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中心体は、生命の統合器官のひとつ

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分裂中の細胞における染色体(青)と紡錘体(緑)
※画像引用元はコチラ [1]

一昨日、昨日につづき、微小管中心体についてのエントリーです
中心体は、細胞分裂(有糸分裂)のときに、極めて重要な役割をはたす細胞小器官(オルガネラ)のひとつです。

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●有糸分裂のしくみ(おさらい)
→こちらもごらんください。  『無性生殖の高度化(有糸分裂の仕組みとは)』 [4]

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※図版引用元:『視覚でとらえるフォトサイエンス生物図録』数研出版編集部, 鈴木孝仁監修、数研出版(2007/02)

両極の中心体にはそれぞれ一対の中心小体がみられます。微小管は両極の中心体から伸びて、赤道面に染色体を整列させます。中心体と動原体を結ぶ微小管と、両極の中心体から伸びて紡錘体の中央部で重なり合う微小管があります。

有糸分裂のプロセスを微小管、中心体に着目してまとめると・・・

1.前期:長く伸びていた微小管が多数の短い微小管となる。分裂前の間期に中心体は複製され、その二つがモータータンパク質であるキネシンの働きで両極に向けて離れていく。

2.前中期:核膜は崩壊。離れた二つの中心体は紡錘体極となり、そこから伸びた微小管が染色体の動原体に結合する。

3.中期:星状体、紡錘体が形成され、この時期に微小管の構造がはっきりしてくる。中期板ができ、赤道面に染色体が集まる。染色体が中期板を形成するまで細胞周期は進行せず、これを紡錘体形成チェックポイントという。

4.後期:動原体微小管が縮み、染色体が極へと移動する。そして、紡錘体極が離れていく。

5.終期:染色体が紡錘体極へと到達し、分解されていたゴルジ体や核膜が再形成される。

6.細胞質分裂:アクチンとミオシンの働きにより、分裂溝ができて、細胞が分かれる。

●分裂装置

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※図版引用元:『視覚でとらえるフォトサイエンス生物図録』数研出版編集部, 鈴木孝仁監修、数研出版(2007/02)

このように、微小管と中心体のおかげで、染色体の均等分配をはじめ、すごく精密な細胞分裂が可能となっています。
(ちなみに、植物の細胞分裂では中心体なしでもきちんと細胞分裂を行っています。。。これはこれでたいへん不思議)

いうまでもなく、細胞分裂は、最も重要な生命現象の一つです。
中心体は、この細胞分裂を司る統合役を担っているのです

さらに興味深いことに・・・

●中心体の複製やはたらきはかなり厳密に制御されている。
中心体は、細胞周期の最初には1個、有糸分裂の際には2個存在するように、1回の細胞周期につき1回だけ複製(倍加)されます。中心体の複製異常は染色体の分配異常を引き起こし、腫瘍細胞の悪性化=ガン化につながるため、制御システムがはたらいているようです。
なお、この自己複製する中心体が独自の遺伝子を持つのか否かについては、まだよく分かっていないようです。
→こちらもごらんください。 『M期中心体の構造と機能を保障するKiz』 [5]

●中心体の複製とDNAの複製は同調している。
中心小体の複製を阻害するとDNA複製も阻害されるという研究があります。正常細胞では中心体複製とDNA複製の開始が同調的に行われ、しかも一度複製された中心体は同じ細胞周期中には再複製されません。逆に、癌細胞では中心体複製とDNA複製の開始が同調されておらず、中心体が再複製され3つ以上となっている場合もあります。(ガン細胞の増殖を防ぐ目的で、微小管や中心体の生成を阻害する抗ガン剤も開発されているようです)

●細胞分裂時のmRNAの分配にも関与?
発生過程において、細胞の種類によってそれぞれ異なるメッセンジャーRNAが中心体に結合し、その後細胞分裂において分配されます。この過程で、当初細胞質に分散していたmRNAは、微小管に沿って中心小体周辺に集まり、有糸分裂中に中心体から離れ、アクチン繊維に沿って分配される挙動を示しているようです。
→こちらもごらんください。 『発生:卵割期胚の中心体に局在するmRNAの非対称な分配』 [6]

★中心体は、生物の教科書でも「細胞小器官のひとつ」として説明されることが多いのですが、上記のような現象事実から、中心体は、生命現象を司る極めて重要な統合器官のひとつであると考えるべきでしょう

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