2007-12-14

精子の「成熟」過程

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今回は11月28日のやっさんの記事「精子と変異」に引き続いて、精子の成熟過程と、特にその過程における変化について調べてみました
   
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始めに基礎から押さえていきましょう
下の図を見ながら読んでください。(「精子の話」毛利秀雄著 岩波新書より引用)
   
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画像は東海大学医学部附属病院泌尿器科HPよりお借りしました。
   

精子はオスの生殖輸管である精巣上体とそれに続く輸精管、更に射精後には雌の生殖輸管である膣、子宮、輸卵管の中で次第に運動能力や受精能を獲得していき、その運動パターンも変化していきます。大まかにいって、雄の生殖輸管内でおこる諸変化を精子の成熟、メスの生殖輸管内でおこる現象を受精能獲得(キャパシテーション)と呼びます。

動物によって期間は異なりますが、排精された精巣網から精巣上体に入り、その中を精巣上体の頭部から体部、尾部へと数日から10日間ぐらいかけてゆっくり移動して、射精までの間、尾部に留まります。こうして精巣上体を通過しながら成熟していくわけです。精巣上体は曲がりくねった細長い管からできていてその全長はヒトで6メートル以上にもなり、マウスでも1メートルはあるといいます。また種によっては射精前の精子は精巣上体ではなくその先の輸精管に貯えられますが、この場合には輸精管内でも成熟が継続します。

   
精子は精巣で形成され、その時点で潜在的には受精に必要な能力のいくらかは獲得しているようですが、「成熟」を経ないと一人前(?)に受精できるようにならないんですね~ (ヒトの場合はちょっと特殊なようですが、今回は扱いません)
   
   
さて、ここからいよいよ本題です
精巣上体を通過していく精子の表面には様々な変化が起こります。精子は形成された時点で既に表面に糖タンパク質などが付着していますが、精巣上体を通る中でそれらが失われたり、また新たなものが加わったりすることで、精子細胞膜の性質や機能を変化させていると考えられています。そしてそれらの変化を通じて精子は運動能や受精能を獲得していくわけです。
その中でも注目したいのが、精巣上体頭部の終わりから体部前半でのみ合成されている135kDaタンパク質というものです。これによって起こる精子表層の変化について『「精巣上体における哺乳動物精子の成熟」岡村直道氏』より引用します。
   

精巣上体頭部の未熟精子にはほとんど抗原. が見られないが、体部に移行するにつれて、 赤道帯に僅かに検出できるようになる。さらに下降するに従い、次第にその量が増し、体部後半では先体のすぐ後ろの部分に三日月状に局在化、濃縮されることが分かった。尾部の成熟精子の抗原はほとんどが同様の局在バターンを示し、さらに頭の先端部にも抗原が移動してくることが判明した。

   
この抗原が以前の記事で提起されていた仮説の抗原ですね。
今回紹介した精子表層の変化はDNAの変化ではありませんが、生物の進化には当然DNA変異だけではなく、このような変化も多分に影響を及ぼしているものと考えられます

List    投稿者 hadou | 2007-12-14 | Posted in ⑤免疫機能の不思議No Comments » 

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