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X染色体の不思議

 こんにちわ。aincoです 。今回は、性染色体、とりわけX染色体の不思議について調べてみました。
 僕たちヒトの性染色体はX染色体とY染色体があり、男性の持っている性染色体はX+Y染色体、、女性の持っている性染色体はX+X染色体です。
 さて、このX染色体にはどんな仕組みがあるのでしょうか。
続きの前に
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 それでは、X染色体について見ていきましょう
①X染色体には免疫に不可欠な遺伝子が多く含まれてる。
 X染色体には、免疫機能に関わる遺伝子が多く含まれています。女性はX染色体を持っていますよね。女性の方が男性よりも遺伝的な病気にかかりにくいと言われていますが、その理由はX染色体にあったのです j女性はX染色体を2本持つことで仮に一本の染色体に異常をきたしてももう一本のスペアが働き、結果として伴性遺伝病が発症しにくくなると言うわけですね。逆にスペアを持たない男性は、持っているX染色体が異常をきたすと病気になってしまう。と言うわけです。
つまり、X染色体は「安定」をつかさどる性染色体だと言うことが想像できます。
②女性の細胞では、X染色体の片方を眠らせる 
 さて、この「安定」をつかさどるX染色体ですが、なんと女性はせっかく持っている2つのX染色体のうち一方を「不活性化」させてしまうのです。この不活性化した状態のX染色体は「バー小体」と呼ばれています。
 不活性化の時期は発生初期段階でランダムに決定します。そして一旦不活性化すると、一生不活性化したまま というわけです。
つまり、体の中に父親由来のX、母親由来のXが半々ずつ混じり合っている。
という事です。三毛猫を見たら分かりやすいと思います。三毛猫のメ毛が斑模様なのは、細胞毎に父親由来と母親由来の染色体のどちらかのみが働いているからなのです。
①と②を併せると
女性は細胞毎にスペアを持っているが、一方を不活性化させてしまう  しかし、細胞全体として父親由来と母親由来のX染色体が半分ずつ存在するので、一方の遺伝子に異常があっても片方が生き残るという戦略をとっていることが分かります。
□なぜ不活性化させるの?
 ここで疑問 に思うのは、なぜわざわざ不活性化させてしまうのか。という事です。細胞毎にスペアを取っておけば柔軟に対応できてよいではないか。と。
その理由は 雄と雌で遺伝子の量を同じにする為らしいのです。
総合研究大学院大学助手の佐渡 敬氏がX染色体の不活性化について研究されています。以下総研大ジャーナル9号 2006の記事から引用します。

X染色体とY染色体の間には、偽常染色体領域という特別な場所を除くと、相同性は認められない。 しかし、X染色体とY染色体は、もともとは相同な常染色体のペアであったと考えられている。

Y染色体に起こった機能の消失は、進化的に何らかの利点があったと思われるが、その結果、XY性染色体間の遺伝子の量に、著しい不均衡が生じることとなった。この不均衡を是正するために、X染色体を1本もつ個体と2本もつ個体の間で、遺伝子の量を補正する仕組みが進化したと考えられる。それが、X染色体不活性化という現象である。

興味深いのは、こうした補正(遺伝子量の補償機構と呼ぶ)が哺乳類に限ったことではないことである。他の生物種ではX染色体不活性化とは異なる仕組みで補正が行われ、X染色体上の遺伝子から転写されて作り出される産物の量が、ほぼ同等になるように調節されるのである。 ショウジョウバエでは、雄(XY)のX染色体の転写活性が、雌(XX)のX染色体の2倍に高められている。一方、線虫では、雌雄同体(XX)の各X染色体の転写活性が、雄(XO)のX染色体の半分に抑えられている。いずれの生物においても、この機構に破綻をきたした場合致死となることから、X染色体の遺伝子量補償が、生物の正常な発生にとってきわめて重要であることがわかる。」 

現在では、X染色体不活性化を制御する染色体上の場所として、X染色体不活性化センター(XIC)が見つかっている。。

X染色体不活性化の機構を整理すると、
(1)細胞がX染色体を何本もっているかを感知する「計数」、
(2)2本のX染色体が感知された場合、どちらのXを不活性化するかの「選択」、
(3)不活性化の「開始」、
(4)不活性状態を染色体全域へ伝える「伝播」
の四つの過程に分けられるが、XICは、これらすべての過程にかかわっていると考えられている。

つまり、
①元々X染色体とY染色体は相同染色体であった。(相同染色体についてはこちらhttp://www.biological-j.net/blog/2007/09/000288.html)
②進化の過程で不均等が生じ、この不均等を是正する為にX染色体の不活性化と言う仕組みが生まれた。
③他の生物でも遺伝子の量の調整が行われており、この機構に破綻をきたすと死んでしまう。
④この機構にはX染色体不活性化センターというものが関わっており、非常に重要な役割を果たしている。
という事なのです。
人間に限らず雄と雌の遺伝子数が同等でないと正常に子孫を残せない というのは驚き です。
今後は、なぜ相同染色体からX染色体とY染色体に分かれていったのかを追求していきたいと思います。 😀

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