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卵子から消えた中心体

植物細胞には中心体がないのに対して、我々、人類を含めた動物細胞には中心体があります。
さらに、人類の「受精卵の分裂の分裂極は精子が持ち込んだ中心体に由来する」ことが提唱されています。

精子と中心体の関係については、以前にも『精子と中心体』に記載されており、

ヒトの中心体は精子由来らしい。
卵子では中心体が消滅しているのだそうだ。

とあります。

そこで、今回は卵子と中心体の関係を扱ってみたいと思います。

仮に、卵子に中心体が残っていた場合にはどうなるのでしょうか?

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精子にも中心体があり、卵子にも中心体があるとすると、受精卵には中心体が二つ存在することになり、ここで両者が複製させると、多極分裂が起こり異常が発生するはずですが、実際には2極分裂しか起こっていません(片方しか複製されません)。

つまり、「受精卵の分裂の分裂極は精子が持ち込んだ中心体に由来する」という提唱に立ち戻ると、卵子の中心体が消滅したか、あるいは機能しないことになります。

これに関する記述(『ヒトデ卵における中心体の継承機構』 [4])があったので、長くなりますが以下に引用します。

●第二減数分裂では中心粒の複製が起こらない
0pb卵と1pb卵の違いは中心体に原因のあることが推測されます。
~・中略・~
体細胞分裂とは異なった中心粒の挙動を明らかにしてくれました
(1)第一減数分裂のそれぞれの分裂極には中心粒が一対存在するが、(2)第2減数分裂の分裂極には1個しか含まれない、(3)第一極体には中心粒は2個含まれるが、(4)第二極体には1個しか存在しない。すなわち、第二減数分裂では中心粒の複製が起こらない
従って、卵減数分裂では、染色体と同様に、中心粒の数も減数することになります。

●中心粒の異質性
極体阻害の結果、0pb卵では4個の中心粒が、1pb卵では2個の中心粒が細胞内に残されます。2回の核分裂完了後の前核期に中心粒を調べてみると、0pb卵には2個、1pb卵には1個しか残っていません。すなわち、半数が失われたことになります。

第一卵割では、0pb卵の双極の分裂装置の中心体と、1pb卵の半紡錘体の中心体には、それぞれ一対の中心粒が存在しました。つまり、前核期に残った中心粒は複製能を保持していることになります。正常に減数分裂を完了した成熟卵は分裂をしませんので、これら複製能をもつ中心粒は極体に捨てられことが推測されます。

実際に、第一、第二極体の中心体を顕微操作で成熟卵に移植して分裂極形成能を調べたところ、第一極体中の二つの中心粒の一つだけ、第二極体の(一つの)中心粒が複製能をもっていることが明らかになりました。
第一減数分裂の前期で停止している卵核胞期の未成熟卵母細胞は、中心体の複製を済ませ、2対4個の中心粒をもっています。それぞれの中心粒対は、複製能をもち減数分裂完了後も生き残るものと、減数分裂完了後には消滅運命にあるものとの異質の二つから構成されていることになります。
これらの中心粒は2回の減数分裂で、第一極体には複製能をもつものと、消滅運命にあるものが一つずつ、第二極体には複製能をもつものが一つ、成熟卵には消滅運命のものが一つ、それぞれ遺贈されることになります。

つまり、未成熟の卵母細胞の中心体/中心粒は等価ではなく、分裂をする時には同じ機能を持ったものが2分割される訳ではないということです。
そのようにして、成熟する卵からは中心体が消滅していくことになります。

卵子の中心体の消滅は、卵細胞の単為発生を防ぐためにありますが、その本質は、『生物がオスとメスに分かれたのは、なんで?』 [5]でも述べられているように、卵細胞の役割でもある栄養を蓄積することに特化したからであったと思われます。

お付き合いありがとうございました。m(_ _)m

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