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したたかで、しぶといアメーバの生存戦略

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アメーバって下等生物だと思ってませんか?
実は、とってもかしこい生物なんですよ。
飢餓状態になるとあちこちからワラワラと集まってきて、
多くは優秀な仲間に自らを捧げ、後のことを託して死んでいく・・。
託された者は、みんなの期待を一身に受けて、
種の保存に全力を尽くす・・。
うーん、かしこい。
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飢餓(きが)を生き延びる
 細胞性粘菌は森林の土壌中に棲息し、細菌をえさとして分裂増殖するアメーバです。周囲の細菌を食べつくして飢餓状態になると、cAMPという低分子物質を分泌してそれに対する走化性で10万個ほどのアメーバが集合し、ナメクジ型の多細胞体になります。ナメクジが光に向かって移動し、地表に出たところで細胞が最終分化して胞子の塊とそれを支える柄からなる子実体と呼ばれる構造を形成します。胞子の塊は着色している場合があり、その色と子実体の形状からキイロタマホコリカビ(Dictyostelium discoideum)、ムラサキタマホコリカビ(Polysphodylium violaceum)などと呼ばれています。子実体形成の意義を考えてみましょう。土中で飢餓となったアメーバ集団は、そのままだと全滅します。それまで同等だった単なるアメーバの集団が、一部の細胞(柄になる細胞)の犠牲のもとに、残りの細胞(胞子になる細胞)に種を維持する役目を託すのです。ここには生殖細胞と非生殖細胞の分化、つまり多細胞体制の基本を見ることができます。

どうです?相互扶助なんて生易しいもんじゃないでしょ?
まさに、種として生き残るという課題を前にして、
個体は消し飛んでいますよね。

そして有性生殖も
 しかし、問題があります。胞子は乾燥には耐えますが、水没すると発芽してしまいますので、降雨時などには有効な生存戦略とはならないのです。この場合に知られているのが有性生殖です。多くの細胞性粘菌は冠水条件下で性的に成熟し、交配相手が近くにいれば融合して接合子となります。接合子はcAMPを分泌し、周囲の未融合細胞(細菌を食べつくして飢餓状態となり、cAMP受容体を用意しています)を自分の周りに集合させて取り込んでしまいます。これらの細胞は消化され、接合子が子孫を作り出すためのエネルギーを供給するわけです。接合子はやがてマクロシストと呼ばれる休眠構造となります。

状況(環境)に応じて、単細胞だったり、多細胞になったり、
無性生殖だったり、有性生殖だったり・・。
したたかで、しぶとい生きるための戦略は見事です。

このように、細胞性粘菌はえさがあれば分裂増殖して数を増やしますが、環境条件次第で胞子形成、マクロシスト形成としたたかな生存の戦略をとります。どのような遺伝子レパートリーと制御の仕組みがあればそれらが実現できるのか、大変興味深いところです。

アメーバ、あなどるなかれ!
以上引用は
不思議生物-細胞性粘菌の謎にせまる (前編-生態編) [4]
および冒頭の写真のみ
不思議生物-細胞性粘菌の謎にせまる (後編-ゲノム解読編) [5]
うらら

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