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オスメス(性)分化と生物進化

オスとメスが交尾して子供が産まれるのが当たり前と考えてしまいがちですが、これまで見てきたように、動物には様々なオスメス分化と生殖方法があります。オスメスが分化していない雌雄同体や、オスメスが入れ替わる性転換、オスメスが交尾しない単為生殖などです。
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「この画像は朝日大学 [1]生命教育の窓 [2]性の分化と性の決定 [3]より転載しました」
様々なオスメス分化の様子を、生き物の進化にしたがって整理してみると、一つの明確な傾向を読み取ることが出来ます。続きを読む前にこちらもお願いします。
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雌雄同体の動物は、ミミズ(環形動物)、ナメクジ・カタツムリ・ウミウシ・貝類の一部(軟体動物)、フジツボ・カメノテ(甲殻類)、ホヤ(原索動物)など原始的な生き物に見られます。
雌雄同体の動物はさらに、交配するものと自己受精するものに分かれます。ミミズ、ナメクジ、フジツボなどは交尾を行いそれぞれが卵を産みます。貝類の一部は交尾をせず精子を海水中に放出するだけで自己受精するものもあります。ホヤも精子を海水中に放出しますが、卵膜が自己認識機能を持ち自己受精を防いでいるようです。
性転換する動物は魚類に見られます。一番多いのが雌性先熟(しせいせんじゅく)、雌として生まれて成長すると雄になるというタイプで、身近な魚では、ベラ科・ブダイ科等があります。逆の雄性先熟(ゆうせいせんじゅく)のタイプは身近な魚では、ウツボ科・コチ科・タイ科・アカメ科・クマノミ科があります。
魚にも雌雄同時成熟=雌雄同体のものはいますが、かなり少数派になってきています。地中海などにすむペインテッドコムバーは雄と雌の役割を交換しながら産卵・放精を繰り返すそうです。このほかにも、ヒメ・ハタ・メダカ類の中には、雄と雌の器官が同時に成熟するものが知られています。カダヤシ亜目のマングローブキリーフィッシュ(Rivulus marumoratus)という魚は、卵巣と精巣をもち、さらに自家受精をします。
両生類や爬虫類、鳥類、哺乳類となるとさすがに雌雄同体はいませんが、両生類はホルモン投与で性転換することが比較的容易に可能なようです。
爬虫類は卵が受精した段階では性が決まっておらず、卵が成長する環境の温度でオスになるかメスになるかが決まっています。ミシシッピーワニは32℃以上だとオスになり、32℃以下だとメスになるそうです。
鳥類と哺乳類は遺伝子レベルで性が決定されていて、環境に左右されることはありませんが、鳥類では雌性ホルモンを抑制することで人為的に性転換することが可能です。
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「この画像は雄と雌が決まる仕組み 魚から鳥、哺乳類まで [7]から転載しました」
動物の生殖には、以上の有性生殖のほかに単為生殖があります。単為生殖は卵が受精することなく分裂し成体に成長することです。ハチやアリの単為生殖は有名ですが、魚や爬虫類、鳥類でも自然単為生殖は行われています。
動物は遺伝子の中に雄性、雌性の両方を持っており、性遺伝子の発現を発動抑制する機構がホルモンであったり、温度であったり、生物の種類によって違いがあることで性の固定度が変わってきます。
原始的な生き物ほど、どちらの遺伝子も比較的簡単に発現し、生殖組織(精巣や卵巣)を形成し生殖することが可能ですし、単為生殖も起こり易いようです。しかし、進化するにしたがってオスメスの固定度が高くなり有性生殖では無い生殖方法(単為生殖)は困難になります。
最もオスメス分化を進めた形で進化した哺乳類は最も性の固定度が高く、現代の技術をもってしても人工的な性転換さえ不可能です。また、単為生殖はクローンよりも複雑な過程を経て、やっとネズミで成功したところです。

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