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1000万年後、ヒトはY染色体を失ってしまう!?

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>今後は、なぜ相同染色体からX染色体とY染色体に分かれていったのかを追求していきたいと思います。
arincoさんの提起を受け、染色体の歴史を調べてみたいと思います。
その前にプチっとお願いします。
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● X染色体とY染色体に分かれていったのはいつから?

われわれの祖先がX染色体とY染色体を持つようになったのは、約3億年前に爬虫類から分かれ哺乳類へと進化したころらしい。徳島大学の中堀教授は、その起源について次のように語る。
「『X染色体とY染色体は、もともと1対の常染色体だたものが、分かれて進化したものである。』という説を提唱するのが、日本人生物学者の大野博士です。ゲノム科学から得られた多くの結果はこの説を支持しており、広く生物学者の間で信じられている。」

ニュートン 2006-2 より引用
ここで生物の進化をまとめてみると・・
35億年前・・原核単細胞生物登場
10億年前・・始原多細胞生物登場
3億年前・・X染色体、Y染色体の分離

となります。
ところで、多細胞動物の生殖系進化の3段階ステップは、
 Ⅰ 保存と仕事の分化(殖・産分化)
 Ⅱ 精卵分化
 Ⅲ 雌雄躯体分化

です。この内ⅠとⅡについては、多細胞化とほぼ同時に配偶子(生物の生殖細胞のうち、接合して新しい個体を作るもの)が「精子」と「卵子」に分化しています。
そしてⅢ雌雄躯体分化がはっきりと確立されるのが、X染色体とY染色体の分離がされる3億年前という関係にありそうです。(生物史の時間軸の中では比較的最近?のことなんですね)
なおこの10億年前から3億年ころまでは、精卵分化はされながらも、躯体は未分化の状態が続きます。雌雄同体であったり、温度依存によりオスメスが決定されたり、体格差により性転換したりする種が混在していきます。
●雌雄躯体分化が起きたのはなんで?

ポイントはオス・メスの躯体が分化していく背景にある
 摂取機能の高度化⇒種間圧力上昇・・・
この循環的な外圧上昇構造により、体細胞系列の高度化が要請されるのと同時に、各々の配偶子、生殖巣、生殖器etcを緻密につくりあげるためには、精子をつくる躯体(=オス)と卵子をつくる躯体(=メス)を分化させたほうが合理的なんですね。
さらに、動物ゆえの種間圧力⇒摂取能力高度化・・・に対応するため、幼体保護と防衛力上昇の要請が加わります。
これは必然的に(保存性に特化した卵子を持つ)メスの生殖負担の増大をもたらします。そして、それとバランスするようにオスの闘争負担が増大させる方向へつながるのですね。
これは脊椎動物の進化史とも符合します。
これらにより、動物のオス・メスの躯体は分化していったと考えられる。

ブログdeなんでやhttp://blog.goo.ne.jp/nande_ya/e/7a4db9204ce83d3843b9728c2b07aec0
生物数十億年の歴史の中で、外圧に適応していくために役割分担と調和が塗り重ねられてきました。
これこそがオス・メス分化の真髄!
オスという役割(存在)、メスという役割(存在)があわさってはじめて、外圧に適応的たり得たし、種をつなぐこともできたのです。
●Y染色体は退化し続けている!?
さてこのようにオスメス分化を司る貴重なY染色体。ところが生物史上Y染色体は衰退の一途をたどっているという、Y染色体を持つ男性にとって、思わずギョ! としてしまう分析がある。

現在までの3億年間に、X染色体とY染色体はそれぞれ独自の進化を遂げてきた。中でも重要な変化は、X染色体に比べて、Y染色体はいちじるしく小さくなってしまったという点だ。Y染色体の退化が進んだ原因について、松田教授は次のように語る。
「まずY染色体上に、SRYのような精巣決定遺伝子が出現したことをきっかけに、XとYはすこしだけ姿が異なるようになりました。その後、Y染色体の一部がひっくり返ったりして構造の変化がおき、XとYの違いは徐々に大きくなっていったようです。」
染色体の違いが大きくなってくると、たがいに遺伝子を交換するための交差がほとんどおきなくなる。とくに、メスの卵形成の際に同じ染色体間で交差が起きるX染色体はまだよいが、まったく交差がおきないY染色体は、とても孤独な存在になってしまった。遺伝子の交換ができないと、突然変異が蓄積していくため、染色体はどんどん滅びていくのである。

ニュートン 2006-2 より引用
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X染色体とY染色体の大きさの違いは上図にあるとおり。23番目の左の大きいのがX染色体で右の小さいのがY染色体です。このような大きさの違いが変異の源ともいえる交差を困難にしるのです。
ではこれからY染色体はどのようになっていくのでしょうか?

哺乳類の誕生以降、Y染色体は衰退の一途をたどっている。現在ヒトではX染色体が1098個の遺伝子を持っているのに対し、Y染色体はもはや78個の遺伝子しかもっていない。時間とともにY染色体が退化していくなら将来ヒトのY染色体はいったいどうなってしまうのか?
「Y染色体上に乗った遺伝子数の減少速度から計算すると、ヒトのY染色体は、1000万年後に完全に失われてしまうだろう」
Y染色体が消滅したら、女性はともかく、男性にとっては一大事である。「そうなったら、男性は絶滅してしまうのではないか?」と心配したくもなってくる。松田教授は、次のように答える。
「仮にY染色体を失ったとしても『男がいなくなる』という事態にはならなくて済みそうです。例えば、奄美地方にすむトゲネズミの1種は、すでにY染色体を失ってしまいました。しかし、それでも立派にオスとメスが存在しています。性というシステムは、ある性染色体を失ったくらいで消滅するような、単純なものではないのです。」

ニュートン 2006-2 より引用
うーんなんとも複雑な心境ですね。 🙄 最後の「性というシステムは、ある性染色体を失ったくらいで消滅するような、単純なものではないのです。」というくだりは、生物史の「殖・産分化」と「精卵分化」のことまで含めれば納得のいく論調です。むしろY染色体の優位性をもってことさらオスを正当化する男尊女卑や父系観念のほうが旧い観念かも知れません。
ところでちょっと気になるのが、
>突然変異が蓄積していくため、染色体はどんどん滅びていくのである。
という部分です。
確かにY染色体には「遺伝子の不毛地帯」と呼ばれる「キナクリン染色領域」とよばれるものがあり、有効な遺伝子は存在しないと考えられています。
遺伝子が交換できない-突然変異が蓄積される-不毛地帯と呼ばれるキナクリン染色領域
これら3つはどのような関係にあるのでしょう?
引き続き追求してみたいテーマです。
nomura

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