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多細胞生物の機能分化

今日は10月13日の記事「細胞接着の重要性」に続けて、多細胞生物の機能分化について追求したいと思います。
単細胞生物では、細胞1個が生殖機能=保存機能と体細胞機能=仕事機能を担っており、全能性細胞そのものと言えます。9月1日の記事に書かれているように、この全能性の単細胞から、多細胞への進化過程で、真っ先に役割分化した機能は生殖(保存)細胞体細胞(仕事)です。
単細胞は全能性細胞そのものですが、群体→多細胞となった段階では、体細胞は全能性を制御し、機能に応じた働きのみを発現しています。(生殖細胞のみ全能性を維持)このような体細胞の「全能性制御」は、”遺伝子マーカー”と呼ばれる機能によって実現されています。
(詳細はこちらを参照:リンク [1]
体細胞と生殖細胞の機能分化の後、体細胞は、この遺伝子マーカーによる「全能性抑制機構」によって、外圧状況に応じて複雑に役割分化しながら進化していきます。
体細胞の機能分化はどのように進化していったのか?中身に迫る前にポチポチっとよろしくお願いします
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私たちを含め多細胞生物には、役割分化した9種類の器官が存在します。
 器官の分類(ウィキペディアより引用)
   

   消化器系 =栄養素の吸収、排泄、および、それらを行うための運搬器官群
   循環器系 =血液・リンパを体内で循環させるのに働く器官と、
              血球を産生、成熟、分解する器官群
   呼吸器系 =外呼吸をするために特化した器官群
   泌尿器系 =尿(=ろ過・濃縮された老廃物)を作り出し、体外に排出する
              器官群
   生殖器系 =生殖活動に直接関係する器官群(生殖細胞ではない!)
   内分泌器系=ホルモンを分泌する器官群
   感覚器系 =何らかの感覚情報を受け取る受容器として働く器官群
   神経系  =神経細胞の働きによって情報の伝達と処理を行う一連の器官群
   運動器系 =身体を構成し、支え、身体運動を可能にする器管群
              (骨格・関節・筋・腱)

これらの器官のうち、最も初期に役割分化した体細胞機能は、消化器と循環器であると考えられます。
原始的多細胞生物であるカイメン類には、器官分化は見られず、運動器官も神経器官も存在していません。循環器・消化器と呼べるものも存在しませんが、外皮に開いた多くの小孔から海水と食物を取り入れ、胃腔と呼ばれる内側の空洞上部に開いた大孔から取り入れた海水を吐き出しています。
食物の分解・吸収は、胃腔で行われるのではなく、各細胞ごとに分解・吸収が行われます。
また細胞の酸素吸収は、小孔→胃腔→大孔のルートで流れる海水から摂取されますが、呼吸器・循環器が存在しないので、やはり各細胞単位で酸素吸収されます。
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このように、摂取単位は各細胞毎になっているものの、小孔→胃腔→大孔の食物の流れは、口→腸→肛門と言う消化器の流れの原始的形態と言えますし、酸素吸収の仕組みは、「血液」の代わりに「海水」を媒体とした循環器に他なりません。
単細胞であれ、多細胞であれ、細胞にはエネルギー(食物)摂取と酸素摂取が必要不可欠です。
単細胞であれば、常に細胞膜が外界に接しているので、細胞膜を通してエネルギー摂取・酸素摂取が可能ですが、多細胞では外皮細胞を除いて、直接細胞膜が外界に接しなくなる為に、全ての体細胞がエネルギー摂取・酸素摂取する為の、何らかの器官=消化器・循環器が必要になります。
初期多細胞生物では、カイメンの小孔→胃孔→大孔の摂取ルートに見られるように、消化器と循環器は分化していない、一体の器官でした。
これはカイメンの次に進化したと考えられている、腔腸動物(ヒドラ・クラゲ・サンゴ・イソギンチャク等)でも同様で、摂取・排泄の両方を行う口から、海水と食物の摂取を行い、胃水管とよばれる体内の腔所で酸素吸収と食物の消化・吸収を行っています。
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カイメンがあくまで細胞単位でのエネルギー摂取・酸素摂取であるのに対し、腔腸動物では、胃水管で消化と酸素摂取が行われ、各細胞へと運ばれます。これは、体細胞の機能分化が進むにつれ、生活単位が細胞個別単位から細胞全体へと統合されていくことを示しています。
以上から、多細胞生物の体細胞機能分化は、”集合した細胞が生きていく(=エネルギー摂取と酸素摂取を行う)為”の必然と言え、その為に、最初に獲得した器官(=機能分化した体細胞)が「消化器と循環器」でした。
更には、単細胞→カイメン→腔腸動物→より高度な多細胞生物と言う進化のベクトルの中に見出せるように、”集まることで、より効率的にエネルギー摂取と酸素摂取を行う”方向に進化してきたとも言えます。
消化器・循環器以降の体細胞の機能分化はまた次回。お楽しみに 😀

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