- 生物史から、自然の摂理を読み解く - http://www.seibutsushi.net/blog -

ヒトの卵子・精子の一生

今日はヒトの卵子 精子 の一生について投稿したいと思います。 😀
親の卵子と精子が合体して親と少し違った子供が生まれる。
私たちが生まれてくる原点に卵子と精子がある訳ですが、卵子と精子が合体するまでには各々違った淘汰過程が見えてきてなかなか興味深いです。


【人の卵子の一生】
卵子の大きさは0.1~0.2mm。鞭毛などの運動機能を持たない生殖の為の栄養に特化した細胞です。卵子は卵細胞を透明体という層で包まれており、その周りに卵丘細胞が卵子を保護するように取り囲んでいる構造をしています。大切に守られている感じがしますね~
卵巣内の(卵祖細胞→)卵母細胞は胎生期20周期ごろに700万個作られるのをピークにして、生まれる頃には200万個に減少し、さらに排卵が起こり始める思春期頃には約40万個まで減少します。
卵母細胞は新たに作られる事はなく、この残った40万個の卵母細胞から一生を通じ排卵される約400個の卵子をつくり、残りの卵母細胞は死滅していしまいます。
なんと女性の卵子はその都度作られているのではなく、胎児の頃に作られた卵母細胞から一つずつ排卵しているんですね。ここは精子と違うところです。
そして全ての卵母細胞が死滅した時が、いわゆる閉経ということになります。
卵母細胞(2n)は出生前後の時期に第一減数分裂過程に入り減数分裂前期の時期で休止します。以降排卵の時期が来るまで休眠し、排卵を契機に減数分裂を再開し卵娘細胞(二次卵母細胞)になります。そして第二減数分裂中期の頃にまた休止します。
排卵された卵娘細胞(二次卵母細胞)は最終的に精子が受精することで減数分裂を完成させ、卵子(1n)と精子(1n)が結合します。一つの卵母細胞から二回の減数分裂によって最終的には1つの卵子だけになり、残りの3つの細胞(極体)は死滅してしまいます。ここも精子と違うところですね。
すこし卵子の特性について仮説を立ててみると・・
胎生期から卵母細胞を蓄えているのは、生まれてから生殖細胞に栄養をとる事を回避し、体細胞活動に大きくエネルギーシフトした戦略の一つではないかと思います。また、栄養の塊である卵母細胞を初めから作っておき、環境悪化時(飢餓状態)にも対応できるような不変性に特化した戦略なのかもしれません。
また、多産型の魚類などはたくさんの卵を作った後、自然淘汰によって適応種を残していく戦略をとっていますが、胎生期700万個の卵母細胞を生涯使う400個の卵子まで選別する過程は、多産戦略の淘汰圧を胎生期~排卵期の間に構築させたようにも見えます。それでも排卵される卵子の染色体異常の確立は約25%、さらに精子の異常や受精卵分割の異常なども含めると分娩出産に至るのは20数%といわれていて、出産というのは大変な事なんだなと感じさせられます。

【人の精子の一生】
精子の大きさは0.06mm。核のある頭部の細胞質と、動くための鞭毛と、鞭毛を動かす為のミトコンドリアと、卵子に到着した際に卵子をとりまく卵丘細胞や透明体を溶かす酵素を分泌する機能に特化した細胞です。他の体細胞の多くを捨て去った無駄のないスリムな奴です。
精子は卵子と違い思春期頃を迎えてから生成され始めます。精粗細胞から精原細胞→精母細胞(2n)へと体細胞分裂し、精母細胞から精娘細胞(1n)→精子細胞(1n)と2度の減数分裂の後に精子となります。ここは卵子と同じですね。
卵子と違うのは、卵子が一つの卵母細胞から一つの卵子が生まれ残りは極体として死滅するのに対し、精子は一つの精母細胞から4つの精子が生まれる点。極体はありません。
精祖細胞は6回の体細胞分裂を経て64個の精母細胞になり、一つの精母細胞は2度の減数分裂を経て4つの精子を作るので、一つの精祖細胞からは計256個の精子が作られることになります。
膣内に放出された精子は卵子に辿り着く過酷な旅に出る事になります。膣の内部は細菌やウイルス防止の為強い酸性状態(ph5以下)になっていて、精子にとっても過酷な環境です。膣内に放出された精子は、子宮頚管という子宮に繋がる細い道に入らなければ死滅してしまします。(精子はアルカリ性で運動が活発になり、中性からやや酸性で運動能力低下。Ph5.7付近で急激に死滅。)
子宮頚管に辿り着いた後、卵管口までの長い距離を泳いでいき卵子を目指します。この卵管口には子宮側に向かって卵を移動させる鞭毛運動があり、(精子から見れば逆流状態)この鞭毛運動に対してサケが遡上するかのごとく卵管膨大部まで上り、卵子と出会う事になります。
精子は卵子のまわりにある透明帯に接着し、酵素をふきかけて透明帯を徐々に溶かしていきます。やがて1匹の精子が突入すると透明帯は他の精子を突入させないように変化し、たった1匹の精子のみが受精することになります。
さてここでもすこし精子の特性について仮説を立ててみると・・
精子が卵子と違い後天的に生成されるのは、新たな外圧変化にその都度対応した種を残せるように、変異性に特化した役割を精子が担っているからではないかと思われます。またオスは同類闘争等の外圧淘汰によって生殖できるオスが決定される。その意味でもオスは外圧闘争にエネルギーを特化させ、生殖負担を減らす戦略の延長に後天的精子の生成があったのではないでしょうか。
精祖細胞から精子が作られるまでの過程には卵子のように淘汰圧はないですが、射精から卵子到達までに精子の淘汰圧が働いています。まるでサケの遡上を子宮内部につくりあげたかのように。

以上、メスオスともに淘汰適応の仕組みを組み込みながらも、メスは不変性の基盤として生殖役割を、オスは変異性の獲得を担う闘争役割を、とオスメス役割分担が垣間見えます。
(余談ですが・・)
精子は3日使わないと劣化していくようです。また射精しない状態が長く続くと、精巣が作る事を怠け精子生成の機能が衰弱していくようです 。ご注意を。

[1] [2] [3]