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精子と卵子に配偶子が分化したのはなんで?~栄養と運動、受精と発生、精子・卵子の淘汰適応

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こんにちは! 😀
11/23(祝)に開催された「なんでや劇場」のテーマは
「生物史から学ぶ自然の摂理⑤~オスとメスに分化したのはなんで?~」でした。
当ブログでも今日から5回に渡って、そこでの議論を元に内容を整理して報告したいと思います。
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■配偶子が「精子」と「卵子」に分化したのはなんで?
 生物は多細胞化とほぼ同時に配偶子が「精子」と「卵子」に分化しています。
※原始的な多細胞動物である「海綿動物」は有性生殖時に精子、卵子を放出して体外受精します。
 また、比較的近年になってから多細胞化したと考えられている「ボルボックス」も精子・卵子を有しています。
(参照:当ブログ2007.7.22 記事 [5]群体性ボルボックス目の有性生殖の進化の研究 [6]
では、配偶子が「精子」と「卵子」に分化(精卵分化)したのはなんでなのでしょうか?
それを探るためにも、まずは「精子」「卵子」の特徴を整理してみましょう。
ぱっと思いつくのは
 精子:小さい、動く、多い 
 卵子:大きい、不動、少ない

ですね。
大きくは、精子は鞭毛をもって運動機能を有し、卵子は栄養を蓄えて大型化しているのが特徴です。
このあたりは生物になじみの薄い方でもイメージしやすいのではないでしょうか?
■卵子が栄養を蓄えて大型化したのはなんで?
受精後、受精卵は卵割を繰り返し「発生」過程に入り、そこでは絶えず分裂が行われます。
この初期発生時の分裂のために卵子は栄養を蓄えているのですね
 Point!→卵子は「発生」に備えて「栄養」を蓄えている
■卵子は動かないのに精子が動くのはなんで?
コレは劇場中「出会うため! 」と明快な答えが返ってきました。
確かに体外に精子と卵子が放出されても、出会わなければ「受精」は成立しません。
その確度を高めるために卵子→不動、精子→動くといった組み合わせになっていると考えられます。
少し擬人的な表現になりますが、迷子になった時にお互いが動いて探すより、子供は預かり所でまっていた方が確実に落ち合うことができるといった感じでしょうか。
(配偶子の組み合わせが複雑化せず、精子・卵子の2つにしか分化していないのも同様の理由だと思われます)
 Point!→「受精」ために精子は「運動」機能(卵子は不動)を有している。
ここまで「精子」と「卵子」の分化とは「運動」と「栄養」の分化だと整理できそうです。
■「精子」の「卵子」の淘汰過程。
その他、「精子」と「卵子」の違いには数の「精子:多い」「卵子:少ない」があるのではという受精までの精子の淘汰過程をイメージした質問がありました。
実際、放出された何億ものの精子のうち、卵に辿り着き、受精できる精子はただ一つのみです
このような淘汰過程を経た「運動能力の高い」精子が受精→次世代の種を残すことができます。
より適応的な種を残す原理なのですね。
当ブログの11/8記事 [7]でも

膣内に放出された精子は卵子に辿り着く過酷な旅に出る事になります。膣の内部は細菌やウイルス防止の為強い酸性状態(ph5以下)になっていて、精子にとっても過酷な環境です。膣内に放出された精子は、子宮頚管という子宮に繋がる細い道に入らなければ死滅してしまします。(精子はアルカリ性で運動が活発になり、中性からやや酸性で運動能力低下。Ph5.7付近で急激に死滅。)
子宮頚管に辿り着いた後、卵管口までの長い距離を泳いでいき卵子を目指します。この卵管口には子宮側に向かって卵を移動させる鞭毛運動があり、(精子から見れば逆流状態)この鞭毛運動に対してサケが遡上するかのごとく卵管膨大部まで上り、卵子と出会う事になります。

とヒトの精子についての淘汰過程について紹介しています。
それでは淘汰過程を経るのは精子だけのなのでしょうか?
ここで再び、当ブログの11/8記事 [7]を振り返ってみると

卵巣内の(卵祖細胞→)卵母細胞は胎生期20周期ごろに700万個作られるのをピークにして、生まれる頃には200万個に減少し、さらに排卵が起こり始める思春期頃には約40万個まで減少します。卵母細胞は新たに作られる事はなく、この残った40万個の卵母細胞から一生を通じ排卵される約400個の卵子をつくり、残りの卵母細胞は死滅していしまいます。
また、多産型の魚類などはたくさんの卵を作った後、自然淘汰によって適応種を残していく戦略をとっていますが、胎生期700万個の卵母細胞を生涯使う400個の卵子まで選別する過程は、多産戦略の淘汰圧を胎生期~排卵期の間に構築させたようにも見えます。

とあるように卵子にも淘汰過程は組み込まれていると考えたほうがよさそうです。
また、これらの淘汰過程において、
運動能力が劣った(旧い)精子が膣内の酸性をアルカリ性に変えて、活きの良い(新しい)精子の路を切り拓いている側面や、死滅した卵細胞が最終的に排出される卵細胞の栄養になったりと
「細胞の協働作業」的な面もあり、淘汰過程が単純な「競争原理」だけではないことも注目点です。
■まとめ配偶子が精卵分化することにより
 精子:「運動=出会い」
 卵子:「栄養=エネルギー」

に特化し、調和的に「受精」と「発生」を実現することを可能にしました。
また、それぞれに淘汰過程を組み込むことで、生殖を通じて「進化、適応」を実現していくこととなります。

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