2007-11-15

「体内受精」と「体外受精」

arincoさんの「卵子と精子の大きさが違うのはなんで?」面白かったです 😀
僕も「配偶子シリーズ」として「体内受精」「体外受精」について追及してみました。
体内受精と言えば、哺乳類。体外受精と言えば魚類。
=進化した生物ほど体内受精となると考えていましたが、どうやらそれは事実ではないようです。
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■体外受精
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ウニ(刺皮動物)の放精・放卵
画像は「和歌山県教育センター学びの丘」さんのHP「ウニの発生」からいただきました。
ウニの放精・放卵と授精の様子が良くわかります 😀
http://www.wakayama-edc.big-u.jp/mic_gal/uni.html
「体外受精」とは卵と精子が親の体外に放出され、そこで受精が行われる繁殖方法。
体外受精を行う動物としては次のものが挙げられます。(ウィキペディアより)
 

 海綿動物
 刺胞動物 (クラゲ、イソギンチャク、サンゴ)
 有櫛動物 (クシクラゲ)
 紐形動物 (ヒモムシ)
 星口動物
 ユムシ動物
 腕足動物 (チョウチンガイ、シャミセンガイ)
 環形動物 (多毛類=ゴカイ)
 軟体動物 (多板類、斧足類=2枚貝)
 棘皮動物 (ウニ、ヒトデ、ナマコ)
 脊索動物
   ┃
   ┃━原索動物(ホヤ、ナメクジウオ)
   ┃━硬骨魚類(サメ、エイ類以外の魚類)
   ┗━両生類 (カエル類)

※脊索動物以前の動物類は、雌雄同体のものが多く、オスメス固定度が弱い。
 単為生殖するものもある。
■体外受精の配偶行動
 体外受精の配偶行動としては、大きく以下の5種の行動様式があります。
 ・タイミング=一般的に潮の満ち干きと関係する短い器官に殆どの固体が同時に
         放卵、放精を行う。ウニ(刺皮動物)、サンゴ(刺胞動物)等
 ・フェロモン=なんらかの情報伝達物質による情報交換によって、放卵、放精を行う。
         ウニ(刺皮動物)が行っていると考えられている。  
 ・集団を作る=多数の個体が一箇所に集中して放卵、放精を行う。
          クサフグ等のフグ類(硬骨魚類)に多い。
 ・少数集団 =一頭の雌を複数の雄が追尾し、雌が産卵すると放精する。
          金魚(硬骨魚類)、モリアオガエル(両性類)
 ・ペア    =体内受精の場合と同様に、配偶行為(性器接触は無いが、体を寄せ合ったり
          ヒレで包んだり、体を巻きつけたりする等の身体接触)によってタイミングを
          合わせて、放卵・放精が行われる。(カエル類、ヒトデ、硬骨魚類)

無作為に放精・放卵をしても、授精確立が非常に低いので、授精確立を高める為の、様々な行動様式があり、進化するほどにより確実に授精できる行動様式を取っていることが解ります。
■体内受精
4901330381.jpg
画像は写真集「交尾」(子どもの未来社出版)の表紙で、イルカ(哺乳類)の交尾シーン。
様々な動物の交尾シーンの写真集だそうです。面白そう 😀
「体内受精」とは卵が親の体内から放出されず、雌の体内で受精が行われる繁殖方法。
体内受精を行う動物としては次のものが挙げられます。(ウィキペディアより)
 

 扁形動物(プラナリア、ヒラムシ、サナダムシ)
 顎口動物
 輪形動物(ワムシ目=ワムシ)
 腹毛動物(帯虫目=イタチムシ)
 線形動物(回虫、鞭虫)
 鉤頭動物
 環形動物(ヒル綱=ヒル、貧毛綱=ミミズ)
 有輪動物
 毛顎動物(肉食性プランクトン)
 軟体動物(腹溝類、腹足類=アメフラシ、頭足類=イカ、タコ、オウムガイ)
 有爪動物(カギムシ)
 節足動物(カニ、エビ、昆虫類)
 脊索動物
  ┃
  ┃━魚類 (軟骨魚類=サメ、エイ)
  ┃━両生類(有尾目=イモリ、サンショウオ、無足目=アシナシイモリ)
  ┃━爬虫類
  ┃━鳥類
  ┃━哺乳類

※節足動物以前の動物類は、雌雄同体のものが多く、オスメス固定度が弱い。
 単為生殖するものもある。
■体内受精の方法と配偶行動
体内受精の方法としては、大きく以下の4種の方法があります。
 ・精包     =精子の入ったカプセルのようなものを雄が体外に出し、それを雌が
           取り込む。
           雄が精包をばらまいて、雌がそれを拾う(トビムシ)と言う方法や、
           ペアとなった雄雌で雄が精包へ雌を誘導する方法などがある。
           サソリ (節足動物)、イカ、タコ(軟体動物頭足類)など。
           精包が雌の体表に貼り付くと、精子が皮膚から侵入して卵に到達する
           方法もある。カギムシ(有爪動物)、ヒル(環形動物)など。
 ・生殖孔接触=肛門等を接触させて精子を受け渡す。
          ニワトリなど
 ・雄性器挿入=雄の生殖孔付近の構造が変化した突起(雄性器)を雌の体に挿入して
          精子を受け渡す方法。(交尾) 
          はっきりした器官に由来を持たない陰茎以外に、骨魚類では、尻びれが
          その役割を果たしている。
          内部を精子が通過しない交尾針と呼ばれる例も存在する。
          体内生殖を行う生物の殆どが、この方法を取っている。
          なお、雄の陰茎が存在するが、雌の膣が存在しないものもある。
          (ナンキンムシ等)
 ・交尾器受取=雄はあらかじめ生殖孔から交尾器と呼ばれる別の器官に精子を
          注入しておき、雌はこの雄の交尾器に生殖孔を近づけ、精子を
          受け取る。トンボ、クモ(節足動物)など。 
 
