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遺伝子の不活性化による形質変化

哺乳類は、3億年程前に原両生類(=地上四肢動物)から分かれた単弓類の末裔である、その後、様々な生存域に適応し、多種多様化していった。我々霊長類もまた、自然外圧の中で、現在の形質を獲得している。その変化に伴い、遺伝子はどう変わったのか?他の哺乳類と比べ、霊長類の遺伝子はどのくらい違うのだろうか?
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実は、霊長類特有の遺伝子は、ほとんど無そうだ。例えば、ヒトとマウスの遺伝子は99%同じ。医薬品等の実験にマウスを用いることで、ほぼ正確な評価・推測が出来るのはこのためだ。では、形質の違いをもたらしているものは何なのか?
DNAに書き込まれた遺伝子は、必ずしも全てを発現させているわけではない。活性化した部分が、個体の形質を決定し、残りの部分は、不活性化したままDNAの中に保存されている。遺伝子の部分的なON・OFFで種の特徴を形創っているわけだ。
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画像は関西電力HP [4]からお借りしています。
ヒトでは、150近い退化器官が知られている。体毛、犬歯、盲腸、尾骨、副乳の、縮小喪失などだ。猿と異なり、樹の枝が掴めなくなった足指も、退化器官の可能性が高い。ヒトの体毛の場合、希に体中に毛が生える「先祖返り」が確認されている。これはX染色体の長腕に位置する不活性遺伝子の活性化が原因であるとわかっている。
こうした「形」の違いだけでなく、「質」にも退化が見られる。原猿類は、自前でビタミンCを合成できるが、ヒトでは合成できない。これは、第8染色体上に存在するビタミンC合成遺伝子がヒトでは機能していないからだ。おそらく、日常的な食物から、採取出来た為、退化しても問題にならなかったのだろうと考えられている。
遺伝子の不活性化=退化が、自然外圧に適応的に働くことがある。遺伝子を入念に組み換えていくと言うよりは、それまでに積み重ねてきた遺伝子情報元に、活性化・不活性化することで、自然外圧に対し、適応的であるかどうか?挑戦しているのが生物であるように思える。その方が変異スピードが速く、同時に(以前の遺伝子も所有しているわけだから)安定的でもあろう。「進化」とは、そうした変化の中で適応できた形質なのだろう。

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