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微小管、中心体のはたらき(運動・情報)

微小管の役割としては、細胞骨格としての細胞の形態維持や変形の他、原形質流動やべん毛運動・繊毛運動、特殊な小分子輸送などが知られています。

中心体は、微小管形成中心とも呼ばれ、微小管をつくるはたらきをしています。

よく知られているように、植物には微小管はありますが、中心体はありません。
おそらくは、中心体は動物の進化に大きく関係しているものと思われます。
今日は、その謎を探るべく、微小管中心体のはたらきについて考えてみます。
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<微小管のCG:ウィキペディア [1]より引用>
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●微小管は細胞に張りめぐらされた「線路」
細胞の内部では遺伝子の情報をもとにタンパク質が作られたり、電気信号を伝えたりしています。そのためには細胞内部で様々な物質が効率良く運搬される仕組みが必要です。そのために細胞内で物質輸送の「線路」の役割を果たしているのが微小管です。

微小管細胞骨格の一種で、細長いチューブのような形をしています。(冒頭のCG参照。)チューブリンと呼ばれるタンパク質からできており、通常、細胞の中心から周辺部に向かって、放射状にはりめぐらされています。(リンク [5]参照)
(細胞分裂時には、紡錘体として活躍します。)

微小管には-端と+端の方向性があり、多くは-端を中心体に置き、重合の場である+端を細胞内の様々な領域に伸ばしています。-端から+端に向けての輸送を順行性、+端から-端に向けての輸送を逆行性として区別されますが、いずれの輸送も微小管系と細胞質中に存在するモータータンパク質群との相互作用によって起こります。

モータータンパク質は、細胞の変形・移動や、細胞内での様々な高分子の輸送に関わっており、微小管を走るモータータンパク質にはキネシンダイニンなどがあります。順行性の輸送はキネシンが、逆行性の輸送にはダイニンが重要な役割を果たしているといわれています。

キネシンは、酵母菌のような単細胞生物からヒトまで広く存在する運び屋タンパク質で、ヒトやマウスでは45種類ものキネシンがあることがわかっています。微小管の脱重合(管が縮む)や解体などに関与していると言われています。

ダイニンは、真核生物のべん毛・繊毛の運動を生み出すタンパク質で、細胞内での様々な分子の移動にも関わっています。

●中心体は微小管の司令塔
中心体中心小体で構成されています。中心小体は、9対の三連微小管が環状に配置されたものです。中心体は、そのような中心小体が二個一組、相互に直角対向してL字形に配置される形になっています。(下記CG参照。)

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<中心体の模式図:リンク [6]より引用>     
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<中心体のCG:リンク [7]より引用>

中心体は細胞分裂の際には紡錘体を準備する重要な働きをする他、分裂期以外にも微小管を制御することで、微小管以外の細胞骨格系に影響をあたえ、細胞運動や細胞の形態を制御する働きがあります。

動物の細胞分裂の時には、中心体が重要な役割を果たすことはよく知られているところだと思いますが、それ以外にも、細胞運動や細胞の形態を制御する働きがあるというのは驚きです。

中心体は、微小管の司令塔であり、微小管を制御することによって、細胞の運動やそのための情報伝達を統合するという役割を持っている可能性があるのではないでしょうか。

中心体というのは、実に注目に値します。次回は、細胞分裂における中心体の役割も重ね合わせて中心体のはたらきを見ていく予定です。お楽しみに。

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