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ボルボックスの不思議

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※図版引用元:水中微小生物図鑑「ボルボックス」 [1]

ボルボックスは、池や川、沼、田んぼなどの淡水に見られる緑藻の一種です。
細胞が集まって球形の群体を形成する生きもので、直径は1ミリにも満たない大きさですが、数千個の細胞が、ゼラチン状の基質の表面に集まっています。

単細胞生物が集まってひとつの個体のような集合体をつくっているものを細胞群体といい、単細胞生物と多細胞生物の中間的な生物と考えられています。

このボルボックスは、単細胞生物から多細胞生物へのあゆみ、生殖細胞の分化、無性生殖から有性生殖へのあゆみを考える上で、たいへん興味深い生きものです 🙄
(進化史のモデル生物としてよく研究に用いられています)

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※ボルボックスにもいろいろな種類があります。こちらのページがおすすめです。
微小藻の世界(国立科学博物館)-ボルボックスのなかまたち- [5] 

※生命進化の歴史では、約5000万年前から現在までの間に、クラミドモナスという単細胞生物から多細胞生物へ進化したと考えられています。
RIKEN NEWS 2007年4月 ボルボックスで探る多細胞生物への進化 [6]

●ボルボックスの多細胞体制と細胞分化
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※図版引用元:ウィキペディア「ボルボックス」 [7] 

ボルボックスの一種V. carteriでは、直径0.5ミリの球体で、約2000個の小さな細胞(体細胞)が球体の表面に一層に並び、その内側に約16個の大きな細胞(生殖細胞)があります。

ボルボックスでは、細胞の役割が大きく2つに分化しています。ひとつは「生殖細胞」、もうひとつは「体細胞」=鞭毛を動かす細胞です。1種類の体細胞と生殖細胞からなる極めてシンプルな多細胞体制です。
表面の体細胞には、それぞれ2本の鞭毛が生えています。これを使ってくるくると回りながら移動するのですが、すべての細胞が水を後ろにかくように運動することで、群体は前に向かって泳ぐことができます。

それぞれの細胞は数本の連結糸(ゼラチン状の細胞質連絡)で結ばれ、何千という数の細胞が連絡し合って、分化と分業、(群体全体としての)統合=>多細胞体制を実現しているのです。

●ボルボックスの無性生殖と有性生殖
ボルボックスの群体内には、ゴニディアとよばれる大きな生殖細胞があります。
ボルボックスは通常は無性生殖で増えます。親群体の内側の生殖細胞が分裂し、娘群体(子ボル)が生まれていきますが、この分裂の途中で不等分裂が起こり小さな細胞(体細胞)と大きな細胞(生殖細胞)が生み出されます。分裂を終えた子ボルはやがて形づくりを完成し、親の体を破って水中に飛び出ていきます。

ところでこのボルボックスは、卵と精子による有性生殖も行います。

RIKEN NEWS 2007年4月 ボルボックスで探る多細胞生物への進化(西井一郎氏) [6]より 

ボルボックスは、栄養状態が良ければ、雄と雌はそれぞれ無性生殖を行い、どんどん増えていきます。しかし栄養状態が悪くなり飢餓状態になると、雄が周りの仲間に“無性生殖をやめて、有性生殖にしよう”とフェロモンを出して伝えます。すると雌は48個の卵をつくります。雄は約100個の精子からなる塊を128個つくり、それらを体外に放出します。精子の塊が雌の身体に入ると、精子はばらばらに分かれて卵を目指します。受精してできた接合子は乾燥に強く、水がなくても土の中で生きていけます。それほど生命力が強いのです

細胞の機能分化→多細胞化の基点には体細胞と生殖細胞の分化があり、また種にとっての根幹である外圧に適応するための生殖戦略が、細胞の機能分化を促進したという関係がありそうです。

※こちらの投稿もあわせてお読みください。

「飢餓物質」⇒「合体」⇒「休眠態」の適応法則 [8] 
生物はどのように進化してきたのか? [9] 
単細胞→群体→多細胞? [10] 

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