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植物はどうやって誕生したか?

Posted By tano On 2007年8月29日 @ 8:37 PM In ①進化・適応の原理 | 1 Comment

当ブログで植物について最近議論が展開されています。
植物はどうやって誕生したのでしょうか?
まずは植物の定義をしてみます。一般的に言われている定義です。
「二酸化炭素を還元するための電子の供与体として水を用い、結果として酸素を発生する生物」
地球誕生から植物誕生まで、さらに現在の陸上植物はどのように誕生したのか?今日はそこに迫ってみたいと思います。
●さて、植物と言えば光合成。地球の大気の歴史を見てみます。(今日の資料は筑波大学生物科学系,植物系統・分類研究室さんのHPから借用させていただいています。)
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地球の酸素は藻類の30億年の歴史と共に増加してきたことがよくわかります。そして驚くべきことに陸上植物が誕生するまでには既に現在の酸素濃度は実現されていたのです。
●さらにこのHPでは藻類の歴史を知る上で非常にわかりやすいカレンダーがありました。
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われわれは生物の中心は動植物であると考えがちですが,時間軸でみると,陸上の動植物の歴史は生命の歴史のわずか13%にすぎません。これに対して原核の藻類は30億年の歴史をもち,生命の歴史の8割近い時間を占めています。原核緑藻の発見以来,原核藻類の多様性に目が向けられつつありますが,30億年の歴史をもつこれらの生物は,現在わかっているよりもはるかに複雑な構成をもっているものと考えられます。
ではその藻類がどのようにして植物になっていったのか?えっ藻類は植物じゃなかったの?という声も聞こえてきそうですが、藻類は植物でもあり、厳密には原生生物に分類されています。
現在でも学説がさまざまでいろんな分類がありますが、細胞共生を植物の進化の根拠としたMargulisの5界説を紹介します。5kaisetu.jpg
では標題の藻類から植物への誕生のメカニズムを紹介します。
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藻類から植物への進化は原核生物から真核生物さらに多細胞生物へと進化していく過程にあります。
その過程で光合成の機能がどのように進化過程とりこまれていったのでしょう。
同じく筑波大学の研究室のHPから借用させていただきます。
光合成真核生物の細胞内にはエネルギー変換にかかわる2つの小器官があります。いうまでもなく,ミトコンドリアと葉緑体です。これら二つのオルガネラはいずれも独自のDNAとタンパク質合成系をもち,さらに抗生物質感受性が原核生物に類似するなどの性質を共有しています。この事実は,この2つの細胞小器官が原核生物の共生によって獲得されたことを示しています。
葉緑体は藍藻に近縁の原核藻類の共生によって生じたことがほぼ確かめられています。そのさらに古い祖先は光合成色素の組成やそのしくみからみておそらく光合成細菌であると考えられます。おそらく相同な電子伝達系が存在することから,ミトコンドリアもまた葉緑体と同じく紅色細菌に近縁である可能性があります。
細胞共生は生物進化に想像以上に深くかかわっており,特に真核光合成生物の多様性実現の原動力となってきたといえます。クリプト藻がよい例です。クリプト藻では葉緑体が葉緑体小胞体とよばれる2枚の膜に包まれ,両者の間に2重膜にかこまれ,DNAとRNAをもつヌクレオモルフとよばれる構造があります。リボソームRNAの系統からヌクレオモルフは紅藻類の核に近縁であり,クリプト藻の核とはかけ離れていることが明らかにされました。これは紅藻類に近縁の真核生物が他の真核細胞に共生し,ミトコンドリアを失い,また核が退化してヌクレオモルフに変化したことを示しています。つまりクリプト藻の葉緑体は真核生物の共生によって獲得されたものです。

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このようにクリプト藻は真核藻類の共生で葉緑体が獲得されるという,葉緑体の成立の一つの過程を示す生物群であり,真核光合成生物(植物)の多様性を考えていく上で貴重な生物群です。
まとめますと・・・藻類から植物への進化は
藍藻類(原核光合成生物)⇒真核従属栄養生物に共生し真核光合成生物が誕生
さらに真核光合成生物⇒真核従属栄養生物に共生しクリプト藻が誕生。
・・・⇒クリプト藻がミトコンドリアや葉緑体を持ったその後の陸上植物の下地になっていきます。
陸上植物に繋がった藻類はクリプト藻やブラシノ藻類、アオサ藻類など多様な藻類の種類のうちの一部です。植物とは藻類の進化段階でさまざまな機能が水中で細胞共生する中で多重的に取り込まれて形成されていったのです。

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※クリプト藻は海水から淡水まで幅広い範囲に生息する鞭毛藻類である。
この生物群は,光合成色素からみると,黄色植物と同様にクロロフィルa,cをもつことに加えて,藍藻や紅藻,灰色植物と共通の色素タンパク質であるフィコビリン(フィコエリスリンとフィコシアニン)をもつことで特徴的づけられる。このような色素組成をもつ藻類は他に知られておらず,多様な藻類群のなかでも特異なものである。

※真核生物の進化を考えるキーとなる現象のひとつに細胞共生があります。細胞共生とはある生物の細胞が他の生物の細胞内に入り込んで(取り込まれて)一体となって生活することで,この現象が生物進化,特に真核光合成生物の進化と多様性の実現に大きな役割を果たしてきたことが次第に明らかになってきました。藻類にみられる多様性の本質は細胞共生,特に真核生物同士の共生(真核共生)にあります

参考 筑波大学生物科学系,植物系統・分類研究室さんのHP [4]
筑波大学 井上勲教授の論文 変わり行く生物観 1 [5]
筑波大学 井上勲教授の論文 変わり行く生物観 2 [6]
by tanoki


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[4] 筑波大学生物科学系,植物系統・分類研究室さんのHP: http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~inouye/ino/etc/forewords.html

[5] 変わり行く生物観 1: http://www.sakura.cc.tsukuba.ac.jp/~elrouj/museum/eureka/eureka1/inoue1.html

[6] 変わり行く生物観 2: http://www.sakura.cc.tsukuba.ac.jp/~elrouj/museum/eureka/eureka2/inoue2.html

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