 
また体内受精を行う動物では、交尾や精包受け取りの際に、一定の配偶行動が取られ、進化した動物になるほど、この配偶行動が具体的になり、雄の求婚行動と雌の受け入れ反応が見られます。
雌の受け入れ反応がない場合は、精子の受け渡しは成立しません。
(人間でも同じですね
これには雌の側の成熟状態、受け入れ態勢の確認と、雌による雄の選択=性淘汰の意味があります。
■体内受精と体外受精の違い
以上から解るように、「進化した生物ほど体内受精となる」と言うのは決して事実ではありません。
確かに、進化系統樹的に、先端にある脊椎動物の爬虫類以降は殆どが「体内受精」ですが、同じく脊椎動物の魚類以前の原始的な動物でも「体内受精」は行われており、爬虫類・哺乳類の方法と変わらない雄性器挿入による精子の受け渡しが行われています。また、同じ動物門でも「体内授精」を行う類(網)と「体外受精」を行う類(網)が両方存在するものもあります。(軟体動物など)
では「体内受精」「体外受精」の生殖方式の違いは、どのような条件下で起こっているのでしょうか。
この答えを出すためには「体内受精」「体外受精」の違いを押さえる必要があります。

「体外受精」
 ・生殖器の構造が簡単。性器、授精嚢が不要
  極端な場合、輸精管や輸卵管くらいしか必要ない。(それさえもない場合もある)
 ・陸上での授精は不可能に近い。
 ・開かれた場に卵と精子を出す為、無駄になる量が多い。
  特に精子は、卵を覆い尽くす量が必要になるので、相当量が無駄になる。
  精子を作る負担が、卵を作る負担と同程度になる。
  特に魚類では卵巣と精巣に差がない。
 ・スニーキング(ペア組できない雄などの精子が横取り的に入り込み、授精を狙う)
  の恐れが高い。

「体内受精」
 ・陸上での授精でも問題ない。
 ・精子は最低限の必要量で済む。
  原理的には卵一個に対して一個あれば受精できる。
 ・スニーキングの恐れがない。
 ・生殖器が複雑になり、性器、授精嚢等が必要になる。

以上の違いから「体内受精」「体外受精」の生殖方式の違いを生み出す条件を整理すると
1.陸上に進出した動物は、必然的に体内受精型となる。
  陸上に進出してから、再び水辺に戻った生物は「体内受精」のシステムを残したまま。
  節足動物と陸上進出が可能になった両生類の大部分が体内受精であるのはこの理由に
  よるところが大きい。
2.体外受精の最大のデメリットは、精子を作る負担が、卵子を作る負担と同程度必要なこと
  にある。
  体内受精となることで、精子を作る負担が軽減される→雄の生殖負担が減少し、闘争負担
  を高めることが可能になる。
  卵子を作る負担も体外受精型よりも軽減される→より安定的で栄養分の多い卵を作ること
  が可能になる。
  また雄が闘争負担を担うことで、生殖負担を高めることが可能になり、安定的で栄養素の
  多い卵を利用して幼体巨大化の可能性が開かれる
  →雄雌役割分化を進める為には、「体内受精」が必要不可欠となる。  
3.種の淘汰圧力を比較すると、体外受精は授精→幼体レベルでの淘汰圧が中心であるのに
  対し、体内受精は、授精時に既に淘汰圧(性淘汰)が働いているので、より強者の遺伝子
  が残るシステムとなっている。
  →淘汰圧力を高める為には「体外受精」が必要不可欠となる。

1は「自然外圧」への適応であり、2・3は「種間外圧」への適応です。
原始多細胞生物である海綿・刺胞動物が「体外受精」であることから、動物(多細胞生物)の生殖方式は「体外受精」が基本であることは間違いありません。そして「体外受精」を基本に「自然外圧」の変化と、「種間外圧」の変化=外圧の高まりに適応する為に「体内受精」方式が生み出された。
「体内受精」方式は動物の進化過程においてかなり初期に誕生しており、それはすなわち高まる種間圧力への適応戦略であったと言えるでしょう。
その後は種間圧力の状況によって「体内受精」するものと「体外受精」するものに分化。
陸上に進出してからは、自然外圧(=乾燥)への適応と、更に激化する餌の取り合い=種間外圧への適応から殆どの生物が「体内受精」となって行ったと考えられます。
BY.NISHI

List    投稿者 crz2316 | 2007-11-15 | Posted in ①進化・適応の原理2 Comments » 

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コメント2件

 こん | 2007.12.15 20:40

僕も精巣状態が鍵を握っているのでは?と思っています。免疫系からの情報を受け取って、タンパク質である抗原に転換され、精子表面に転写される。受精の時、精子表面のタンパク質を取り込み、受精や分裂を促すという構造になっているのだろうと思います。
そのタンパク質に外圧情報が転写される方法が知りたいですね。
それ以外になにか?外圧情報の精子転写はあるのだろうか調査課題ですね。
その中で、精子の中心体やミトコンドリアなどは、どのような役目になっているのだろうか?
また、排泄機能の前立腺と精嚢あたりは、影響がないのだろうか?つっこみどころかもしれません。

 cotecan | 2008.01.28 18:14

Y精子がX精子の1.5倍の有効精子数だという説がネットを検索すると出てきます。
論理的にはY精子とX精子は同数のはずですが、そのような偏りができる根拠についてはどこにも書かれていません。
これが「俗説」である、というページもありました。
実際のところどうなんですか?教えてください。

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