先です。単弓類と双弓類の違いは、頭の骨の形状で、側頭窓と呼ばれる顎の筋肉がくっつく穴が左右1対あるのが単弓類、左右2対あるのが双弓類です。
最古の単弓類「アーケオシリス [6]」と最古の双弓類「ペトロラコサウルス [7]
a-keosirisu.jpg petororakosaurusu.jpg
あまり知られていませんが、ペルム紀はこの単弓類が繁栄した時代なのです。単弓類の中から草食や肉食などの様々な種類が登場し、哺乳類へとつながる機能を進化させていきます。哺乳類の特徴である、体温調整機能、授乳、胎生(カモノハシの卵生は例外)等の機能が進化史上どのあたりで獲得されたかも見ながら哺乳類への進化の歴史を振り返ってみます。
進化系統樹もご覧ください
進化系統樹(両生類→哺乳類)ファイルをダウンロード [8]
■哺乳類の骨格を形成した盤竜目
単弓類で最初に登場したのが、盤竜目に分類されるワニのような姿の種類です。次代はペルム紀の前期で、地球全体が非常に寒い時期でした。盤竜目は当時の赤道付近だけで暮らしていたようです。代表的なのがエダフォサウルスで、背中の大きな帆で太陽の光を受けて体を温めて行動していたと考えられており、この時代は体温調整機能を獲得していないことが分かります。姿は恐竜と間違われるような姿ですが、解剖学的な特徴は、爬虫類よりも人類に近いそうです。
エダフォサウルス [9]
edafosaurusu.jpg
■哺乳類的な特徴を獲得した獣弓目
ペルム紀の後期には、地球もかなり暖かくなり、内陸では乾燥化が進んでいきます。この時期に登場するのが獣弓目と呼ばれるグループです。哺乳類的な特徴の多くはこの獣弓目の段階で獲得しています。脚の付き方や歯の特徴、さらに恒温性を獲得したのも獣弓目の段階だといわれています。
■体温調整機能
発汗機能を獲得したと考えられているのが、獣弓目ディノケファルス亜目のエステンメノクスです。皮膚の化石が残されており、無数の腺が発見されています。さらに、体毛を獲得し寒冷地で冬眠せずに活動できた始めての生き物といわれているのが、獣弓目の中でもより哺乳類に近い獣歯亜目に属するゴルコノプスです。
エステンメノクス [10](獣弓目、異歯亜目) ゴルコノプス [11](獣弓目、獣歯亜目)
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■授乳の始まり
授乳の始まりは、獣弓類の異歯亜目に属するディキノドン(ペルム紀後期)の仲間が、汗腺を発達させ、栄養分のある汗を流し、子供になめさせたのが最初(授乳の起源)といわれています。現在も存在している単孔類の授乳はこのような形態です。
ディキノドン [12]
dhikinodon.jpg
■ペルム紀末の大絶滅
ここまでは順調に繁栄してきた単弓類でしたが、ペルム紀末期の大絶滅で単弓類は殆どが絶滅します。この大絶滅では陸上の動植物の95%が絶滅したといわれています。このときに生き延びた単弓類は比較的原始的なディキノドン類と哺乳類の直接の祖先となるキノドン類の2種類だけです。
この2種類はどのようにして大絶滅を生き延びたのでしょう。ペルム期末の大絶滅の原因は、スーパープルームと呼ばれる巨大な超高温のマントルの塊が沸きあがってくる現象です。スーパープルームが大噴火を引き起こし、温暖化がメタンハドレートに含まれたメタンを開放し、地球の環境は超高温乾燥化、酸素濃度の低下(30%→10%)が進みます。
■穴居生活と呼吸機能
このような環境の激変に対応したのが、穴居生活と呼吸機能の増強だったようです。大絶滅を生き延びた、ディキノドン類のリストロサウルスは、穴の奥で化石が発見されており、地面に穴を掘って巣を作る能力があったようです。また、内鼻腔が短く胸郭が大きいことから酸素を効率的に取り込めたと考えられています。穴を掘るという行為は息を止めての作業になるため、効率的に酸素を取り込む機能を発達させたようです。
リストロサウルス [13](ディキノドン類) トリナクソドン [14](キノドン類)
risutorosaurusu.jpgtorinakusodon.jpg
これに対して、哺乳類の直接の祖先になるトリナクソドン(キノドン類)は横隔膜を発達させることで低酸素時代に対応しています。肋骨が肺まででおわり内臓を覆っていないことから呼吸に横隔膜を使う腹式呼吸をしていた事が分かります。また、口腔と鼻腔をわける2次口蓋が発達し、物を食べたり口を閉じているときも呼吸が出来るようになってきています。
トリナクソドンは他にも、丸まって寝ている化石が多く体温を保つ必要があったと推測され恒温性を獲得していたこと、頭骨の化石からひげの生えていた後が見つかっており体毛があったこと、親子で寄り添って寝ている化石がしばしば発見されることから授乳をしていたことなど、哺乳類の多くの特徴がこの段階でほぼ出来上がっていると考えられています。
■哺乳類の登場と胎盤の獲得
ペルム期末の大絶滅を生き延びたディキノドン類は三畳紀末に、キノドン類は白亜紀末に絶滅し、単弓類で現代まで生き残っているのは哺乳類だけになりました。哺乳類は小型化し聴力を発達させて夜の環境に適応し、その結果脳も発達させることになります。哺乳類の解剖学的な特徴は顎の骨の一部が耳骨となっていることです。哺乳類が白亜紀末の大絶滅を生き延びられたのは、小型化により環境適応能力を高め、環境の激変に対応できた体と考えられています。
小型化に加えて哺乳類の大きな特徴である胎生は、化石からは哺乳類の登場以降に獲得されたと考えられています。最初に胎生を獲得したと考えられているのがエオマイアです。胎生が有利なのは、酸素と栄養の供給です。卵では殻から浸透する空気から酸素を吸収するのに対して、胎生の場合は胎盤を通じて母親が酸素と栄養分を子供の血液に直接供給することが可能です。ペルム期末の低酸素時代に適応するために、哺乳類は胎生を獲得したと考えられています。
エオマイア [15](哺乳類・有胎盤類)
eomaia.jpg
■胎生の獲得はさらにさかのぼる可能性が高い
哺乳類の特徴で、化石からは最後に獲得されたと考えられている胎生ですが、もっと早く獲得されていた可能性もあります。現生の魚類や爬虫類には卵生、卵胎生、胎生が混在しています。卵生から胎生への進化は必ずしも胎生を後で獲得したというような進化ではなく、平行進化の可能性もあります。
胎生のメリットは低酸素への適応よりも、寒冷地への適応と考えた方が自然です。低酸素時代は三畳紀の特殊事情ですが、寒冷地は単弓類が進化した全ての時代にありました。両生類から羊膜類・単弓類へ進化していく過程の中で、寒冷地適応の為に胎生を獲得したのが哺乳類の祖先ではないかとも考えられます。哺乳類の特徴である、恒温性、穴居生活も寒冷地に適した適応手法でもあります。
哺乳類の進化は、寒冷地適応が先にあり、そのおかげでペルム期末の大絶滅も生き延びることが出来たとも考えられます。
参考
卵生~卵胎生~胎生への進化 [16]
両生類~爬虫類・哺乳類の進化系統樹 [17]

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